抗不整脈薬の作用機序
心筋細胞の活動電位と抗不整脈薬
心筋細胞(ヒス束・プルキンエ線維・心房筋・心室筋)の活動電位は、Na+依存性で第0〜4相の5相に分かれる。 ナトリウム(Na+)、カルシウム(Ca2+)、カリウム(K+)の3種のイオンが細胞膜上の様々なチャンネルやポンプなどを通して細胞内外を移動することにより、活動電位が形成される。 洞結節や房室結節細胞の活動電位はCa2+依存性でNa+チャネルが機能していない。
第0相(脱分極相) | : | Na+チャネルが開口してNa+が急速に細胞内へ流入する |
第1相(スパイク) | : | Na+チャネルが閉鎖し、細胞内へのNa+流入が停止する |
第2相(プラトー相) | : | Ca2+チャネルが開口して緩やかにCa2+が細胞内へ流入する |
第3相(再分極相) | : | K+チャネルが開口してK+が細胞外に流出する |
第4相(静止電位) | : | 再び脱分極が行えるよう細胞膜内でイオン交換が行われる |
薬剤 | 作用機序 | 副作用 |
Naチャネル遮断薬 | 興奮伝導速度を遅延し、リエントリ停止する | ・心収縮力抑制 ・催不整脈作用 |
Kチャネル遮断薬 | 再分極を遅延させることで不応期を延長させリエントリを停止・予防する | ・QT延長 ・催不整脈作用 |
Caチャネル遮断薬 | Ca依存性組織(洞結節・房室結節)の伝導速度を遅延させ、徐拍化する | ・房室ブロック ・洞徐脈 ・洞停止 |
β受容体遮断薬 (β-blocker) | 交感神経作用を抑制し、徐拍化する | ・房室ブロック ・洞徐脈 |
Vaugham Williams(ボーン ウィリアムズ)分類
I群 (Naチャネル抑制)
主作用 | : | 副伝導路の伝導抑制 |
副作用 | : | 心筋収縮力を抑制 |
≪Ta≫
一般名 | : | キニジン、プロカインアミド(アミサリン®)、ジソピラミド(リスモダン®) |
特徴 | : | 活動電位の持続時間の延長 |
効能 | : | 房室結節伝導抑制による上室性、心室性不整脈抑制 |
副作用 | : | 抗コリン作用(口渇、排尿障害) |
≪Tb≫
一般名 | : | リドカイン(キシロカイン®)、メキシレチン(メキシチール®)、アプリンジン(アスペノン®) |
特徴 | : | Naチャネル抑制が弱い。活動電位の持続時間の短縮する |
無効 | : | 房室結節伝導抑制が弱く原則、上室性・心室性不整脈無効 |
≪Tc≫
一般名 | : | プロパフェノン(プロノン®)、ピルジカイニド(サンリズム®)、フレカイニド(タンボコール®) |
特徴 | : | Naチャネル抑制が強い。活動電位の持続時間の不変 |
効能 | : | 房室結節伝導抑制による上室性・心室性不整脈抑制 |
副作用 | : | ペーシング閾値上昇 虚血性心疾患例には死亡率を上昇させるため使用すべきでない(∵CAST) |
U群(交感神経遮断(β受容体遮断))
V群(再分極遅延(Kチャネル抑制))
一般名 | : | アミオダロン(アンカロン®)、ソタロール |
特徴 | : | 活動電位の持続時間(QT)の延長、不応期の延長 心筋収縮の抑制なし |
効能 | : | アミオダロン(アンカロン®)は心筋梗塞後心不全後の予後を改善、心房細動抑制 |
無効 | : | 頻脈では無効 |
副作用 | : | Torsade de pointes型多型性心室頻拍誘発 アミオダロン(アンカロン®)は間質性肺炎、甲状腺機能障害、角膜色素沈着 アミオダロン(アンカロン®)は投与初期は除細動閾値低下、慢性期は上昇させる |
W群(Caチャネル抑制)
一般名 | : | ベラパミル(ワソラン®)、ジルチアゼム(ヘルベッサー®) |
特徴 | : | 房室結節の伝導抑制 |
効能 | : | 発作性上室性頻拍の抑制 |
致死性心室不整脈に対する治療
突然死予防のためのT群抗不整脈薬投与には有用性がない。U群薬であるβ遮断薬は心不全症例に対する予後改善効果と突然死予防効果が確立され、特に非選択的β遮断薬でα遮断作用もあわせもつcarvedilol(アーチスト®)は突然死に対し、50%ものリスク減少効果を有する。V群薬のアミオダロン(アンカロン®)、ソタロールは突然死予防効果が高い
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