「マネージャー?」
「そう。男バレのマネージャーが足りなくて、そのツケが毎年早々に負ける女バレにまわってきたの」
「ふーん」
そう言えばもうすぐ県大会だっけ。
女子は地区予選で負けたみたいだけど。
「がんばれ。」
軽く応援の言葉を口にしたあたしに、京ちゃんがにっこりと笑って言った。
「由佳も手伝ってくれるよね?」
「はぁ!? 嫌だよ、何であたしが。」
「だって三年生は引退しちゃったし、二年は人数少ないし、一年は合宿とか経験した事ないし」
「あたしもないっての。」
「だって由佳中学の時マッサージ、テーピング、その他雑用のプロだったじゃない」
「・・・何かひっかかるんだけど」
「あ。料理とかそういうのは他の子が担当するから安心して」
「悪かったわね。料理音痴で」
しかも、その場合、安心するのはあたしじゃなくて周りの人間じゃない。
「いいじゃない。それとも、ほんとに都合悪い?」
都合ねぇ・・・
別に何の予定もない。
侑城とは部活忙しいせいで最近あんまり一緒にいられないし。
・・・どうしよう、断る理由が見つからないかも。
雑用とかも嫌いじゃないし。
バレーやってる時の侑城見てるのは好きだし。
「ケーキくらいなら奢るわよ?」
京ちゃんのその一言が駄目押しで、バレー部に臨時マネージャーとして参加決定。
そして、初日。
あたし達以外のマネージャーを紹介された。
これがまた、すっごい可愛かった。
こんな可愛い子が一年の中にいたんだなぁ。
目の保養、とじっと見てると京ちゃんに肘でつつかれた。
「ちょっと由佳。女の子に見惚れてる場合じゃないわよ」
「何で」
「あの子、侑城君狙いなんだから」
「えぇ!?」
あんな可愛い子が!?
「だから、のんびりしてたら負けるわよ」
「何にさ。・・・ていうか、勝てる気がしないんだけど」
「大丈夫よ。人間顔じゃないから」
「ちっとも嬉しくないフォローありがとう」
ふと美少女マネージャーと目が合ったが、思いっきり逸らされた。
何かショック。
でもまあ、仕方ないと言えば仕方ないか。
「あ、あの・・・!!」
声のする方へと顔を向けると、そこにはまたもや美少女・・・じゃないや、男の子か。
「その節は、ありがとうございました」
そう言ってぺこりと頭を下げる少年。
が。
「・・・何かしたっけ?」
それ以前に、会った事あるっけ?
一度見たら覚えてそうなもんだけどなぁ。
「受験の時に、受付をやってた先輩にカイロをもらったんです」
受験の受付?
そう言えば、先生に手伝わせられたなぁ。成績やばいんだからこの辺で点数稼ぎでもしとけとかって・・・
で、カイロ・・・?
「ああ!!」
確かにあったね。そんな事。
だって、手赤くて寒そうだったんだもん。
でも・・・
「女の子かと思ってた・・・」
私服だったし。女の子は体冷やしちゃだめなんだよ、とか思ったような気が。
あたしの呟きが聞こえてしまったらしい少年は、結構なダメージを喰らっていた。
「ご、ごめんね・・・?」
「いえ。・・・前にも間違われたことあるので」
この容姿だもんね。
項垂れながらそう言う姿も可愛かった。
少年が去ると、京ちゃんがにやにやと笑みを浮かべて言った。
「すっごい美少女な少年ね。由佳ってば罪作りー」
「・・・何が?」
おもしろくなりそー、と嬉しそうな表情を浮かべる京ちゃんを見て、何だか先行きに不安を感じてしまったのだった。
そんなこんなで、合宿開始。
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