4.

みずほちゃんは一人で帰る、と言ったけどさっきみたいなことがあったばかりだし、そうさせるわけにもいかない。
俺たちが送っていけばいい話だが、まだ嫌われているのか拒否されて、兄に迎えにきてもらうということで話がついたらしく、美咲が連絡を取っている間みずほちゃんとふたりになった。

「合格基準は何?」
「え?」
「例の品定めの」
「性格」

即答だ。

「ちゃんと一番にお姉ちゃんのこと大事にしてくれる人じゃないと駄目なの」

それがここまでやって来た理由、ね。

「それって美咲の前の彼氏の話?」

俺の言葉に、みずほちゃんが頷く。
確かに最初に会った時にも言ってたしね。

ふられた、というのは聞いたことあるけど詳しくは聞いてない。不愉快だから。大事なのは今だし、過去に美咲が好きだった男の話なんて聞きたくもない。

最初から美咲のためだと公言していたが、今のみずほちゃんの表情を見てその思いの深さが分かる。

「俺が心変わりして美咲を傷つけるかもって心配してるんなら、必要ないよ」

みずほちゃんの隣に腰掛けながら言った。
小学生相手に何を言ってるんだと思わないでもないが、姉のことを真剣に心配してるのは分かっているから、これくらい言ってもいいだろう。

「俺が美咲を好きじゃなくなる事なんてないし、他の誰かを美咲以上に好きになることなんてあり得ない」
「・・・そんなの、分かんないじゃない。口では何とでも言えるんだから」

まあ、確かにそうだけど。
でも事実だし。

それでも、さっきよりは若干態度が軟化した気がする。
時間はかかりそうだけど、そのうち分かってくれるだろ。

「でも、お姉ちゃんもそうみたい」

俯いて、小さな声で言った。

「お姉ちゃんは頼りにしてるみたいだったから。見てて分かったから、それがちょっと悔しくて。でも、やなわけじゃなくて。だから・・・あんな態度とって、ごめんなさい」

最後まで視線は逸らしたままだったけど。
・・・何か、美咲そっくり。
負けず嫌いだったり意地っ張りだったり、でも結局は素直なとことか。

「でも、お姉ちゃん泣かせたらどんな手使っても抹消するから」



今度はしっかりと視線を合わせて、にっこり笑ってそう言った。






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