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詩集 名前のないもの 第2章 駄荼懦惰堕 08

選択


バスに乗り遅れてしまった
その硬質の腹の中に欲望と少なくとも意欲を飲み込んで
バスはもう遠くなってしまった

人がバスの中にいる時、人はバスの一部で、バスの運命が人の運命でもある
人がバスを降りるとバスと人とは違った意志を持つ

歩いている人間にとってバスに乗っている人間は個人ではあり得ない
バスの横を歩くことによって人間であることを確認したとしても、バスの持つ力とスピードは得られない
そして歩行者は孤独である

現在の社会でバスがあるのに利用しないのはバカだろう
利用する能力がないのは不適格者であろう

バスに乗らないでバスに追いつく方法を考えるか、バスを利用する能力をつけるかが残された選択

(1967.5.17)

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