詩集TOP

冬眠
(1965.8〜1966.10)

駄荼懦惰堕
(1967.2〜1968.4)

呪歌
(1968.5〜1968.11)

名前のないもの
(1968.11〜1969.3)

拾遺集
(1969.4以降) 

 

Home

詩集 名前のないもの 第2章 駄荼懦惰堕 16

恋歌


ここに眼光朦朧たる男ありて
一葉の写真に見入りて嘆息す
かの人は清純高貴にして
そが心知り難し

いと寒き北国の冬にてあれば
ストーブのぬくもりもさだかならず
心暖まるすべもなくて
深き夜にもの想いすれば
ああ知りぬ
現在のあまりにも空疎なるを

いかんせん美しき人よ
我が知 我が力 さなきだに足らざるを
煙りうすき煙草もつきて
うす寒き眠りにつかんとせむに
閉ざさむとせし瞳のくまぐまに
浮かび来る影あるをいかんせん

(1967.11.21)

back                         next