血液浄化法の種類と特徴

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  未熟な左手が作った臨床工学技士国家試験の血液浄化装置に関するよりぬきノートです。
誤りがございましたら、ご連絡下さい。




血液浄化法

分類

@ 血液透析 (HD : hemodialysis)
A 血液濾過 (HF : hemofiltration)
・ ECUM (体外限外濾過 : extracorporeal ultrafiltration method)
・ 連続的血液濾過 (CHF : cotinuous hemofiltration)
連続的動脈静脈血液濾過 (CAVH : cotinuous arterio-venous hemofiltration)
連続的静脈静脈血液濾過 (CVVH : cotinuous venous -venous hemofiltration)
B 血液透析濾過 (HDF : hemodiafiltration)
・ オンラインHDF (on-line HDF)
・プッシュプルHDF (push & pull HDF)
C血液吸着 (HA : hemoadsorption)又は、直接血液灌流 (DHP : direct hemoperfusion)
D 血漿交換療法
・ 単純血漿交換法 (PE : plasma exchange)
・ 二重膜濾過血漿交換法 (DFPP : double filtration plasmapheresis)
・ クライオフィルトレーション (CF : Cryo filtration)
E 腹膜透析 (PD : pertoneal dialysis)
・ 間欠的腹膜透析 (IPD)
・ 連続的腹膜透析 (CPD)

@ 血液透析 HD

血液透析 HD

  体外循環させた血液が血液浄化器(ダイアライザ)を通る際に透析液と透析膜を介することによって、拡散と限外濾過が起こり、溶質の移動が生じる。この原理により体内不要物質を除去する。慢性腎不全の患者に対する最も一般的な血液浄化法

≪特徴≫

HFに比べ中分子量の除去効率は劣るが、小分子量の除去効率は大変優れている。
小分子物質の除去効率が良いため、血圧低下や不均等症候群を起こしやすい

A 血液濾過 HF

血液濾過 HF

  透水性の高い血液濾過用分離膜(フィルタ)を通して大量の限外濾過と電解質補正により体液を破棄し、それに見合った置換液を補充する血液浄化法。

≪方式≫

  濾過器の流入前に補充する前希釈方式と濾過器の流出後に補充する後希釈方式がある。
除去効率の点から後希釈が用いられることが多い。

T.前希釈方式

  血液が希釈され、低蛋白濃度、低粘度になり膜間圧力差の小さい濾過が可能
除去対象物質の血液側濃度も希釈により減少してしまうため、除去効率は後希釈より低い
但し、前希釈方式では置換液のコストさえ考えなければ、理論的には置換液は無限に増大可能

U.後希釈方式

  同じ置換液量では、前希釈方式に比べて除去効率が良い
体外循環された患者血液をそのまま濾過する為に、むやみに濾過流量(置換液流量)を増やすことは出来ない。よって、置換液量は、体外循環できる血液流量に強く規定される

≪特徴≫

HDに比べて小分子量物質の除去効率は劣るが、中分子量物質の除去に優れている。
除去される濾液が、患者血漿とほぼ等張な事から血圧低下や不均等症候群を起こしにくい

≪適応≫

  緑内障、心包炎、心不全、貧血など

≪種類≫

@) 体外限外濾過 ECUM

  補充液を用いない除水を目的としたHF。水分が貯留した場合や、除水不足の場合にしばしば施行される。ほぼ等張な濾液が得られるため、血圧を含む循環動態に及ぼす影響が極めて小さい

A) 連続的血液濾過 CHF

  血液濾過を連続的に緩徐に施行する治療法。間欠法に比べ患者の循環動態が比較的安定する。
急性腎不全や種々の合併症を有する慢性腎不全患者などに適応させる。

CAVHフィルタへの血液の供給を患者自己の動脈圧で行わせ、静水位差(落差)を利用して行う機械(血液ポンプ)を用いないCHF
CVVH血液ポンプを用い静脈より脱血し静脈へ返血するCHF

B 血液透析濾過 HDF

血液透析濾過 HDF

  血液透析と血液濾過を組み合わせた血液浄化法。小分子量の物質から低分子量の蛋白質領域まで広い範囲の尿毒症物質を拡散と濾過によって除去する

≪変法≫

@) オンラインHDF on-line HDF

  安価な透析液を浄化して補充液として用いるHDF。

A) ブッシュプルHDF push&pull HDF

  透析液排液側にリザーバを設け、これに透析液の一部を出し入れすることにより、正濾過(pull phase)と逆濾過(push phase)を一定時間ごとに交互に行うHDF


C 血液吸着 HA 又は 直接血液灌流 DHP

血液吸着 HA 又は 直接血液灌流 DHP

  活性炭などからなるカラムに患者血液を直接灌流させたもので吸着により溶質を除去する治療法

≪特徴≫

  補充液を必要とせず、活性炭による吸着はHDと比べると中分子物質や薬物除去に優れるが、水分除去、電解質調整が出来ない

≪適応≫

  吸着剤単独使用は薬物中毒、肝性昏睡や多臓器不全を伴う急性腎不全などの疾患に限定される


D 血漿交換療法

単純血漿交換法 PE

  血漿中の病因(関連)物質の除去、及び正常な血漿成分の補充を目的として施行される

≪血漿分離方法≫

  遠心分離法と膜分離法があり、遠心分離法は主に血液献血事業で種々の血液製剤の作製に用いられるほか、末梢血幹細胞採取に応用され造血幹細胞移植などに使用される。治療を目的とした血漿交換を目的とした血漿分離は、殆ど膜分離法が用いられている。

≪種類≫

二重膜濾過血漿交換法 DFPP

@) 単純血漿交換法 PE

  血漿分離器で赤血球、リンパ球、血小板の有形成分と血漿成分に分離し、後者を廃棄、前者に置換液(FFP)を入れ患者に還流する方法。置換液(FFP)のコスト、ウィルス感染などの問題がある

A) 二重膜濾過血漿交換法 DFPP

  血漿分離器で分離された濾過血漿をさらに血漿成分分離器へ供給し、患者に有用なアルブミン分画を患者へ還流するとともに病因蛋白を含むグロブリン分画を濃縮して破棄する2段濾過分離法。置換液(FFP)の使用量を最小限に抑えることが可能

B) クライオフィルトレーション(冷却濾過) CF

  分離した血漿を冷却(0〜4℃)することにより大分子かさせ病因(関連)物質を血漿分画器で濾過し、除去効率の向上を図る。

≪吸着剤≫

灌流方法吸着剤被吸着物質適応
血液吸着
(PA)
活性炭エンドトキシン、尿毒素
薬物等
敗血症、劇症肝炎
急性薬物中毒
ポリミキシンBエンドトキシン敗血症患者
酢酸セルロースビーズ白血球潰瘍性大腸炎
ヘキサデシル基β2ミクログロブリン透析アミロイド症
血漿吸着
(DFPP)
デキストラン硫酸LDL-コレステロール
VLDL-コレステロール
家族性高コレステロール血症
閉塞性動脈硬化症
巣状糸球体硬化症
抗DNA抗体、免疫複合体
抗カルジオライピン抗体
SLE
フェニルアラニンリウマチ因子
免疫複合体、抗DNA
悪性関節リウマチSLE
トリプトファン抗アセチルコリン抗体重症筋無力症
スチレンビニルベンゼン
共同体
ビリルビン術後肝不全、劇症肝炎

E 腹膜透析 PD

腹膜透析 PD

  腹腔に透析液を一定時間滞留させ、腹膜を介し透析しこれを排液することにより体液の調整を図る

≪特徴≫

透析に比べ、小分子物質の除去は劣るが、中・高分子物質の除去に優れる。
緩徐で連続的なため不均衡症候群の発症が少ない。
ブラッドアクセスに問題のある患者、透析困難症などが適応となることがある。

≪種類≫

@) 間欠的腹膜透析 IPD

  週に2〜4回、1回に6〜10時間。1回の透析液貯留時間を1時間程度として頻回に液の交換

A) 連続的腹膜透析 CPD

  一回4〜8時間の貯液を3〜4回自己交換する。CAPDに自動腹膜灌流装置(サイクラー)を使用した透析法をCCPDといい、さらに夜間の透析液の貯留のみを行うCCPDをNPDと呼ぶ。

利点

液の交換以外の時間は、常に透析液を腹腔貯留している為、効率は優れている。
閉鎖システムの為、IPDより腹膜液の発症が少ない。
社会復帰の観点から優れている。

欠点

昼の交換回数を多く大変
蛋白漏出の増加
グルコース吸収の増加







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