清楚可憐な美少女はともかく、清楚可憐な美少女な少年なら、いた。

今朝のカイロの少年、高野くん。

見た目だけじゃなくて、行動も何だか可愛い。
荷物抱えてたら飛んできて手伝ってくれたりとか、他のマネージャーにも大好評。
笑顔に癒されるなぁ。

ていうか、癒しが必要なほど追い詰められてるのかな、あたし。
でも、雑用多いし、忙しいし、吉川さんの視線痛いし。

やっと一日目が終わったとこなのに、もう疲れた。


体育館のそばを通りかかると、ボールの音が聞こえた。
どこの部も、もう練習終わってるはずだけど。

覗いてみると、高野くんが一人で練習してた。
こっそり様子見ようと思ってたのに、ばっちり目が合ってしまった。

「先輩?」
「えっと、まだ練習してたんだね」
「はい。ちょっとだけ」
「じゃあ、あたしもちょっとだけ付き合う。ボール拾いとか」

侑城もよくこんな風に遅くまで残って練習してたから、何かこういうの懐かしいんだよね。
侑城の場合は「さっさと帰れ」とか暴言吐いてきたけど。
他にも何か言われたな。一言で言うと、邪魔だ、と言いたかったらしい。
・・・集中しだしたらどうせ周りなんて見えてないくせに。
何かむかついたから、侑城を無視してあたしはあたしで練習してたらレギュラーになれるほどに。
そこは良かったんだけど、でも今思い出しても腹が立つ。もっと他に言い方ないのか。

でも、待てよ?

「・・・あの、あたしいない方がいい?」
「え?」
「えっと、気が散っちゃったりとか・・・」

侑城はギャラリー気にするほど繊細な神経してないけど、高野くんはどうか分かんないし。
邪魔するのは悪いし。
でも、今気付いたんだけどこんな聞き方したら「邪魔です」とはちょっと言えないよね。・・・言い方間違えた。普段ずけずけものを言う人達ばっかりだから、つい。

「大丈夫ですよ。いてくれた方が助かります」

ほんとにそう思ってるように聞こえる。寛大だなぁ。

「ありがと」
「・・・何で先輩がお礼言うんですか? 手伝ってもらってるの俺なのに」
「いや、優しいなぁって。それに、昼間はあたしの方が手伝ってもらってたし」

確かに、雑用は一年の仕事でもあるんだけどさ。

「俺が優しいんだとしたら、それは先輩だからです」
「え?」

振り返ると、今日一日でよく見かけた、ほんわかした笑みは浮かべてなくて、何だか真面目な表情をしていた。

「女の子と間違われるくらいだから、対象外なのは分かってます。でも、だからこそ言います。あの時からずっと、忘れた事はなかった」

ちょ、ちょっと待って。
この流れってまさか・・・

「由佳さんが、好きです」

うぇっ?!

「え、あの、でもえっと・・・あたし、付き合ってる人がいて!」

すごいいっぱいいっぱいだな、あたし。
自分でも突っ込みをいれたくなるくらいの慌てっぷり。
だって、告白なんてほとんどされたことないんだもん!!

「知ってます。京先輩に聞きましたから」

京ちゃん!?

「でも、諦めませんから」

にっこりと笑ってそう宣言された。



・・・美少女に宣戦布告され、美少年に告白され。なんて、ハードな一日。



back next

戻る