金属材料
生体に使用される金属材料の種類には、ステンレス鋼、コバルトクロム合金、チタン・チタン合金、タンタルなどがある。
≪金属材料の用途≫
骨折固定材料(ボーンプレート、ネジ、ボルト、ステープル、ワイヤー、髄内釘)、クリップ、コイル、ステント、人工歯根、人工弁の枠、補助人工心臓、血液ポンプなど
≪金属材料の生体反応≫
細胞成長を抑制、変性、壊死させるなど強い毒性 : Hg(水銀) ・ Cu(銅) ・ Cd(カドミウム) |
生体組織に対する反応性が弱い : ステンレス鋼 ・ Co-Cr合金 ・ Ti合金などの合金(固溶体) |
細胞成長を促進させる : Au(金) ・ Pt(白金) |
※ 生体に使用される金属材料には、生体反応が小さいステンレス鋼、Co-Cr合金、Ti合金などの合金が使用されている。
ステンレス鋼 (SUS)
≪成分組成≫
主成分 : 鉄(Fe)
Cr (16〜18%) | : | 不動態皮膜(酸化クロム(Cr2O3))を形成し耐酸化性作用を示す |
Ni (12〜15%) | : | 不動態皮膜の安定化 |
Mo (数%) | : | 耐腐食性の向上 |
Mn (数%) | : | 合金を安定化 |
≪特性≫
@ | 低コストで機械的加工性(成型加工)が優れており、金属材料の中で最も広く用いられている |
A | 機械的性質が劣る |
コバルトクロム合金 (バイタリウム®)
≪成分組成≫
主成分 : コバルト(Co)
Cr (27〜30%)、Mo (5〜7%)、Ni (2.5%)等が含まれている。目的は、ステンレス鋼は同じ。
≪特性≫
@ 鍛造(叩いて形成)加工が難しく、通常は、鋳造(型にはめて形成)加工される |
A 鋳造用(HS-21) : | Mo含率が高いために耐食性に優れている反面、機械的強度が低い |
B 加工用(HS-25) : | Mo含量が低いために耐食性はやや悪いが機械的強度は高い |
チタン及びチタン合金
≪特性≫
@ | チタンは比重が4.5で通常の金属材料の約1/2程度と軽い |
A | 機械的性質、耐食性、生体適合性が優れている |
B | チタン合金の機械加工性は最悪で空気中で加工すると機械的強度が低下するため真空又は、 アルゴン気流中での加工が必要 |
C | 耐摩耗性が劣る |
金属材料の特徴比較
| 機械的性質 | 耐食性 | 加工性 | 備考 |
ステンレス鋼 | △ | △ | ◎ | 最も広く用いられている |
Co-Cr合金 | ◎ | ○ | △ | 鍛造加工不可。鋳造と加工がある |
Ti及びTi合金 | ◎ | ◎ | △ | 生体適合性が良い。耐摩耗性悪い |
機械的性質 : 硬さや変形、熱、摩擦、疲労に対する強さなどの性質
耐食性 : 錆びにくさの性質
加工性 : 形成、加工のしやすさの性質 |
形状記憶合金
≪材料≫
Ni-Ti合金、Fe-Mn-Si合金、Cu-Zn-Al合金など
≪性質≫
形状記憶性と超弾性を併せ持つ
形状記憶性 | : | 予め高い温度で形状記憶させておくとそれよりも低い温度条件下で変形を加えても 再び高い温度で処理すると変形前の元の形状に戻る性質 |
超弾性 | : | 通常金属の弾性限界値を超えた変形を加えても、 除荷すれば、元の形状に戻る性質 |
≪用途≫
脊椎側弯症のブリッジ材料など
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