第28話 事実発覚
「悠都さんと真衣ちゃんは付き合ってるの?」
突然yukiちゃんにそう切り出され、あたしは飲んでたジュースを吹き出しそうになった。
・・・何でまたそんな事を思いついたのか。
「え? 二人で仲良く眠ってたから。ちょっとびっくりしたけど。」
「あれは・・・!」
確かに、起きたら横で悠都さんが寝てたのには驚いたけど。
夏澄ちゃんに謀られて腹が立ったあたしは控え室のソファに座って思いつく限りの悪態をついているうちに、眠ってしまった。だってあの部屋日当たり良かったんだもん。
そしてあたしの様子を見に来た悠都さんが、もうしばらくあたしを寝かしておいてあげようとして、そのまま悠都さんも寝てしまったと。
いつの間にかバランスを崩して悠都さんにもたれかかって寝てしまっていたらしく、起きたら悠都さんの顔が近くにあってびっくり。
そしてそれを様子を見に来てくれたyukiちゃんに見られたのにもびっくりだ。夏澄ちゃんもいたけど。
誤解させたかな、と思ったけど、その割には傷ついた様子も全くなく、笑顔でさらりと尋ねている。
無理してるんだろうか?
とりあえず、誤解は解いとかないと。
「あれは、たまたま二人して寝ちゃっただけで、心配しなくても付き合ってないよ?」
「心配って、何が?」
あたしの言葉にyukiちゃんはきょとん、と聞き返してくる。
・・・ちょっと待って?
「・・・yukiちゃんは悠都さんが好きなんじゃないの?」
「え? そりゃ、俳優さんとしては憧れの人ですけど?」
「そうじゃなくて!」
あの時、好きなの?って聞いたときのあの反応は?!
「だ、だって何かすっごい乙女ちっくな顔で見てたし」
「あ・・あれは悠さんを見てたんじゃなくてーー」
「え?」
その言葉にはっと口元を押さえる。
「あ。その、えっと・・・」
何やら赤くなりながらyukiちゃんがたじろいでいると、携帯が鳴りだした。
メールだったらしく、携帯を見るなりyukiちゃんが眉を顰めた。
yukiちゃんのそんな表情初めて見るなぁ。
「ごめん。電話してくるね。」
そう言って、部屋から出て行った。
えーと。
つまり、yukiちゃんは別に悠都さんを好きなわけではなかったってこと?
スタッフのお姉さん達の女の勘とやらも当てにならないなぁ・・・。
ていうか、この事知ったらがっかりするんじゃないだろうか。
何かすっごい盛り上がってたし。
あたしも何だか気が抜けちゃったかも。
あれ? でも、好きな人はいるんだよね?
まさかあの表情も違う理由だったとは言わないよね。
ああ、でもモデルやれるくらいだから表情くらい簡単に作れそう・・・
けど、そんな風には見えなかったし。
・・・何か混乱してきた。
あたしは恋愛ネタには疎いのよ。
だって、別に好きな人いないし、周りにカップルもいないし。
珠ともそんな話しないからなぁ・・・。
気分転換に飲み物でも買ってこようかと廊下に出ると、近くの部屋から声が聞こえてきた。
「はあ? そんなん知ってるわけないやん!!」
―――関西弁なんて使ってる人いたっけ?
でもこの声、何か聞き覚えが・・・
「もうええわ! 阿呆――――っ!!」
そう叫ぶ声と、がたーんっと何かが倒れる音。
多分、椅子か何かを蹴り飛ばしたんじゃなかろうか。
なかなか過激な。
その部屋の前を通りかかると、開いていたドアの隙間から予想外の人が見えた。
もっとも過激なイメージと結びつかない人物。
思わず固まってしまい、まだ悪態をついていたその女の子と目が合う。
「・・・・・・今の、聞いてた?」
「・・・聞こえちゃった、かな。」
気まずそうにそう言ったのは、yukiちゃんだった。

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