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SRA-2300 English page


SRA-2300 オートマチックアンテナチューナの改造

得意先でもらったオートアンテナチューナのお話です。


その1:SRA-2300について

 
SRA-2300はRanger communications のオートアンテナチューナで、周波数範囲1.8〜30MHz、最大入力は150W(PEP)です。図1に内部の様子を示します。

図2にSRA-2300の接続を示します。
アンテナとグランドを接続して電源(13.8V)を投入し、5〜10WのRFキャリアを入れれば自動的にチューン動作が始まります(チューン中はインピーダンス整合のためにLとCを切り替えるリレーの動作音が聞こえます)。
 チューン動作が正常終了すればRMTIND端子がLレベル(0V)になります。RMTIND
端子を使えばチューン完了を示すLEDを点灯させることができます。「RMT IND」とは多分 "Remote indicator"の略でしょう。

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 このSRA-2300は得意先で廃棄処分になったのをもらったものです。
廃棄といってもまったく新品状態で、元はRanger communicationsの業務用HFトランシーバの付属品でしたが、トランシーバは性能評価でバラバラにされてしまいこのチューナだけが残っていました。



図1.SRA-2300



図2.接続


その2:リセット(強制チューン)機能を追加

 アマチュア無線ではバンド内で数百KHz移動して運用することがあります。
そのようなときに、例えば14.003MHzのチューン結果がSWR1.2で、そこから14.300MHzに移動してSWR1.8だったら、できれば再度チューンしたいと考えるのが普通です。

ところが、もし自動チューン開始のSWRしきい値が2.0だった場合は14.300MHzに移動してキャリアを出しても再チューンは実施されません。 リセット機能はそのようなときに有効です。
リセット機能を用いるとSRA-2300を起動状態(RF未検出状態)とすることができ、次にRFキャリアを入れれば自動的にチューン動作が始まります。

図3に想像されるSRA-2300の動作フローチャートを示します。

図3.SRA-2300の動作フローチャート(想像)

 実際の回路ではリセット機能のための部品は基板上にシルク印刷があるだけで実装されていません。
図4にオリジナル状態のリセット回路を示します。接続端子TB1には RMTIND、+、GND、RESET のシルク印刷があり、3極の端子が付いています。
リセット機能を用いるにはこれを4極のものに交換して、リセット回路に部品(ジャンパ)を実装します。そしてRESET端子をLレベル(0V)に落とせばCPU(68HC05)がリセットされます。

(もっとも再チューンさせたければSRA-2300を一旦電源OFFして再起動すればよいだけなのですが。)



図4.オリジナルの回路

図5にリセット機能を用いるための改造を示します。TB1を3極から4極のものに交換し、R66とC88にジャンパ線を入れます。
図6にはリセット機能付きのコントローラの回路を示します。



図5.追加したリセット回路



図6.リセット機能付きコントローラ


***** なぜSRA-2300のリセット回路は実装されていないのでしょうか? *****

 SRA-2300は業務用無線局向けの製品です。
業務用無線局はアマチュア無線と違い、各周波数帯ごとにその中の一波のみが割り当てられます。周波数帯を移った場合はどのみち再チューンが実行されるのでリセット機能は不要です。 これは、アマチュア無線でも80mから40m、40mから20mなどとバンドを移動する際はリセットする必要がないのと同じです。
ところで、SRA-2300はOEM品としてSGCなどにも販売されたようです。(SGCのSG-230Sはマッチング用L,Cの数も定数も制御回路もSRA-2300と同じです。)


その3:ロック機能を追加

 チューンした状態でもSWRが自動再チューンのしきい値に近い状態では、送信中にいつ自動再チューンがは行われるか分かりません。
もし100Wで送信中にそのような状況になり自動再チューンが実行されるとSRA-2300のリレー接点が焼損する危険性があります。
(チューン中のRFパワーは10W以下でなくてはいけません。)

そのような状況を防止するためにはロック機能を追加する必要があります
ロック機能を追加するためには1箇所のパターンカットと、回路の追加が必要です。
図7にロック回路とリセット回路の変更を示します。

リセット回路のR66にダイオード(*注)を実装し、C88にジャンパを入れて、追加回路を取り付けます。74HC10の半田面でピン10と11の間のショートをカットします。

(*注)
  リセット時のCPUリセット端子の電圧をなるべく0V近くにするため、R66は順方向電圧低下の小さいショットキーを用います。
ショットキーダイオードは大抵Vf(順方向電圧低下)が0.2V以下です。もしショットキーダイオードが入手できない場合は整流用ダイオードを試してみてください。(整流用ダイオードは小信号用のダイオードよりいくらかVfが低いです。)



図7.追加したロック回路と変更したリセット回路

図8にリセット機能とロック機能を用いるためのコントローラの回路図と、実際に製作したコントローラを示します。
このコントローラはSGC社の「スマートロック」と同等で、SG-230などにそのまま使うことができます。



図8.ロック機能+リセット機能付きコントローラ


その4:その後のお話し

 スマートロックは買うと10,040円もします。たっ、高ぁ〜!!!
SG-230のマニュアルにはスマートロックの回路図が載っていて、なぜかLED点灯のためだけに9Vの電圧レギュレータが使われています。
もしかして本来スイッチとLEDと抵抗だけで出来るところをわざわざ複雑にした回路をマニュアルに載せて作る気なくさせてオプション品買わせるということかなぁ? う〜ん、だとすれば悪質
、でもそんなのに引っかかるアマチュア無線家も情けないが....