ペースメーカ関連不整脈

HOME : 試験案内 : 目次 : 参考書 : Link : 参考文献 : メール


  未熟な左手が作ったペースメーカ関連検定試験の不整脈に関するよりぬきノートです。
左手が、試験を受けた時に作ったノートと試験問題を元に作っております。
誤りがございましたら、ご連絡下さい(時折出てくる心電図は実際のものではなく左手のハンドメイドです)。



ペースメーカ関連不整脈

Adams-Stokes(アダムス・ストークス)症候群

  頻脈・徐脈にかかわらず突然発生した不整脈が原因で心拍出量が激減し、めまい、意識喪失、痙攣などの失神発作(脳虚血症状)を起こす状態をAdams-Stokes症候群と呼ぶ。
前駆症状として動悸、胸痛などを自覚する場合がある


洞不全症候群(Sick Sinus Syndrome;SSS)

洞不全症候群(sss)

≪定義≫

  洞機能不全症候群とは、洞結節の刺激生成の異常および洞房伝導障害に起因する徐脈に基づく臨床症状を慢性的に有するものの総称である。


≪臨床症状≫

めまい
動悸
眼前暗黒感
失神発作
徐脈による心不全
運動耐応能の低下
精神活動性の低下

≪Rubenstein分類≫

T型 : 薬剤によらない原因不明の洞徐脈(持続性洞徐脈)

持続性洞徐脈

※ 洞徐脈とは、心拍数50/分以下の洞性調律(上記心電図は、心拍数約45/回)。

U型 : 洞停止や洞房ブロックによる心停止

洞停止

※ 洞停止とは、P波が長時間脱落がみられるもの(延長したPP間隔は、前後のPP間隔(洞周期)の整数倍でない)
  (上記心電図は、3拍目と4拍目の間が3.5秒P波脱落)。

洞房ブロック

※ 洞房ブロック(MobitzU型U度洞房ブロック)とは、突然前後のPP間隔の整数倍P波の脱落がみられるもの
  (上記心電図は、3拍目と4拍目の間が前後のPP間隔の2倍に延長)。

V型 : 徐脈頻脈症候群

徐脈頻脈症候群

※ 徐脈頻脈症候群とは、洞機能不全による徐脈発作と心房細動などの上室性頻拍発作を繰り返す
  心房細動に対する抗不整脈薬は洞機能を抑制するので、ペースメーカの植え込みなしに使用することには危険が伴う
  (上記心電図は、1〜3拍は発作性心房細動であり、心房細動停止後、約3秒間の心停止状態)。


≪診断≫

@ホルター心電図
 洞徐脈(心拍数50以下)、洞停止(P波の脱落)がみられる
A薬剤負荷試験(硫酸アトロピン、イソプロテレノール)
 心拍数が90/分以上、又は負荷前の30%以上増加しない場合
B心房頻回刺激法による洞抑制試験(overdrive suppression test)
 オーバードライブペーシング後、突然停止し、洞結節回復時間(SRT)が 1.5秒以上延長した場合

≪治療≫

ペースメーカが主体
(心房ペーシング[AAI・AAIR]が適応。房室伝導障害を合併するものはDDD(R)が適応)
薬物治療は、効果が不安定であり、副作用の問題もあるため長期にわたる投与には限界がある

≪ペースメーカ植込みの適応≫

症状がある場合
3〜5秒以上の心停止や40/分未満の徐脈が認められる場合

房室ブロック(Atrioventricular;AV block)

≪定義≫

  房室伝導系における伝導の遅延もしくは伝導途絶をいう。


≪臨床症状≫

動悸
脈拍不整
失神発作

≪房室ブロックの分類≫

T度房室ブロック : 房室伝導は保たれており(PとQRSが1対1)、房室伝導(PQ時間)が延長したもの(PQ時間>0.20秒(5mm))

T度房室ブロック

※ 上記心電図は、PとQRSが1対1でPQ時間が約0.28秒と延長。

U度房室ブロック(Wenckeback型) : 心房から心室への刺激伝導時間が徐々に延長し、最終的に房室伝導が途絶する

U度房室ブロック(Wenckeback型)

※ 上記心電図は、1拍目からPQ時間が0.16秒→0.24秒→0.30秒と次第に延長し、4つ目のP波に続くQRSが脱落している。
  脱落後のPQ時間は短縮するが、再びPQ時間は漸次延長している。

U度房室ブロック(MobitzU型) : 一定の房室伝導(PQ時間)から突然房室伝導が途絶する。

U度房室ブロック(MobitzU型)

※ 上記心電図は、1拍目と2拍目のPQ時間は0.16秒と一定であるが、3つ目のP波に続くQRSが脱落している。

2:1房室ブロック : 房室伝導比が2:1のもの'心室に伝導するP波が1つおき)

2:1房室ブロック

※ 上記心電図は、2つの心房興奮(P波)に対し1つしか心室に伝導していない2対1房室ブロック(P波1つおきに心室伝導)。

高度房室ブロック : 房室伝導比が2:1より低い場合(心室に伝導しないP波が2個以上連続)を高度房室ブロックと呼ぶ

高度房室ブロック

※ 上記心電図は、3つの心房興奮(P波)に対し1つしか心室に伝導していない3対1房室ブロック(3つのP波に1つのQRS波)。
  伝導比が低い場合、高度房室ブロックと完全房室ブロックは見分けにくいため長時間の心電図記録が必要。

V度房室ブロック(完全房室ブロック) : 心房と心室の興奮伝導が完全に途絶し、心房と心室の興奮が全く無関係に起きている

V度房室ブロック(完全房室ブロック)

※ 上記心電図は、P波は約75/分、QRS波は約45/分と規則的な独立した頻度で出現している。
  P波とQRS波は、それぞれのリズムで全く無関係に出現しており、いわゆる房室乖離状態である。
  5つ目のP波はQRS波内埋もれ、7つ目のP波はST部分に確認できる。


≪ブロック部位による分類≫

ブロック部位による分類

  ブロック部位は、ヒス束を中心にそれより上位の房室結節内(AH)ブロック、ヒス束内(BH)ブロック、ヒス束より下位のヒス束遠位(HV)ブロックに分類される。

AHブロック
(房室結節内)
BHブロック
(ヒス束内)
HVブロック
(ヒス束遠位)
補充収縮50/分程度40/分程度30/分程度
QRS幅狭い(Narrow QRS)狭い(Narrow QRS)広い(Wide QRS)
アトロピン負荷心室拍数増加心室拍数僅かに増加心室拍数不変又は悪化

≪原因疾患≫

AHブロック迷走神経の過緊張や急性下壁心筋梗塞の合併でしばしばみられるが数日で回復
HVブロックサルコイドーシスやアミロイドースなどの変性疾患や心筋炎
稀に急性前壁中隔心筋梗塞の合併で起こると改善しないことが多い

≪診断≫

@心電図
 房室伝導が途絶の有無やPQ時間を読影することで房室ブロックを分類
Aホルター心電図
 一過性あるいは発作性房室ブロックの検出に有用
B負荷心電図
 運動又は硫酸アトロピン負荷試験によって心室拍数上昇度合いよりブロック部位を鑑別
C心臓電気生理学的検査(EPS)
 150/分未満の心房ペーシングでHVブロックもしくはHis束内ブロックの有無を観察
 感度をあげるため、procainamide(アミサリン)などの薬物負荷が行われる

≪治療≫

ペースメーカが主体
(DDDが適応。洞機能不全を伴えばDDDRが適応)

≪ペースメーカ植込みの適応≫

部位
AHブロックBHおよびHVブロック
T度AVB 適応なし 症状あり:適応あり
 症状なし:極端な伝導遅延ではあり
U度AVB(Wenckebach型) 適応なし 症状の有無に関わらず適応あり
U度AVB(MobitzU型)
高度AVB1
V度AVB 症状あり:適応あり
 症状なし:※2
 ※1 : 運動負荷などで伝導比改善、自覚症状のない場合経過観察
 ※2 : 徐脈に対する代謝機転として進行性の心拡大などがある場合は適応あり
 自覚症状がない3秒以上の心停止や右脚ブロックと左脚ブロックが混在する交代性脚ブロックも植込みの適用となる

徐脈性心房細動

≪定義≫

  心房細動は、一般的に頻脈を呈するが、心停止や著明な徐脈を呈した状態を徐脈性心房細動と呼ぶ。


徐脈性心房細動

※ 上記心電図は、基線が全く不規則な波(f波)を示し、RR間隔も不規則である。
  又、約3秒間の心停止(ポーズ)がみられる(3拍目〜4拍目)。

≪症状≫

めまい
眼前暗黒感
失神
徐脈による心不全
運動耐応能の低下

≪ペースメーカ植込みの適応≫

症状のない徐脈性心房細動は適応なし
弁置換後の徐脈性心房細動
徐脈性心房細動を悪化させる薬剤を使用する場合






      目次