生体の電気的受動特性
細胞の電気的モデル
物体の電気的特性を表現する定数には導電率、誘電率および誘磁率の3つがある。生体組織の誘磁率は真空の誘磁率にほぼ等しい(ほぼ0)ので非誘磁体と考えてよく、従って生体組織は導電性と誘電性の両性質をあわせもった物体と考えられる。
≪細胞膜の電気特性≫
電気的なコンデンサ(1〜10μF/cm程度)である。
≪細胞内液と細胞外液の電気特性≫
細胞内液と外液の電解質組成は異なっているが、イオン濃度としては同程度であることから両液の導電率は約10mS/cm。
≪生体組織の電気抵抗率≫
骨>脂肪>内臓>筋肉組織>神経組織>血液
≪生体組織の電気的等価回路≫
細胞内液及び細胞外液をコンデンサと電気抵抗の並列回路、細胞膜をコンデンサと見なし、この両者を直列に結びつけたモデル
導電率と誘電率の周波数依存性
周波数の増加とともに導電率は上昇し、誘電率は減少する。
α 分散 | : | 数10Hz付近でおき、細胞のイオンの移動に関係して生じる |
β 分散 | : | 数MHz付近でおき、細胞や組織の不均質に関係して生じる |
γ 分散 | : | 18GHz付近でおき、水分の誘電分散に関係して生じる |
低周波 | : | 導電体(含水組織)又は導電体と誘電体の両方(低含水組織)の性質 |
高周波 | : | 誘電体の性質 |
生体内の電気伝搬
低周波 | : | 導電体のためオームの法則に従う |
高周波 | : | 電磁波としての性質が強くなり、吸収、反射、屈折、散乱など複雑に変化 |
吸 収 | : | 生体の導電率に比例 |
・ 含水率(導電率)の多い組織(筋・神経・内臓など) 生体表面近くで吸収され、深部に到達しない |
・ 含水率(導電率)の少ない組織(脂肪、皮膚など) 吸収が小さく、深部まで到達 |
生体の電気的能動的特性
神経・筋の膜特性
≪能動輸送≫
細胞膜はエネルギーを消費して濃度勾配に逆らって物質やイオンを移送
≪膜電位≫
細胞内は、細胞外に比べ負(−60〜90mV)に帯電。これを静止電位という
≪興奮≫
興奮性細胞に刺激が加わると一過性に膜電位が大きく変動し、細胞内が脱分極と呼ばれる正(0〜45mV)の状態となる。その後一旦過分極といわれるオーバーシュートを経て、静止電位に復帰する。興奮した状態の電位を活動電位という
≪絶対不応期≫
過分極期間で全く刺激を受け入れない時期
≪相体不応期≫
強い刺激のみ反応する時期
生体に対する電流作用
低周波電流の生体影響の限界電流値
マクロショック | 心室細動発生 | 100 mA |
離脱限界電流 | 10〜20 mA |
最小感知電流 | 1 mA |
ミクロショック | 心室細動発生 | 100 μA |
商用交流(50〜60Hz)は、最も電撃を受けやすく危険
基電流とクロナキシー
≪基電流≫
興奮性細胞に電気エネルギーを付加して興奮が引き起こされる電流閾値
≪クロナキシー≫
基電流の2倍量の電流を流したときの興奮に至る最短通電時間
|