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詩集 名前のないもの 第4章 名前のないもの 07

帰郷 (はくつる 4号車4の上にて)


北のはずれの海峡で
ゆっすり ゆっすり
揺られていたら
涙がにじんできたのです

ザッザッギーッ
と連絡船は傾いて
もうこんなに離れてしまったのです

いいえそうではありません
夜汽車の天井に
蚕のように寝そべって
僕は帰って行くのです

外は不思議な世界です
小さな窓の向こうに
白いものが立ち並んで
あれは森かも知れません
雪の野面を風が渡って行くのかも知れません

汽車は走っているのだけれど
僕は帰って行くのだけれど
とってもあてどなく
遠い所へ旅をしているようです

ああ
今夜はクリスマスイヴでした
メリイ クリスマス
今はもう知らない人になってしまったあなたに
やっとわかったのです
あなたが好きだったのだということが

(1968.12.24)

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