医用画像
画像撮影装置と検出信号
種類 | 画像撮影装置 | 検出信号 | 画像 | 空間分解能 |
X線 | 透過X線 (X線TV) | 透過X線 | 形態画像 | 0.1〜0.5mm |
デジタルラジオグフィ | 0.1〜0.4mm |
X線CT | 0.3mm |
ラジオアイソトープ (RI) | γカメラ | 放射γ線 | 形態画像 機能画像 | 3〜5mm |
単光子断層法 (SPECT) |
陽電子断層法(PET) | 陽電子消滅γ線 |
超音波 | 超音波エコー法 | 反射超音波 | 形態画像 | 0.5〜1mm |
核磁気共鳴 (MRI) | 水素密度 | 磁気モーメント | 形態画像 機能画像 | 0.3mm |
スピン格子緩和(T1) |
スピンスピン緩和(T2) |
X線画像
X線の発生
X線管の陰極(タングステン)の温度を上げることによって電子が発生し、その電子が陽極表面に衝突しX線が発生する。
デジタルラジオグラフィ
≪原理≫
X線がイメージプレート(IP)と呼ばれる蛍光版に照射され、IPに蓄積されたエネルギーをデジタル信号化し、コンピュータによる画像処理ができるようにしたもの
≪デジタルサブトラクション血管撮影(DSA)法≫
造影剤と関係ない背景像を消し造影剤が入った血管だけ鮮明に像を作る
X線CT
≪原理≫
人体の各断面を回転走査し、得られたX線吸収係数をコンピュータでデジタル化処理し、各マトリックス断面上の各画素の吸収係数値として画面を再構成し、グレースケールにより画像化
≪CT値(ハンスフィールド単位)≫
水のX線吸収係数を基準(0)として、骨は1000、空気は−1000して、生体の各組織のX線吸収係数を相体値で表したもの
≪ヘリカルスキャン≫
X線管を連続回転させつつ、被験者の乗った台を移動させ、螺旋状に走査する
RI画像
放射型(エミッション)CT法
体内にRIを注入したRIから体外に放射されるγ線をNaI結晶を用いてγ線のエネルギーを蛍光に変換する。この光をNaI結晶の背面に配置した光電子増倍管で受光し、光の強さに応じた電気信号に変換、増幅し、CT像を得る。このシステムをシンチレーションカウンターという。
≪単光子型CT(SPECT)≫
体内に注入されたγ線放出核種(99mTc、133Xe、123Iなど)から放出されるγ線を一方向からしか入射されないようコリメータを設けた検出器で検出しCT像を得る。
検出物 : 脳血流量、血流分布
≪陽電子放射型CT(PET)≫
体内に注入された陽電子放出核種(11C、13N、15O、18Fなど)から同時に放出された2本の陽電子消滅γ線を複数の並べられた検出器で検出しCT像を得る。
検出物 : 脳血流量、酸素代謝、アミノ酸代謝、神経伝達物質と受容体の分析
≪PETの特徴(SPECTとの比較)≫
@ | 解像度、定量性に優れている |
A | 雑音の影響が少なくS/N比の高い画像が得られる。 |
B | コリメータが不要(同時期に検出器に入った2本の陽電子消滅γ線を信号として捕らえるため) |
C | ポジトロン核種は半減期が短いため、小型のサイクロトロンが必要 |
超音波画像
超音波エコー法
≪原理≫
超音波を発射し、音響インピーダンスの異なる組織の境界からの超音波反射を画像化したもの
≪音響インピーダンス≫
媒質の密度と伝播速度の積で表される。
音響インピーダンスZ=ρ×c ρ:媒質の密度 c:音速
音響インピーダンスが高いほど強い反射が起こる。
≪周波数と波長と伝播速度≫
v=f×λ v[m/s]:伝播速度 f[Hz]:周波数 λ[m]:波長
≪周波数特性≫
・ | 高周波ほど分解能がよく(表在臓器に良い)、指向性がよく、減衰が大きい(透過性が悪い) |
・ | 低周波ほど分解能が悪く(深在臓器に良い)、指向性が悪い、減衰が小さい(透過性が良い) |
・ | 周波数は、1〜20MHzを使用する |
≪分解能≫
距離分解能 | : | ビームの進行方向の分解能。波長が小さいほど良い |
方位分解能 | : | ビームの垂直方向の分解能。ビームの幅が小さいほど良い |
探触子
≪振動子≫
BaTiO3(チタン酸バリウム)、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)、PVDF(ポリフッ化ビニルデン)
≪種類≫
リニア探触子 | : | 腹部臓器や甲状腺診断などの体表臓器に使用 |
セクタ探触子 | : | 肋間から超音波ビームを投入するため扇形走査を行う |
メカニカルセクタ | : | 振動子を機械的に回転走査 |
電子セクタ | : | 振動子を数十素子配列し、超音波を発射 |
コンベックス探触子 | : | リニアとセクタの特徴を活かした探触子 |
≪受信器≫
ゲイン
反射波のエネルギーを増幅度(ゲイン)を調整する。ゲインを高くすると画面は白くなる。
STC
反射波の強さは、深度によって異なるため、反射波を受信するまでの時間(深度)に対して受信の感度(輝度)を補正する。
ダイナミックレンジ
反射波の信号の幅をダイナミックレンジと呼び、ダイナミックレンジを広くとるとコントラストの少ない画像ができ、狭くとるとコントラストのはっきりした粗い画像ができる。
表示法
≪Aモード≫
1本のビームを発射させた場合に距離と強度の関係を表示したもの
≪Bモード≫
多数のビームを発射した超音波が臓器およびその境界などで反射し、探触子に帰ってきた強さを、輝度に時間を距離に表示する方法
≪Mモード≫
ビームは、1本で縦軸に距離、横軸に時間を設定し、反射の強さを輝度変化して臓器の時間的な動きを記録する方法。
目的部位に対してビームが直角に入射するようにする。
≪ドプラモード≫
近づいてくる音は高く、遠ざかる音は低く聞こえるドプラー効果を利用する。赤血球の反射より非観血的に血流方向や血流速度を測定する。
波形の分析より血流の種類(動脈か静脈か門脈か)や血流量も知ることができる。
ビームと血流が平行に入射するようにする。
◆パルスドプラー
距離分解能があるので任意の血流部位を検出できるが、最大速度と最大観測深度に限界がある。
最大速度を超える血流を検出するとエアリアシング(折り返し現象)として現れる
◆連続波ドプラー
超音波の連続波を利用するため距離分解能を持たず、どの部位からの血流情報かは識別が困難であるが、測定可能な速度に限界がないため速い血流測定に適している。送信と受信の働きは別々の振動子で行っている。
≪カラードプラー≫
血流の方向、速度、乱流度の情報をリアルタイムでカラー表示する。 探触子に向かう血流は赤色、遠ざかる血流は青色で示し、血流速度が速いと輝度が高くなり、遅いと輝度を低くなる。乱流度は緑色で示す。
≪パワードプラー≫
カラードプラーで、赤・青をキャンセルし、全てオレンジ(黄)で表示させる。感度が向上し、微量なドプラーも検出できる。エアリアシング(折り返し現象)も起こらない。
血流の有無を調べること目的とする。
核磁気共鳴画像(MRI)
核磁気共鳴
≪原理≫
@ | プロトン(水素原子核)に一定(静)磁場を加え歳差運動が起こる
一定の静磁場をかけるバラバラの方向に回転していた水素原子核(プロトン、1H)は、一定の角度を保ちその周りを回転する歳差運動(コマのような回転運動)を始める。
この歳差運動は原子核の種類によって異なり、原子核に固有の一定周期の歳差運動をラーモアの歳差運動という。 |
A | 電磁波(RF波)を加え共鳴が起こる(核磁気共鳴)
静磁場によってラーモア歳差運動をしている所に高周波(RF波)を加えるとそのエネルギーを吸収し歳差運動の軸方向が変化(核磁気共鳴)する。 |
B | 電磁波(RF波)を止め緩和現象が起こる
RF波によって倒された磁気モーメントは、RF波を切る事で共鳴状態から元の一定の静磁場での歳差運動に戻る緩和現象が起こる。この時、共鳴(MR)信号を放出されるのでこれを測定し画像化する。 |

≪緩和現象≫
縦緩和(T1) | : | 水素原子核と周囲の原子の相互作用が失われる時間
はじめのスピン状態に戻ってゆく緩和現象(T2より長い) |
横緩和(T2) | : | 水素原子核同士の相互作用が失われるまでの時間
不揃いになり、バラバラになってゆく緩和現象(T1より短い) |
※ 腫瘍組織は正常組織に比べ緩和時間は長くなる。 |
≪プロトン密度強調像≫
各組織に含まれる水素原子核スピンの密度や分布の差を画像化
≪傾斜磁場≫
プロトン密度画像で位置情報を得るために行われる。
≪化学シフト≫
ある原子が化学結合していることにより、共鳴周波数が変化すること。
≪MRIの特徴≫
@ | 無侵襲である |
A | 軟組織のコントラスが高く病変の検出能に優れている |
B | 任意の方向の撮影が可能 |
C | 骨や空気によるアーチファクトが少ない |
D | 生体内の化学的情報(結合状態)が得られる(化学シフト) |
E | MR血管造影(アンギオグラフィ)は造影剤なしでも可能 |
F | 磁性体(金属、ペースメーカ、クリップなど)は持ち込めない |
G | 撮像時間が長い |
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