第2話 恋愛相談役
あの告白の一件以来、あたしと水瀬は何だか前よりも仲良くなっていた。
ふってしまったのだから距離を置くべきかとも思ったが本人が気にしなくていいと言っている以上、こちらから何も言えない。告白を断ってから仲良くなるなんて変な感じだが、あたしとしても――この言い方は人聞きが悪いかと思うけど、藤夜の本性について話せる友人が出来て嬉しかったりもした。
「ねえ、水瀬は何で藤夜が嫌いなの?」
「それ、前にも聞かなかった?」
「聞いたけど。それだけ?水瀬の性格からすれば藤夜の猫かぶりなんて知ったところで面白がりはしても嫌いそうには無さそうに思えるんだけど。」
あたしもよく見た目とのギャップがありすぎるとか言われるし。
藤夜の場合はギャップというか、逆に外見にあってるような気がしないでもないけど。
あたしの言葉に、水瀬は呆れたような表情をして呟いた。
「・・・お前妙なとこするどいよな。」
「あ。やっぱり何かあるんだ。」
「単純な理由だよ。俺が好きになった娘は昔っから皆、桐原の事が好きだっただけ。」
「へぇ・・・」
やばい。つっこみづらい。
余計な事を聞いてしまったかも・・・。
「昔から女子に桐原と比べられてたからな。俺の事好きだって言ってた子が次の日には"桐原君の方が断然かっこいい"って言ってたりとか。2位呼ばわりされてたりとか。俺、結構前からあいつの猫かぶりには気付いてたからな。逆恨みしてたのかも。俺はそんなのに負けたのかって―――」
「そんな事ないよ。」
水瀬の言葉を遮るようにしてそう言ったあたしを、水瀬はきょとんとした顔で見る。
「水瀬が好きだった女の子たちはたまたま藤夜の方が好きだっただけで、別に水瀬が藤夜に負けてるとかそんなんでは全然ないよ。別に女の子にきゃーきゃー騒がれたいわけじゃ無いんでしょ? 水瀬、校内ランキング2位でしょ? それって藤夜じゃなくて、水瀬が好きだって女の子だっていっぱいいるってことでしょ? それでいいじゃない、順位なんて関係ない。水瀬は水瀬でしょう? 大体あんなので一位とって何を目指したいのさ―――・・」
そこまで言ってから、ふと思った。
「えーと・・・もしかして藤夜と付き合ってるあたしに言われても説得力ないかな・・・?」
そう言って水瀬の方を見ると微かに身体を震わせている。そして顔を上げると
「確かにな。」
彼はそう言って笑っていた。
「そう、それ!」
「は?」
「あたしは水瀬の笑顔っていいと思うよ? 藤夜が女の子に向ける笑顔って大体似非王子スマイルじゃない? それに騙されてる女の子が多いのも本当だけど。」
ていうか、あたしもうっかり騙されそうになるけど。
でもあたしは藤夜に本当の笑顔をみせてほしいと思ってる。
「水瀬は誰に対しても対等っていうか、自然に接して笑えるじゃない? だから、笑顔は水瀬の魅力のひとつだと思うよ?」
あたしがそう言うと、水瀬は思いっきり顔を逸らした。
・・・あたし、何か気に障ること言ったかな?
まあ、偉そうな事言ったかなとは思うけど。
でもどうやら違ったらしい。
その後水瀬が小さく「サンキュ」って言ったのが聞こえたから。

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