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詩集 名前のないもの 第4章 名前のないもの 06

哀しみ


青い波が牙をむいた海に
灯台がひっそりと立っている
そんな絵のある喫茶店で
哀しい心しか涌いてこないのです
冷えたコーヒーはほろ苦く
舌の先に残るだけです

こうやって詩のまがいものを書いていても
誰かが読んでくれるというあてもないのです
このまま犬のように
死んでゆくのはとても寒いのです
でも
そうするほかに
できることはなさそうです

青い波が牙をむいている海を
いつかひとりで見に行きましょう
灯台はひっそりと立ち
ハマナスは枯れて
赤い実もしぼんでいるでしょう
海には流氷が来ているかも知れません

(1968.12.11)

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