IABP (大動脈内バルーンパンピング)の実際(導入〜離脱まで)



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総論
急性心不全とIABPの適応
IABPの原理
IABPの実際
参考





 

■IABP (大動脈内バルーンパンピング)の実際(臨床工学技士の目線)

 IABP準備から導入・管理

≪準備≫

患者さんの身長の確認 →バルーンサイズ決定
AC電源の接続を確認し、IABPの電源投入(バッテリー充電状態も確認)
心電図・大動脈圧波形のの入力ケーブルの接続
ヘリウムボンベの開放を確認し、ヘリウムガス量の確認

≪IABP挿入≫

@患者さんのサイズに合ったバルーンを医師に確認後、清潔野へ
Aヘパリンの静脈注入確認
Bバルーン先端が左鎖骨下動脈から約2cm下の胸部下行大動脈内に留置していることを確認
C清潔野より駆動ガス延長ラインもらいを駆動装置に接続

≪IABP始動前設定≫

バルーン容量設定確認(自動設定機種不要)
入力源を外部又は内部に切り換え、心電図・大動脈圧の入力波形確認し、トリガー設定
アシスト比を1:2に設定し、タイミングを大まかに合わせる(膨張:T波の頂点・dicrotic notch、収縮:P波のを終わり)

≪IABP始動≫

@バルーン先端が左鎖骨下動脈から約2cm下の位置からずれていないか最終確認
A医師の指示のもとヘリウムガスを充填し始動
BDicrotic notchでの拡張と拡張末期圧が最低値となるタイミングで収縮されるよう微調整
C医師に確認後、アシスト比を変更
DACTを測定(緊急でない場合は、ヘパリン静注後測定)

≪IABP管理≫

X線撮影でバルーン位置が適切か確認
ACTコントロール(150〜200秒程度に調整)
バイタル(血圧、脈拍、体温など)
尿量
カテーテルの固定状態、駆動ガスラインの引っ張りやキンクがないことを確認
最適なタイミングの調整
挿入部の出血の有無の確認
下肢虚血の兆候の確認
ヘリウムガス量の確認

 トラブルシュート

≪バルーン内圧波形≫

◆ 正常

バルーン内圧波形(正常)@オーバーシュートカテーテルなどのガス抵抗によりプラトー圧より超過する波形部分
Aプラトー圧バルーンとカテーテル内の圧が均等となり平坦化している波形部分
Bアンダーシュートカテーテルなどのガス抵抗によりベースラインより落ち込む波形部分
CベースラインIABP停止時の基準圧波形

◆ 高いプラトー圧

内圧波形原因
バルーン内圧波形(高いプラトー圧) ・ アンラップ不足
 ・ 大動脈の蛇行
 ・ バルーンの捻れ
 ・ カテーテルのキンク
 ・ 駆動ガス容量過多設定

◆ ベースラインの低下

内圧波形原因
バルーン内圧波形(ベースラインの低下) ・ カテーテル・ヘリウムライン・コネクタ部
   からのガス漏れ
 ・ 駆動装置内部のリーク
 
 

◆ 低いプラトー圧

内圧波形原因
バルーン内圧波形(低いプラトー圧) ・ 駆動ガス容量過小設定
 ・ 充填(オーグメンテーション)圧が過小
 ・ 患者に対してバルーンサイズが小さい
 
 

≪警告アラーム≫

@ 高圧アラーム

 ヘリウムガス回路内圧が規定値以上に高くなっている。
 バルーン内圧波形が方形波状でプラトー圧が高い場合は、バルーンカテーテル、シースの屈曲やバルーンが完全に膨らんでいない等が考えられる。
 バルーンカテーテル、シースの屈曲を疑う場合、バルーンカテーテル、シースの屈曲を直し、下肢を伸ばし挿入部の屈曲を直す。又、バルーンが完全にシースから出ていることを確認する。X線透視下で大動脈の蛇行やバルーンカテーテル、シースの折れが疑われる場合は抜去する。
 X線透視下でバルーンが完全に膨らんでいない場合、駆動装置による駆動ガスの再充填を繰り返すか、シリンジにて空気を注入と吸引を行いバルーンを一度完全に膨らませる。

A ガス漏れアラーム

 ヘリウムガス回路に規定値以上のガスリークが存在。
 バルーン内圧波形がベースラインより減少している場合は、バルーンカテーテルと延長チューブや駆動装置との接続部の緩みやバルーンの穿孔が考えられる。バルーンカテーテルチューブ内に砂状血塊又は水滴上の血液がないか確認を行い、もしあれば直ちにIABPを停止させ医師に連絡し早急に抜去を検討する。血液の付着がみられなければ、延長チューブや駆動装置の接続部の緩みなどを確認する。

B オーグメンテーション圧が低い

 動脈圧波形でバルーン拡張時の拡張期圧の上昇が低い。
 バルーン内圧波形のプラトー圧が低い場合、患者さんに対してバルーンサイズ又は、ヘリウム充填容量設定が低い、バルーンの位置が低い、患者さんの動脈圧が高い(ウィーニングできる状態)などが考えられる。他に適切にバルーンが拡張していない(バルーン内圧波形のプラトー圧高値・ベースライン低下)場合もオーグメンテーション圧は上昇しない。

C ヘリウムボンベアラーム

 ヘリウムボンベ内圧が規定値以下に低下している。
 ヘリウムボンベバルブの開き忘れ、ヘリウムガスがない等が考えられる。ヘリウムボンベバルブの開放を確認後、ヘリウムボンベ残量を確認し、空になる前に交換を行う。


 IABPの離脱

≪離脱指標≫

● 血行動態的指標

絶対的条件
  ・収縮期圧≧90mmHg
  ・肺動脈楔入圧(PCWP)≦20mmHg
  ・心係数(CI)≧2.0L/min/u
(平均血圧≧60mmHg、脈圧≧30mmHg)
相対的条件
  ・心拍数(HR)≦110/min
  ・尿量≧30ml/hr

● 臨床的指標

不整脈の消失
心不全の解消
尿量の確保
バルーン拡張による圧よりも自己心拍の収縮による圧が明らかに優位である

≪離脱≫

  患者さんの自覚症状や血圧、心拍出量の低下、虚血性変化、心不全の出現などをモニタリングしながらアシスト比を1:1→2:1→3:1→4:1と補助頻度を減少させウィーニングを行う。


 IABPの限界

 IABPは、基本的に圧補助でありその効果は正常心機能の15〜20%、流量補助としては0.8〜1.0L/分程度と考えられる。したがって、IABP後も改善しない心不全症例や致死的不整脈には、流量補助としての経皮的心肺補助法(percutaneus cardiopulmonary support;PCPS)が必要となる。

1)心係数0.8 〜 1.2 L/min/u 以下
2)収縮期血圧50mmHg 以下
3)左房圧(肺毛細管楔入圧)30mmHg 以上
4)左室自由壁の50%を超える心筋梗塞

 上記のような場合にIABP は無効で限界とされている.PCPS などの静動脈バイパス(VA バイパス)や補助心臓などの流量補助機能を有する補助循環装置に移行する必要がある。


参考

タイトルアクセス日アドレス(URL)
急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)
日本循環器学会
2013/1/12http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_izumi_h.pdf
心臓の病気と治療薬2013/1/12http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/shinkin/medicine/medicine-2-2.html
メルクマニュアル オンライン
心不全(うっ血性心不全)
2013/1/12http://merckmanual.jp/mmpej/sec07/ch074/ch074b.html#CIHBEDAD
お医者になるのは、大変ですね
Forrester分類 まとめ
2013/1/12http://oisha.livedoor.biz/archives/50341266.html
IABPバルーンカテーテル 製品情報
東海メディカルプロダクツ(T.M.P.)
2013/1/14http://www.tokaimedpro.co.jp/product/2008/000024.html
ゼメックスIABPバルーンカテーテル プラス
ゼオンメディカル
2013/1/14http://www.zeonmedical.co.jp/product/circulation/assisted_04/iabp_balloon_p_01.shtml
アローIABP カテーテル LightWAVE(FiberOptix)
添付文書
2013/1/14http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/md/PDF/100358_21800BZY10044000_1_01_04.pdf
吉岡式IABP バルーン
添付文書
2013/1/14http://www.tokaimedpro.co.jp/product/images/iabp_4_3_090713.pdf
IABP * Version2007暫定版 - ICU.web2013/1/14http://icuweb.biz/manual/pdf/2-06_IABP-draft.pdf

書籍著者(編者、監修)名書名(タイトル)出版年出版社
吉津良平 病棟必携!カラーで診る補助循環マニュアル 決定版 2010年メディカ出版
安達秀雄、百瀬直樹 人工心肺ハンドブック 2007年中外医学社




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