冷却療法について

痛みのしくみ

どうして痛みを感じるのか?

潤滑不全の関節には摩擦熱が出てきます。摩擦熱が一定以上たまると、熱に弱いたんぱく質は壊れてしまいます。熱が関節の細胞の膜(たんぱく質を含む)を壊し、細胞の内容物が細胞の外に流れ出ると化学反応がおこり、連鎖的に破壊が広がると炎症になります。
関節を警備する神経は、普段見かけない不審な物質を見つけると、『異常事態の発生』のメッセージを脊髄という回線を通して、警備本部のある脳に連絡します。
脳はそのメッセージを『痛み』として感じ取り、異常部位を知る。というのが痛みを感じるしくみです。

痛みを感じなくする方法

体に異常があっても、その情報が脳に伝わらなければ痛くありません。医療では、薬や熱で脳や神経を眠らせる方法をとります。
歯の治療の麻酔注射は神経の伝達を遮断するので、歯を深く削っても痛みを感じません。整形外科では痛い関節を温めて、神経の感度を低下させて痛みを抑えます。

神経の働きと温度の関係

神経の働きと「温度」

神経の働きと温度 イラスト

神経や脳は基本的にタンパク質と脂肪でつくられているので、その感度は温度に大きく左右されます。
私達の神経や脳は、涼しい場所では敏感になりますが、温かい部屋や風呂では弛緩して眠くなります。
腰痛の人は、寒い日や生鮮食品売場などの冷える場所では痛みが増し、温かい日や風呂で温まると痛みが和らぐことを経験的に知っています。これは、温めると感覚神経が一時的に鈍るだけで、歪んだ関節が治るわけではありません。そして冷えると痛くなる理由は、感覚神経が鋭敏になるためで、関節の歪みが増すわけではありません。

冷えると痛くなる!?

使い捨てカイロなどで温めた後は必ず、そこの温度は平常温度に戻ります。すると、眠っていた神経が正常な活動を再開して、異常のメッセージを脳に伝えるので痛みだします。それを「冷えるとよくない」と学習してしまうと、痛む場所を使い捨てカイロや、遠赤外線やサポーターや風呂で、常に温めるようになります。

温熱療法の副作用

腰痛は冷やすのが正解 イラスト

いつも痛い所を温めている人達は、現代医学では治りにくい、慢性関節痛になります。それは、常に関節に熱を加えるので、関節内の柔らかい細胞だけでなく、硬い骨まで溶かして「変形性関節症」になるからです。

それに対して、冷やす療法は関節炎の熱をとり、タンパク質を守ることを第一の目的にしています。熱がとれると化学反応が減るので、痛みが消える鎮痛効果も得られます。つまり、生理的局所冷却法は一石二鳥なのです。

『痛み(炎症)を冷やす』。これは、考えてみればごくあたりまえの対応です。むしろ、昔から言い伝えられ、常識化した『痛み(炎症)を温める』という方が不自然です。

病院では、「この痛みは、筋肉や関節の炎症ですから、冷やさないように温めてください」といいます…。 あらためて考えると、おかしな話だと思いませんか?

生理的局所冷却療法の効果と方法

生理的局所冷却療法の効果

  1. 熱によるタンパク質の破壊を食い止める
  2. 鎮痛効果
    冷やし始めの3~5分は神経が高感度になるために痛むような感じがすることもありますが、20~40分ほど冷やして炎症熱が減ると、化学反応も減るので、本当の意味で痛みが抑えられます。しかも、鎮痛剤や温熱療法より副作用がなく安全です。
  3. 血行が盛んになる
    冷却をした後は、新鮮な酸素を含んだ血液が盛んに流入してきて、冷えた局所の温度を上げると同時に関節の修復と浄化を促進します。

生理的局所冷却法のやり方

●必ず水にくぐらせた氷を使ってください。(表面の霜をとかすため)
●ビニール袋にその氷をいれて、漏れないように口を縛り、氷のうをつくります。
●それを直接患部に当てて『炎症とり』をしてください。時間は20~40分。
*痛みが強い場合は90分ほど間をおいて、再度局所冷却をしてください。

《注意》
アイスノンなどの蓄冷体や霜は0度以下で、体の細胞を傷める(凍傷)危険性があります。(熱吸収速度が速過ぎるため)
また、風邪をひかないように、重ね着をしたり、暖房で部屋を暖かくして、痛みのある局所だけを冷やしてください。(同時に冷やすのは2ヶ所まで)