「由佳先輩」
「ん?」
「・・・と侑城先輩は付き合ってるんですよね?」
「あ、えっと・・・うん。」
「どっちから告白したんですか?」
「あたしから・・・かな。」

あれが告白になるんなら。

「私、先輩には負けませんから。」

京ちゃんから“侑城狙い”だと教えてもらった美少女マネージャー、吉川さんにきっぱりとそう言われた。

それが、今朝の出来事。



「何でそんな落ち着いてんのよ」

部室の掃除をしながら、京ちゃんに突っ込まれた。
別に、落ち着いてるわけでもないんだけど。だって吉川さん可愛いし。

「いや、ああまで言い切られるといっそすがすがしいと言うか。」

影で何か言われるよりはよっぽど好感がもてる。

「何が好感よ。正々堂々としたいから言ってるんじゃなくて、自分に自信がありあまってるから宣言して来ただけじゃない。ずっと男子の練習見てるのに忙しいみたいだし!」
「でも、仕事はしてるし」
「部員に飲み物やタオル配ったりね。マネージャーの仕事はそれだけじゃないっての」
「洗濯物もしてたよ?」
「体育館のすぐ傍の水道を使ってるから、体育館から見えるのよ。まあ、練習に集中してるからずっと見てるわけでもないけど、意外と部員の目に付くのよね。手が荒れる、とか文句たらたらだったけど、流石に声までは聞こえないし」

・・・二重人格?

ある意味、清々しいほど徹底していると言えた。

清楚可憐な女の子っていうのは、お話の中だけでしかないのかなぁ・・・

ため息をついていると、部室に何かをとりに来たらしい侑城に頭を小突かれた。

「何呆けてんだよ」
「世の無常さについてちょっと・・・」

中身がどうであろうと、吉川さんは可愛い。
そう言えば、柚夏先輩にちょっと似てるかもしれない。

「侑城」
「ん?」
「――が、人を好きになる基準って何?」

顔だとか言われたらどうしよう。
吉川さんに迫られたらくらっと来ちゃうかもしれない。

「顔」
「え」
「――でないことは確かだな」

そう言った侑城の視線は確実にあたしに向いていて。

・・・もしかして、それは曲がりなりにも彼女であるあたしに対する嫌味か?!

「悪かったわね!! 美人じゃなくて!!」

あたしの言葉にくっくっと意地悪く笑う。


・・・ムカつく!!!



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