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2005年1月15日 発行
全港湾神戸支部 本四海峡バス分会
http://www.hm.h555.net/~h4kaikyoubus/
zkw.h4kaikyoubus@hm.h555.net
「解雇無効」確定後の自宅待機措置は違法!
全面勝利! 被告海員組合は連帯して不法行為責任を
          負うというべきである!
会社と海員組合は連帯して
      「慰謝料・損害賠償」を支払え!
 2004年11月26日神戸地裁は、最高裁において「解雇無効」が確定した全港湾組合員3名を、会社が「出社に及ばず」として就労を拒んでいることは、本四海峡バス分会の弱体化を図るためになされた「不当労働行為」であると、明断する判決を下した。

主     文

  1. 被告本四海峡バス株式会社は、原告中田良治に対し、金220万3993円及びこれに対する平成16年9月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

  2. 被告本四海峡バス株式会社は、原告日野隆文に対し、金220万4697円及びこれに対する平成16年9月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

  3. 被告本四海峡バス株式会社は、原告板谷節雄に対し、金300万0809円及びこれに対する平成16年9月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

  4. 被告本四海峡バス株式会社及び被告全日本海員組合は、連帯して、原告中田良治、原告日野隆文及び原告板谷節雄に対し、各金100万円及びこれに対する平成15年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

  5. 被告本四海峡バス株式会社及び被告全日本海員組合は、連帯して、原告全日本港湾労働組合関西地方本部及び原告全日本港湾労働組合関西地方神戸支部に対し、各金30万円及びこれに対する平成15年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

※ 以下省略

3名を働かさないのは不法行為!!   神戸地裁
 この裁判は、最高裁において「解雇無効」が確定(2003年2月27日)した3名に対し、本四海峡バス(株)は悔い改めるどころか、あくまで「職場に戻さない」「全港湾は認めない」という海員組合の方針の下、団交拒否を続け「最高裁は働かせろとまでは言っていない」などと開き直り「社員の地位は認めるが『出社に及ばず』」と3名の就労を拒否し、「働かないのだから基準内賃金のみ」と賃金を6割に減額した。この会社と海員組合の最高裁決定を逆手にとった「なにがなんでも解決しない」との常軌を逸した悪行に対し、私たち全港湾は明らかな不当労働行為であり違法であると会社及び海員組合に対して、3名が本来働いたときに受け取るべき賃金及び慰謝料と、全港湾関西地本及び神戸支部への損害賠償を求めて、2003年4月に神戸地裁へ提訴したものである。神戸地裁は判決において、以下の判断を示した。

【3名の扱いについて】
 「原告3名は、前訴最高裁決定により、被告会社に対し労働契約上の権利を有することが確認され、本件解雇前の地位に復帰すべきところ、被告会社はことさら原告3名を就労させず、その結果、就労を前提とする賃金(基準外賃金)の支払いを受けられないのである」から、「使用者である被告会社の責めに帰すべき事由により労務の遂行が不能になったものとして、労務を提供した場合と同等の賃金の支払いを請求することができる」とした。さらに、会社の3名に対する自宅待機処分について「合理的な理由はなく、むしろ、本四海峡バス分会を結成し、全港湾神戸支部の分会としての活動を行うことを嫌悪し、分会の弱体化を図るためになされた、全港湾神戸支部に対する不当労働行為に当たる」と厳しく指弾し、就労した場合の賃金の支払いを命じた。

【3名への慰謝料について】
 「本件解雇及び前訴最高裁決定後も原告3名を運転士として就労させないことは、全港湾神戸支部に対する支配介入という不当労働行為に当たる」としたうえで、原告3名の解雇無効が最高裁決定により確定し労働契約上の地位が確認されたことは、「被告会社と原告3名との間には、労組法27条の原職復帰命令がなされたのと類する関係が認められる」とし、「原告3名は被告会社に対し、運転士として就労させることを求める権利を有する」とした。
 また、海員組合に対しては、本四海峡バス(株)における海員組合の「使用者性」を争った裁判で、神戸地裁(平成13年(行ウ)第39号事件)及び大阪高裁(平成15年(行コ)第11号事件)において「被告海員組合は被告会社に対する実質的な影響力及び支配力を有すると認められている」としたうえで、「被告海員組合は前訴最高裁決定(解雇無効)後も原告3名を職場に戻さないとの方針を再三表明し、被告会社の原告3名らに対する自宅待機処分は、このような被告海員組合の方針を受けてなされたものであることが認められる」とし、「被告海員組合は、原告3名を職場に戻さないとの方針の下、被告会社の上記自宅待機処分の意思決定に関与していると見るのが相当であり、原告ら3名に対し、被告会社と連帯して不法行為責任を負うというべきである」と判示した。

【全港湾関西地方本部及び神戸支部への損害賠償について】
 全港湾と会社の折衝の場において「被告会社の玉城常務は、全港湾とは労使関係がない、労使関係の問題は被告海員組合と全港湾との中央レベルの交渉で話し合うべきである」などと、海員組合に一任しているとの回答に終始したことは、「団体交渉に誠実に応じているものとは認められない」としたうえで、「被告会社の上記対応は被告海員組合の意向を受けたものと認められるから、被告海員組合も被告会社と連帯して、原告全港湾関西地本および神戸支部らに対し、同額の損害賠償義務を負うというべきである」と判示した。

 この神戸地裁判決は、最高裁において「解雇無効」が確定した労働者が「就労を求める権利を有する」との判断を示し、不法行為によって奪われた労働者の「働く」という権利の回復に大きな判決となった。
 また、御用労組の労働者への対応が、しばしば問題となり物議をかもしだしているが、海員組合のように55%所有の筆頭株主となり会社に代表取締役などの役員を送り込むなど、労働組合であってもここまですれば、不当労働行為の当事者となる「使用者」となり不法行為責任を負うと判示し、労働組合のあり方にも大きな一石を投じるところとなった。
 この判決を不服として会社と海員組合は大阪高裁へ控訴した。控訴にあたり支払命令の強制執行停止のため、3名への未払い賃金及び慰謝料と全港湾関西地方本部及び神戸支部への損害賠償金を法務局へ供託しなければならない。判決は海員組合にも支払いを命じているため、海員組合が3名の慰謝料の約7割にあたる210万円、全港湾関西地方及び神戸支部に対する損害賠償金の約7割にあたる40万円、総額で250万円を、他方本四海峡バス(株)は、3名の未払い賃金の約9割にあたる720万円、全港湾関西地方及び神戸支部に対する損害賠償金の約7割にあたる40万円、総額で760万円を供託し、供託金の総額は1,010万円にのぼっている。
 本四海峡バス(株)と海員組合は、不法行為を続けるためだけに、これまで数億というお金をつぎ込み、自らの手で内外の信用を捨ててきた。これまでに裁判と労働委員会が下した判決と命令は実に21件に及び、その総てが会社と海員組合を指弾したものであった。会社と海員組合は悪行を正し、判決や命令に従い会社を正常化させなければならない!
本社のある海員組合関西地方支部(海員ビル)
会社と海員組合は法と正義に従え
暴挙!3名を職場に戻さず
5名を新規採用!
 本四海峡バス(株)は、昨年12月17日から開業した新路線「大塚国際美術館前(鳴門)〜JR大阪駅」の運行にともない、5〜6名の運転手の増員が必要となったが、解雇無効となった全港湾組合員3名を職場に戻さず新たに5名を採用するという暴挙におよんだ。
 私たち全港湾は、新路線の運行が確実になり、昨年10月初めに「3名を職場に復帰させよ」との申入れをおこなった。その場においても会社の玉城常務は「3名の処遇については、争議の根本問題であり海員組合中央にあずけているので、会社はどうする事もできない」と、全港湾組合員の処遇を海員組合にあずけているなどと、ふざけた返答を繰り返した。
 兵庫地労委は、「解雇無効確定」後の会社の「出社に及ばず」とする3名への自宅待機措置及びそれにともなう賃金減額措置は、「全港湾神戸支部本四海峡バス分会の結成及び組合活動を嫌悪しておこなった不利益扱いであるとともに、分会の弱体化を意図してなされた全港湾神戸支部に対する支配介入に当たる」として、「3名を原職に復帰させなければならない」とする原職復帰命令(2004年11月2日付)を発した(詳細:かけはし34号)。さらに、2004年11月26日神戸地裁は、この3名の扱いに対して会社と海員組合による「不法行為である」と明断する判決(前述)を下した。
 会社は、この裁判と労働委員会での争いにおいて「運転士が余剰で3名を就労させるところがない」などとする主張を繰り返していたが、新路線の運行要員確保の必要はあるが「3名は戻さない」と、これまでの主張が嘘であったことを暴露した。また11月26日の神戸地裁判決を受けて、同日会社に対し判決履行の申入れをおこなった。その場で坪根専務は「海員組合に紛争の解決をお願いしている関係上、会社として単独で3名についての判断をすることは信義上できない、会社として解決について何の条件もつけていない」「3名の扱いについては、争議の根本問題であり、解決していないのに原職に戻しては、中央の和解協議の妨げになるから、復帰させないようにと海員組合に言われている」などと、筆頭株主である海員組合の「御達示」に従っている旨の返答に終始した。さらに11月30日の折衝において玉城常務は、「株主などの背景事情があり会社だけの考えでは判断できない」「3名を戻せない理由は、海員組合との関係、現場海員組合員の問題などがある」などとし、「もう(運転士が)余っているとは言えない」と自らの証言を覆した。
 会社と海員組合は暴走を加速させ、許されざる行為へとふみ込んだ。
「復帰させないように海員組合に言われている」と坪根専務
法律無視の本四海峡バス!
 私たち全港湾は、“許されざる行為”にふみ入った会社に対し、新路線の開業日である12月17日、開通セレモニーの会場である「大塚国際美術館前」(鳴門)で、「ふざけるな!」と怒りの拳を振り上げた。
 本四海峡バス(株)は、「3名を職場に戻さないことは違法である」とする裁判判決や労働委員会命令が下されているにもかかわらず、3名の原職復帰の団交も拒否したまま、新路線の運転手5名の新規採用に踏み切った。
 この暴挙に対し、全港湾の仲間や地域の支援する会の仲間たち50名が、始発駅である大塚国際美術館前へ結集した。私たちは、セレモニーの最初の挨拶に立った本四海峡バス(株) の坪根専務に対し、怒号が沸き起こるなか怒りの拳を突き上げた。同時にセレモニーに列席していた方々には、本四海峡バス株式会社(川真田社長)の悪行を暴くビラを配布した。そのビラに熱心に見入る人や、内容を確かめるように聞直し首をひねる人もいた。華やかな阿波踊りと抗議が交錯するなかバスは出発した。
 私たちは、大塚国際美術館前での抗議のあと、すぐに神戸に引き返し、海員ビル内の本社事務所で抗議集会をおこなった。日野副分会長が会社と海員組合の悪行を列挙して、それらを粉砕して会社の正常化を「勝取る」と宣言し、当該分会全員が「不法を正し正常化しろ!」と訴えた。そして、全港湾と支援する会の仲間たちから「正義の闘いが勝利するまで支援する」との力強い激励がされ、「団結頑張ろう!」で締め括った。
 会社は警察を呼んでいたが、「あんた達(会社)が、話合いに応じないからだろ」と、全港湾の排除を要請した玉城常務が、反対にたしなめられていたようであった。
12.17大塚国際美術館前抗議
beacon   〜 漂流の果てに 〜
 前述の2004年11月26日に言渡された神戸地裁判決(平成15年(ワ)第913号 賃金等請求事件)において、会社の3名に対する自宅待機処分(不当労働行為)は、「海員組合の方針を受けてなされたものである」「会社の3名に対する自宅待機処分の意思決定に関与していると見るのが相当」として、「連帯して不法行為責任を負うというべきである」と、海員組合に対し原告3名への慰謝料の支払いを命じた。さらに、全港湾との団交拒否(不当労働行為)についても「会社の対応は海員組合の意向を受けたものと認められる」として、「海員組合も会社と連帯して、全港湾関西地本および全港湾神戸支部に対し、同額の損害賠償義務を負うというべきである」と、団交拒否による損害賠償についても海員組合に支払いを命じた。
 労働組合であるはずの海員組合が、不当労働行為による慰謝料と損害賠償の支払いを命じられた。これは、日本の労働組合の歴史においても初めてのことであろう。これまで海員組合は「団結破壊を工作した3名の首謀者を許すことはできない」と、全国海員組合員の総意として本四海峡バス闘争を闘ってきたが、はたしてそうであろうか。6年におよぶ闘いで明らかになった真実は、海員組合が本四海峡バス脱退の原因を明らかにしないまま組織の面子に拘泥し、それを矜持するあまり労働組合として越えてはならない一線を越えてきたという事ではなかろうか。また会社は、4年前から無条件で争議の解決を海員組合にお願いしているという。ではなぜ、海員組合は解決を拒んでいるのだろうか。そこに見えてくる真実とは?
 座礁した巨大船「全日海」、離礁は可能か。
 1912年4月14日、タイタニック号は他船からの度重なる「氷山警告」を無視して航海を続け、海難史上最大の悲劇を引き起こしました。何故警告を無視したのか?何故沈んだのか?何故救助が間に合わなかったのか?氷山は30分前から発見していた? 謎の多いタイタニック号の事故は、近年様々な科学的解析や海底探査の結果によって、真実が解き明かされつつあります。
http://www.kameson.com/titanic/

1912年4月2日 試験運転中のタイタニック号

― ことわざ辞典 ―
概ね大きな誤りの底には高慢があるものである
                            ラスキン(イギリスの評論家 1819〜1900)
Mini 知識    ―不当労働行為―  【活かそう労働組合法より】
 今回の“ミニ知識”では、前述の神戸地裁判決(平成15年(ワ)第913号 賃金等請求事件)において、「原告3名を運転士として就労させないことは、原告神戸支部に対する『支配介入』という不当労働行為にあたる」と指摘していますが、いったい『支配介入』とはどのような行為なのでしょうか。

【支配介入】
 支配とは使用者が自分の意思で組合を左右することであり、介入とは「支配」ほどではないが組合に干渉したり組合活動を妨害する行為を指します。

1 組織介入
 組合が上部団体をどこにするか、組合員の範疇をどこまでにするか、どんな要求を企業に提出するか、争議をするか否かなど、組合自治に属する問題に、使用者が指示したり口出しすることは明らかな支配介入です。さらに、使用者側が労働者に別組合を作らせたり、組合役員選挙に介入したり、活発な組合員を地方に配属し組合活動を困難にしたりといったように、会社の意に添う組合にしようとする行為はすべて支配介入です。
2. 組合間差別と支配介入
 組合の結成や活動を非難・攻撃・妨害し、労働者が組合に入ることを躊躇させる願どうも支配介入に該当します。また、別組合の結成を指示・支援し、あるいは別組合を優遇し、労働者に別組合に誘導するような発言や行為、組合間差別なども不利益扱いであると同時に支配介入に当たります。
3. 使用者の言論と支配介入

使用者の言論や表現が憲法28条の労働三権を侵害するようなもの、例えば組合の悪口を言って脱退を働きかけたり、脱退したり争議に参加しない方が「得だ」と利益誘導したり、争議に参加すれば「処分する」などと警告して組合活動を萎縮させたりする言論や表現もこれに該当します。その場合「組合弱体化の意図はなかった」と支配介入の意志を否定しても、労働者や組合員が不利益扱いなどを恐れ、組合活動を躊躇するような影響を与えた言論なども該当します。

4. 職制や第三者の支配介入
 これまで述べたようなことを、会社役員が行えば不当労働行為であることは明白ですが、とても「使用者」とはいえない管理職や下級職制の場合はどうかという問題があります。そういった人は、労働者と日常的に接し指揮監督する立場にあり、労働者に対し大きな影響力をもっていることから、使用者はそのような立場の人が不当労働行為を起こさないように、指導・教育・管理する責任があります。例えば、上司が「将来を心配し」、心から「忠告」し「組合脱退」を持ちかけるといったように、純粋に「労働者のために善かれ」と思ってした行為であっても、支配介入に当たります。
5.親会社の支配介入
前述のような反組合的行為を、使用者に影響力をもつ親会社などの役員や管理職が行った場合も支配介入であり、「直接の使用者ではない」と責任を逃れることはできません。
             謹 賀 新 年
新年明けましておめでとうございます。
 分会結成からもうはや、6度目の新年を迎えることとなりました。この闘争も5年半が経過し裁判、労働委員会等、司法、行政の場において完全勝利をしてきましたが、いまだ解決に至っていません。しかし、分会の団結で会社・全日海をあとのないところまで追い込んでいます。ここまでに至る闘いの中で、全港湾の仲間や地域の仲間の物心両面のご支援に、感謝の気持ちでいっぱいです。これからも、みなさんの支援と団結を力に、心を引き締めて頑張っていく決意でいます。「鳴かぬなら鳴かせて見せよう本四バス」。
 それでは、皆様のご健康とご健闘と申し上げ新年の挨拶とさせて頂きます。

闘いをふりかって    ― 手にしたものは ―
 この6年間の闘いを振り返ったとき、退職金無しから退職金制度確立、災害補償無しから災害補償制度確立、40歳18万円であった基本給の大幅アップ、55歳25%賃金カットの廃止、年間休日104日から120日確保、諸手当の大幅アップ、通勤費の3倍増など、労働条件は大きく前進させることができました。さらにこの闘いは、未組織であった事務職員や乗車券発売所所員ら(争議勃発後会社指示で海員組合へ加入)の賃金の大幅アップにもつながるところとなりました。しかし、闘争の根因である不当解雇を受けた3名の原職復帰と全港湾を認知しての団交開催にはいたっていません。
 この闘いで私たちが手にした最大のものは、公正を求めて闘う職場の仲間と、私たちと共に闘ってくれる全港湾や働く仲間との絆であり、その団結であろうと思っています。そして、その仲間の絆と団結で会社と海員組合の暴挙を粉砕して、闘いを勝利し正義を実現させます。「闘うぞー!」
                              全港湾神戸支部本四海峡バス分会
                                        分会長 中田 良治
中田 分会長
WE SEEK JUSTICE!
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