暁良に会いたい。
ここ数日、ずーっと頭の中にある言葉。
仕事が忙しいみたいで、最近全然顔を見てない。
会えなきゃ禁断症状が出そうだ。
それくらい、あたしにとっての暁良の存在って大きい。
・・・向こうは、いないと静かで平和だなとか思ってるかもしれないけどさ。
ちょっとくらい、気にかけてくれてる?
―――神様を信じる気になるのは、こんな時。
奇跡が目の前にいるような気がする。
だって、脱水症状起こしそうなくらい会いたかった人が目の前にいるんだもん。
「何かあったの?!」
嬉しくて飛びつきたくなったけど、何事だろうかという思いも同じくらい強くある。
だって、暁良から会いに来てくれることってほぼないもん。
「やる」
「ふぇ?」
差し出された箱に目を向ける。
見るだけで、動こうとしなかったあたしに暁良が片眉を上げる。
「誕生日なんだろ?」
「・・・何で知ってるの?」
言おうかなって思ったんだけど、言って無視されると切ないなと思って結局言わなかった。時間が出来た時に祝ってもらえればいいかって。電話はしようかな、と思ってたけど。
でも、何で暁良が知ってるのか分からなくて、そう尋ねると、呆れたような声が返ってきた。
「お前、自分のメールアドレス言ってみろ」
「え? ・・・あ」
誕生日入れてたんだった。
考えるのめんどくさいから、名前と誕生日組み合わせただけだもん。
「暗証番号とかまで誕生日にしてないだろうな」
「し、してないよ!」
・・・学校のロッカーの鍵とかはそうだけど。
メールで知って、でも、覚えててくれたんだ。
それがすごく嬉しい。
少しくらいは前進してるって思ってもいいかな。
もらったプレゼント、その場で開けようかと思ったんだけど、もったいなくてなかなか出来ずにいると「後でゆっくり開ければ」と苦笑混じりに言われたからそうした。だって、あたし包装紙とか剥がすの下手なんだもん。
それに、喜び噛み締めながら開けてたら、多分変な目で見られそうだし。
どきどきしながら開けたプレゼントの中身はペンダントだった。
ところどころに花があしらわれてて、すごく可愛い。
嬉しすぎて、それが態度にも出てたのか家族に奇異な目で見られた。妹バカのお兄ちゃんまで「何か変なモンでも食べたのか?」と聞いてきたくらいだから、相当浮かれてたんだと思う。でも、嬉しかったんだもん。
暁良に電話しようかと思ったけど夜遅かったし、何より電話口で騒ぐと速やかに切られそうだからやめといた。お礼は直接会って言いたかったし。
で、来てしまった。イン・暁良の会社の前。
まあ、真ん前じゃなくて、すぐ近くに広場とは行かないまでもちょっとしたスペースがあってそこにいるんだけども。
でもこれ、向こうからタイミング良く出てきてくれないと会えないし。今気付いたけど。
まさか呼び出してもらうわけにもいかない。お仕事の邪魔したいわけじゃないもん。
―――ここに暁良いるんだよねぇ。
それだけで、ちょっとだけ胸があったかくなる気がする。気がするだけだし、ちょっとだけだけど。
・・・帰ろっかな。
見つかって迷惑がられたらショックだし。
思い付きで来たから制服のままだし。目立つんだよね。
あとで、ちょっとでいいから会いたいって言ってみよう。
そう心に決めて、帰ろうとしたとき奇跡が起こった。
あたしが思考の渦にはまってる間に出てきたのか、いつの間にか暁良の姿が。
「あき・・・っ」
駆け寄ろうとして、足が止まった。
―――来るんじゃなかった。
視界に入ってきたのは、そう思わせる光景。
暁良と女の人が一緒にいて。女の人は多分泣いてて。
そして。
キス、してた―――・・・

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