第15話　球技大会開始

球技大会当日。

うちのチームは一年生なのにもかかわらずかなり善戦していた。
あたしもここ数日の雑用からやっと開放され、たまっていたストレスを解消するべく思いっきり暴れていた。
ちなみに、あたしはバレーに参加してる。中学時代、バレー部だったので。

けど、善戦していたのはあたしのいるチームだけじゃない。
うちのクラスはどうやら結構運動神経がいい子たちが多かったらしく、他の種目でも順調に勝ち進んでいた。
中でも、目立っているのは―――

黄色い声援の中、平然と動く一哉の姿だった。

さすが一度に二人の女の子から告白されたりするだけあって、もてるもてる。
前に体育館でバスケの試合を見たときも思ったけど、よくこんな声援の中で集中できるな、と思う。
グラウンドにはいろんな声――同じクラスの男子への声援だったり、お目当ての男子だったり、罵声ともとれそうな奨励だったり――が飛び交っていた。

この騒ぎの渦中にいるのが自分だったら耳栓とかしてそう。むしろ、今も欲しいくらいだ。
でも、耳栓なんてしてたら動きにくいよねぇ・・・とか、しょうもないことを真剣に考えてみる。

ちなみに、あたしは一哉や自分のクラスのチームを応援する気持ちはあるけど、声援を送る気はあんまりない。
周りの女子の声に紛れてどうせ聞こえないだろうし、これだけすごいと張り合う気すら起こらない。大丈夫。心の中では負けないくらい応援してるから。頑張れ。

ちなみに、今やってるのはサッカー。

あれだけ試合に出ずっぱりでよくもまあ、こんなに動けるものだと呆れ――もとい、感心する。
だって、サッカーってずっと走りっぱなしだし。
まあ、どのスポーツも動きっぱなしなのは変わらないのだけれど、何となくイメージ的に余計にそう思う。
ルール分かんないけど。

「お疲れ様」
「ほんっと、疲れた」

試合が終わった一哉に、あたしが声をかけるとほぼ同時に一哉がその場にどさっと腰を下ろした。

多数の視線は感じるものの、一哉に女の子が寄って来ないのは、圭くんの広めた噂のせいだろう。
何でだか皆、異様に協力的だった。
一時期は廊下ですれ違っただけの顔も知らない生徒に励まされるという滅多に出来ない、というか、出来ればしたくなかった経験をしたものだ。

「まあ、即興で作ったチームにしては上出来だろ」

うちのクラスにはサッカー部は誰もいなかったけど、相手チームにはサッカー部員が結構いたらしい。
サッカー部のプライドにかけてもそりゃあ負けられなかっただろう。

そうか。さっきの試合がうるさいと思った原因が分かった。

サッカー部員のファンもいたから余計に騒がしかったんだ。

「黄色い声援の中でよくあれだけ動けるわね。集中力欠けない？」
「別に全部が自分に向いてるわけでも相手に向いてるわけでもないし、別に」
「それって騒がれるのに慣れてるから気にならないってこと？　何それ、自慢？」

というか、慣れるもんなんだろうか。
あたしには無理だなぁ。まあ、無用の心配ではあるけど。

「何、妬いてんの？」
「何を馬鹿なことを。圭くんじゃあるまいし」

ああ。でも、ここのところ圭くんは何でかしょっちゅう顔出しに来るから、悪影響を受けているのかもしれない。

「午後からはバスケだけでしょ？」
「ああ。・・・やっと開放される」

あたしの言葉に、かなり疲れているらしい一哉がごろごろ寝転がって、ため息を吐きながら答えた。
むやみやたらと色んな試合に出されていた一哉だが、午後からはバスケの試合にだけ出ればいいことになったらしい。

どうせやるなら勝ちたい、けど、一年生はやっぱり優勝できる確立は低い。
それなら、経験者もそれなりにいてバスケ部期待のホープとか言われている一哉もいるバスケのチームだけでも優勝を狙って勝ち進んでほしいという結論に至ったらしい。
そして、他の試合全部に出てたのでは流石に一哉の体力が持たないだろうという理由で免除になったんだけど、そんなの球技大会が始まる前から分かりきっていたことだろうに。

まあ、実際試合しているうちに、負けたくないって気持ちが大きくなってきたんだろうけど。



考えてるんだか、ないんだか。