ハサミゲージに関して 質問と回答(1)



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[ 1] いわゆる「総焼き入れゲージ」について



 いわゆる「総焼き入れゲージ」というのは、通常は、ハサミゲージの測定部に老いてのみ焼き入れ処理を施すところ、全体を焼き入れ硬化処理するというものです。

 もう随分以前、35年以前ほどの昔になりますが、当方に初めて総焼き入れゲーセの製作の可否が問われたのでした。従前より取引のあったゲージ屋では対応できず、しかし、購入ユーザーの強い意向で総焼き入れゲージが求められたという事情背景があって、あちこちのゲージ屋に照会されているということでありました。
 なぜ「総焼き入れゲージ}か?という理由については、あまり要領を得ないことだったのでしたが、@ゲージ受け入れ後に、ゲージ寸法がよく狂う。その原因は、そもそもゲージの製作に際して「乱雑な」方法が駆使されているようで、最初から「総焼き」のゲージにすれば、そのような乱雑な作りはできなくなるだろうから、問題は解決する。Aゲージ素材の「丈夫さ」に不安があって、もう少し丈夫なものとすべきと考えていたところ、「総焼き入れ」をすれば、問題は一挙・同時に解決される。そういうことだったようでした。
 問題点@については、要するに「内部応力」の蓄積の問題で、確かに乱雑な作りをすると経時的に寸法変化としてその内部応力の効果が表面化してきます。それ以外にも、例えば、ゲージ測定部への焼き入れ処理後に「焼き戻し」をしておかなければ、3〜5μm程度にゲージ先端部の寸法値が小さくなっていくということが指摘されています。
 従って、「ゲージ寸法が狂う」という場合、その寸法変化の方向と変化量が把握されていないと、その原因と理由が確定できず、そのため、「総焼き入れゲージ」とすることで問題解決が果たされるのかどうか、疑問になるところではあります。しかしながら、「総焼き入れゲージが欲しい」というユーザー要求ですから、製作可能ならさっさと引き受ければ良いだけのことでしたが、生憎、当方では製作対応できないと判断し、お断りしました。

 「総焼き入れゲージ」の場合に「総焼き入れ」というのが、言葉の上では、ワーク・ゲージ全体をHRc60程度に焼き入れ硬度を持たせるべしという意味に取れそうなのですが、その場合、焼き入れの際の加熱・冷却の僅かな実行条件の「揺らぎ」によって、ワークゲージは「反り」や「曲がり」といった変形をもたらせます。その「反り」や「曲がり」を是正して「進直」に是正しようとすると、具体的には平面研削盤によって是正していくわけなのですが、どの程度の研削量によって是正しきれるかは予見できません。0.2〜0.3mm程の研削量で是正できるならあまり深刻な事態とはなりませんが、0.5mm以上も研削しなければならないとなると、大変な作業になります。そのような場合になると、事前にワーク・ゲージ表面に打刻した刻字・刻印は消除されてしまいます。焼き入れたゲージ工表面対しては、「腐食で刻字する」、あるいは、現在なら、「レーザーで刻字する」ということになるのですが、かなりな刻と・アップ要因になります。
 いっそう深刻な問題は、全体を焼き入れ処理したゲージの場合、ゲージの製作公差を大きな方向に取り過ぎた場合、その修正は不可能です。最初からやり直しをせざるを得ません。これは大きなリスクというべきことです。

 現在に至っても事情は同じですから、「総焼き入れゲージ」というものは当方では手に負えません。

 しかしながら、昨今に至り、「総焼き入れゲージ」でなければ受け入れないというユーザーがおられます。
 数年前に「総焼き入れゲージを引き受けられないか?」という同業者からの引き合いがあったのでしたが、同じゲージ屋であるなら自分のところで製作することが先ず考慮されるべきところ、アウトソースを考えるというのは、当方で判断している事情と同じ理由でそこの職人さんも製作を忌避したということでしょう。それでも、世間一般では、「総焼き入れゲージ」を製作供給されているゲージ屋さんが少なからず存在しているということは、何らかの解決策を実践されておられるということです。

 疑問が、また、元に戻ります。
 「総焼き入れゲージ」の「総焼き入れ」の焼き入れ硬度は、HRc60程度のことを条件としているのか?という疑問です。
 当方では、同じような問題意識に基づいて、「焼準処理」を、測定部への焼き入れ前に施してきています。母材強度としてはかなり強化されます。
 ゲージ素材であるSK工具鋼の焼き入れの場合、


(書き掛け中:未了)