02
聖痕学園学長室―― 高級そうなソファでは、寝息ひとつさせない幸せそうな寝顔があった。長い足をソファの肘掛けにだらしなく乗せ、もう一方の肘掛けを枕に眠る少女の名は、セリナ・クリブス・ローウェ。かつてはアナーキー・プリンセスともパイロ・プリンセスとも呼ばれ、恐れられた彼女だが、今はもっぱら眠り姫・スリーピングビューティーと呼ばれている。 学園の制服であるブレザーを身に纏い、口を半開きにして眠っているさまからは、かつての二つ名など想像もつかない。事実、セリナの寝顔は美しく、静かに目蓋を閉ざしているところは、まさしく眠れる美少女であったし、彼女の本性を顕わすかのような、妖艶にして貪婪な雰囲気を感じ取れるものは、この学園の中ではごくわずかにしか存在していなかった。 ヴィス=テイルはセリナの向かいのソファにちょこんと横座りに腰を下ろして、彼女のことはきれいにいないものとあつかっていた。樫の机についてヴィスと向かい合っている学長にとっても、それは同様であった。 ヴィスは呪道連盟の盟主たる証の紫のローブにサンダル履き、そして真紅の玉髄のはまったメダリオンを首から下げていた。短い金髪に肌の白い彼女は一見すればただの美少女にすぎなかったが、真正面から相対すれば、彼女の異様が嫌でも目についた。 ヴィスの瞳は、左右で色の違うヘテロなのだ。左が紅、右が翠でその魔眼に見つめられて平静でいられるものはそうはいなかった。もちろん、古馴染みである学長は平気ではあったが、その眼力を苦手としていることは否めなかった。 聖痕学園学長・リャセルフォイヤは、濃灰色のスーツにハイカラーをつけ、首からロザリオを下げているという簡素な出で立ちだった。漆黒の髪の毛も短く刈り、顎髭をたくわえているさまからは一般生徒たちへの威厳十分といったところだが、生憎ヴィスには通用しなかった。 「……ここ、あなたの部屋じゃないの」 ヴィスが不思議そうに言う。その言わんとするところを悟って学長は嫌な顔をしたが、口ではなにも言わなかった。その代わりに彼はため息をひとつついた。 「それが不満かね」 「いいえ、全然。ただ意外だっただけよ。この学舎で学長室といったら、ひとつしかないって思っていただけ」 「そんなものは、どこにあっても構わないじゃないか」 今度はヴィスの方が嫌な顔をする番だった。 「それもそうね……つまらないこと言って悪かったわ」 「そんなことを言うために遠路はるばるやってきたわけでもあるまい? わざわざ顔を見せにきた、とも思えんがね、それともそうなのかね」 学長が、ついに沈黙に――当たり障りのない話題に――降参して言った。 「そうね」 だがヴィスは、自分のペースを崩そうとはしない。 「顔を見に来た、というのは半分間違ってないわ」 「ほう」 学長は眉を顰めてみせる。 「わたしの顔を見るのがそんなに嫌だった?」 ヴィスが冷笑する。 「別段そういうわけではないがね、その残り半分とやらを早く聞かせてもらいたいところでね。私もこう見えて忙しい身なのだ。最近は特に」 「そう、最近……。この千年もの間、こんなところに閉じこもってむざむざと時間を無駄に貪り続けてきたあなたでさえ、最近の動きには対応せざるを得なくなってきたってところかしら」 ヴィスの言葉に、学長は頬を強ばらせた。 「なにが言いたいのかね」 「分かっているでしょう? それとも、相変わらずわたしの口からきちんと聞かない限り分からない振りをし続けるつもり?」 「――!」 学長の目に怒りが走るが、それも一瞬のこと。ヴィスとて表情は動かなかった。 「リャセルくんは、昔からそうだったものね。嫌なことは直接言われない限りないことにして逃げてばかり……ずるいのよね」 「子供あつかいはやめてもらいたい」 「あら」 外見、子供の域をわずかに脱したかにしか見えないヴィスが、老獪な笑みを浮かべる。 「それはごめんなさい。お互い、長いときを生きすぎているのよね。そのせいだと思って許してちょうだい」 学長は口許を動かしたが声は出なかった。 「わたしも、年相応に老婆にでもなれればよかったのだけれど。……それでもだめかしら? 年相応なら、骨すら残っていないはずだものね」 ヴィスは自嘲して肩を揺らした。 「ところで、あなたのかわいい魔神はどうしたの?」 「そういう言い方はやめてもらえないかね。彼女は所用があって出かけている」 「あら。教会を放り出して彼女が出かけるなんて、ネフ女王麾下の魔霊王たちと作戦会議?」 それは当たらずとも遠からず、といったところだったので、学長は黙って首を振っておいた。それは少なくとも正解ではないのだから。 「彼女に用があったのなら、伝言を聞いておくがね」 「いいえ。……でもそうね。まったく用がなかったってわけでもないのよ。あなたのことは、彼女にも聞いてもらいたかったし。でもいいわ。いないのなら、きっとそういう運命だったのよ。あとで自分で伝えてちょうだい。……ちゃんと言うのよ? わたしがいなくなったからって黙ったままでなかったことにするなんて許さないんだからね」 少女はずけずけと発言を続けた。 「わたし、このホームを出ることにしたの」 「――なんだって?!」 学長は愕然と腰を浮かせた。 「そ……それは、正気かね」 言葉を継いで、やっと椅子に腰を落ち着ける。 「ええ。でもどうしてそんなに大げさに驚くの? もしかしてわたしに惚れてたかしら?」 「ばかなことを」 「じゃあなに?」 「君が、ホームを捨てるなどという愚挙に出ようとは、予想だにしなかったというだけだ。それに、聞くところによれば誰しもが安全に他のホームに行けるというものでもないそうじゃないか。その保証が取れたのかね?」 「んー、どうかしら」 ヴィスははぐらかして微笑んだ。 「それに、そんなことはいいのよ。ただの挨拶だから。わたしが言いに来たのはそのことじゃないの」 「まだあるのかね」 「まだ、じゃないの。あなたに言いたいことはまだ言ってないって言ってるのよ。何故あんなことを言ったかと言えば、あなたに最後に言っておかなくちゃならないことがあるからよ」 学長は渋い顔をする。 「簡単なことなの。いい加減、逃げるのはやめて、あなたも超越しなさい」 学長は顔を顰めてうめいた。 「それが、あなたの責任のはずよ」 「超越は……、」 学長がなにかを言いかけるが、ヴィスはそれを遮った。 「――あなたのご託なんて聞きたくないわ。それはもういいって言ってるのよ。今度の革命の機を逃したら、どうするつもりなの? あれはもともとあなたの責任なのよ」 「何故だね。何故そこまで言われなければならないのかね」 「まだ言われなきゃ分からないの?」 ヴィスが呆れた風にため息をつく。 「今度こそ屍皇を倒さなければならない、その討伐の責をあなたが負っているって言ってるのよ」 「……それは、分かるがね」 「それを分かってるんなら、答えはひとつしかないはずよ」 少女の剣幕に、学長はため息をついた。 「だが、千年前の責を私に問うのはやめてもらいたい。あれはクゥたちの起こした戦なのじゃないか。私は最後まで反対していたのだ。無理だと分かっていたからね」 「あなたも、相当なばかね」 今度はヴィスがため息をつく番だった。 「イルターヴがあなたのところから盗み出されたって話は聞いているわ」 学長は言い返すこともできず、ただ低くうめき声を出すだけだった。 「あれが世に現われたのだとしたら、次に待っているのはなにかしら? ましてリディナが降臨し、遂に渦虚の双玉もリリトの手によって発見され、解放されてしまったのよ。もう、残された時間なんてほとんどないってことくらい、平和ボケしたあなたにだって分かるでしょう?」 「……だがね、ヴィス=テイルさん。私が超越を成し得たとしてそれですべてが打開できるとでも言うのかね。私にはとてもそうは思えない」 「だからあなたはばかだ、と言っているのよ」 憤慨してヴィスが言った。 「あなたひとりが超越したからといって、今さら頓服のように世の中が変わるわけでもないし、それだけであなたがザフェスに勝てるなんて甘いことは私だって思ってないわ。だけどそれは最低限の条件として必須だと言っているのよ。努力するのは、それからなのよ!」 ヴィスの剣幕に、学長は縮こまって見えた。 「それからもうひとつあるわ。ザフェスを討伐するのとは、直接は関係ないけれど、この学園のことよ」 「む。学園、かね」 「ええ。約束の地を守るために、この学園はこの場所になくてはならないわ。でもね、その守りの力で学園全体を覆うのはもうやめにしなさい」 「…………」 「もうこの学舎は、時に解放されていいはずよ」 だが、学長は首を振った。 「私はそれには賛成しかねる。私自身、その加護によってどれだけの恩恵を被ったかしれない。それは、君だってそうじゃないか?」 「ええ、そうね。でももう、そんな時代じゃないって私は言ってるの」 「後進の育英のためにも、私はここを解放するつもりはない」 他のことはともかく、そこだけは退けない、と学長は言った。ヴィスもそこの決意の意外な堅さに、気がつけば頷いていた。 「……そう。それじゃあ、仕方がないかしら。分かってもらえると思っていたのだけれど」 乾いた風が轟々と吹き荒れていた。 わたしは夜になって、乾燥した砂漠の風を留める防砂林に囲まれた小さなオアシスに辿り着いた。泉ひとつに、数十の宿屋とその周りにテントを張って作られた市場からなる、高原で典型的なオアシスの情景が広がっている。 ここに彼女がいるという保証はなかった。でもわたしの女の勘はここにいると告げていた。わたしは理性的で論理的が売り物の呪道連盟を束ねているが、そのパブリックイメージとは無縁のところにわたしの本質は存在している。即ち、直感と、卓越した魔力による霊感。それは揺るがない。 わたしはローブの砂をはたき落としながら防砂林をくぐり抜け、オアシスに足を踏み入れた。 そこは、大陸南西部の都市国家群の市に決して劣らない活気と文化の坩堝だった。呼び交う声。目を眩ませる極彩色の商品の数々。走り回る人々。汗と獣と怪しげな売り物の濃厚な匂い。ざっと見渡しただけで人間以外の異種族が、この人いきれの半数を占めているのが分かる。 わたしはこういう雰囲気は嫌いじゃなかった。むしろ、大好きだった。研究室に閉じこもり魔術研究三昧の日々を過ごすこととおなじくらい、わたしはこうした雑踏の中にいるのが大好きだった。 在りし日に、ココとこうした市場を目的もなく冷やかし歩いたことが思い出される。結局のところ、彼女だけがわたしの記憶の中で辛い思い出を伴わずに思い出せる、ただひとりの人物なのだった。それも、否定のしようのない事実だった。 わたしのような容姿のものがひとりで辿り着き、うろついても特に誰も咎めない。ただしその分、わたしへの監視の目は都市国家や大国でのそれよりずっと厳しく光っている。 ここはどんな技量の、どんな存在が出入りするか分からない場所なのだ。当然、ここで住み、暮らすものたち自身によって効率的な自治と自衛の算段が確立されている。それが監視と情報の交換――当たり前と言ってしまえばそれまでの、だが徹底されることの難しいことだった。 とはいえちょっと地の利に明るく、ちょっと幻術に長けてさえいれば、高原の少女のひとり旅も難しいことではない。わたしは水と果物をまず買い求め、それから市場の熱気に身を委ねるようにして歩き回った。 「やっと見つけた……」 その娘は、泉前の広場に赤々と燃え上がる篝火を背に、吟遊詩人の調べにのって数人の踊り子に混じって華麗なダンスを踊っていた。 背丈はわたしより小さいだろう、本当にただの子供に見える。頭にはジェスターハットを被り、頭飾りの尻尾を揺らせながら彼女は踊る。上にはシャツを、下にはスパッツだけを履いて裸足で彼女は踊っていた。 踊りの輪も、それを取り囲む人の輪も、手拍子に囃しにと盛り上がる。その中心にいるのは、間違いなくあの子だった。わたしもギャラリーの輪に加わって腰を下ろし、リリトの踊りに目を楽しませることにした。 コランバイン――女道化リリト、そして、すべてを手にしたものリリト。運命の担い手とならぶ、もうひとりの運命の柱。彼女ならば、わたしの願いを叶えることができる。それはやっかいな仕事になり、リリトは引き受けてはくれないかもしれない。しかし、どうしても頼み込まなければならなかった。 彼女のもつ、渦虚の力、そして運命の力がどうしても必要なのだ。それなくしてわたしの航海呪文は完成を見ない。そして、わたしがいなくなったあとの呪道連盟を託さなくてはならない人物への力の引継のためにも、彼女の助力がどうしても必要だった。 学園の裏庭の一角には、魔神教派をはじめ世間から異端の烙印を押されている教派・教会のための墓地が作られていた。 その中央には丸い小山が造られていて、一面に芝生が植えられていた。その頂上には大理石製のアンクがひとつ建てられている。アンクの台座には、ここに眠るルゥの名と生没年が刻み込まれ、またルゥの肖像画が描かれていた。 そう、こここそが、聖なる巫女、光の担い手ルゥの眠る墓なのだった。 肖像画のルゥはまだ少女だった。ルゥはいつも、臙脂のカソックの上に真っ白なケープを羽織り、癒しの聖杖をもっていた。目が隠れるほど長く前髪を切りそろえたおかっぱ頭の上にやはり白いボネットを乗せ、それがかわいらしい聖歌隊のように見えたものだった。そして、刻みこまれた生没年も、確かに彼女が最期まで少女であったことを表わしていた。 ココは芝生の小山をのぼると、ルゥのアンクの前で跪いた。そして持ってきた花輪を台座に立てかけると、静かに手を合わせた。ゼプタイアとマリもココの後ろでおなじように跪き、小声で祈りの聖句を唱えた。 ややあって、ココは立ち上がった。 墓地へ向かう間、そして祈りを捧げている間は神妙にしていた彼女も、墓参りを終えた瞬間からまた晴れやかな表情に戻っていた。 「さってと。お二人さんはどうする?」 特に答えを期待せずにそんなことを言って、ココは軽く背筋を伸ばす。そして小高くなっている芝生の上から、墓地と学園とを見渡した。 「いえ、特にこれといって用事はありませんが」 「ココさんはどうなさるんですか〜?」 ゼプタイアが答え、マリが質問で切り返す。この二人の息の合いようは異常だった。 「帰るけど」 ココはそっけなく答える。 「ではまたご一緒できますね〜」 マリが嬉しそうに言うが、ココは思いきり顔を顰めて見せた。 「そんなにお嫌ですか〜?」 「お・い・や、よ」 ココがそう答えたところで、マリの表情が凍り付いた。冗談で言っただけなのに、と思う暇もあらばこそ―― 「聖鎖!」 艶のある男の声が遠くでしたかと思うと、いきなり天から雷鳴が轟き、雷の鎖が二人を襲った。 ココは思わず、一歩退いて逃げる。 そうしながら背後を振り返ると、これも懐かしい顔が、険しい表情をして剣を手に駆けてくるところだった。純白のパンツにチュニック、左胸に金糸で縫った聖印、首からは金のロザリオ。それに栗色がかった長い金髪をなびかせて走り来る男の名は、マディス・レーキム。神の子と称えられるこの世で唯一の男だった。 そして、マディスにしてみれば、ゼプタイアこそが不倶戴天の敵と認める唯一の男なのだ。 ゼプタイアも即座に戒めの鎖を消去して、呪文を詠唱する。 「縛焔」 走るマディスの足許で火柱が立ちのぼり、そのまま彼を縛り上げる。 同時にマリは変身を終え、真紅の翼を生やして飛び上がっていた。 マディスが剣で縛焔を断ち切るのと、マリが上空から炎の槍を投げつけるのとは同時であった。そこへゼプタイアの次なる呪文が襲いかかる。 「炸闇」 文字どおり闇の塊がマディスに衝突するや、それは炸裂して爆発を起こす。その闇に突き刺さる炎。 しかし、マディスは防御呪文で爆発をしのぎ、炎の槍は彼の剣で真っ二つに裂かれて消えた。 そして遂に、マディスがゼプタイアを間合に捉える。 彼は一足飛びに墓前のゼプタイアに飛びかかると袈裟懸けに斬りつけた。 そこへ、旋回したマリが身体ごと二人の間に割って入る。マディスの剣はマリの真紅の翼によって跳ね返された。 弾けた闇が消えゆく中、宙に舞い上がる幾枚もの紅の羽根―― 即座にジャンプして間合いを取るマディス。 マリはその場に着地して振り返った。翼は大きく体の全面を覆い、鎧のように彼女を守る。ゼプタイアはその背後に完全に守られていた。 「久しぶりだというのに、ずいぶん物騒ですね」 呑気にゼプタイアが言った。今、この瞬間まで生死をかけた戦いが繰り広げられていたとは到底思えない発言だった。 ココは呆れるばかりだったが、それがマディスをさらに怒らせているのは明白であった。 「ああ、久しぶりだ。俺はその顔、二度と見たくなかったんだが、見てしまった以上、戦うしかないだろう?」 「そんなことないですよね〜、ゼプタイアさま?」 マリがくすくす笑いをする。 マリの発言を契機に、再びマディスが剣を揮う。切っ先で羽根の合間――マリの足許を狙って斬りつける。同時に光焔の呪文を詠唱。 マリは両脚を裂かれ、悲鳴とともにくずおれた。そこへ間断なくマディスの光焔がゼプタイアにむけて迸る。 焔を纏った聖なる光の槍が、ゼプタイアの心臓を貫いた――かに見えたのもつかの間、光焔を受け止めたのはマリの拡げた真紅の翼。 そしてマディスに斬られた足は、獣毛を生やした蹄のあるモノとなりかわって再生されていた。 マリは逆関節に曲がる足で立ち上がる。獣毛に覆われた下半身。そして真紅の翼もゆっくりと漆黒へと色を変えてゆき、マリの耳のすぐ上からはねじ曲がった角がにょきにょきと生えてきた。 ゼプタイアは涼しい顔で聖翼を自分とマリに投射する。これでふたりは聖なる光で堅牢に防御されたのだ。 マディスの聖なる力に因る剣では、これを撃ち破ることは不可能に見えた。 マリは半ば皮膜、半ば羽根を生やす翼をばさばさとはためかせながら、にっこりと微笑んだ。 「マディスさま、もうおやめになりませんか?」 だがマディスは知っていた。いかな堅牢を誇る聖翼といえど、彼の剣にかかれば数撃で打ち砕けるだろうことを。彼の佩剣はそのための剣でもあるのだから。 「いいや、まだだ」 マディスは剣を構え直すと、聖剣を詠唱し、剣の力をさらに高める。 神聖なる神の力と力のぶつかりあい。それはあり得ざるべきことであった。だがここ魔神学園では、それは不思議と特別な光景とは見えないのだった。 だが―― ココは心底呆れかえっていた。それでマディスが斬りかかったのを契機に、この場を立ち去る決意を固めたのだった。 |