リーファはギルドに向かい、アイラが探している吸血鬼の手がかりを探していた。
目の前にいる見た目ヤクザな親父は、ギルドの情報担当責任者。
こんな外見でよく情報が集まってくると感心するほどだ。いや、この外見だからこそ、だろうか。
「何か動きはない?」
「そんなものがあれば、とっくにお前さんの耳に入ってるだろう?」
「・・・そうね」
ギルドでもトップクラスの能力を持つリーファには、放っておいても強い吸血鬼の情報が流れてくる。
この親父とも、実は子供の頃からの付き合いで、多少の融通は利かせてくれ、彼女の欲しい類の情報を教えてくれるのだ。
「何が知りたいんだ?」
「組織を作ろうとしている吸血鬼を」
アイラから聞いた話を要約すると、彼を誘いに来た吸血鬼は複数いたらしい。
人数を集めているという事は、組織立って動いてる可能性があるという事だ。
リーファの言葉に彼は眉を上げる。
吸血鬼は、そのほとんどが個人主義だ。
天上天下唯我独尊タイプの者が多いので、群れる事は少ない。他者と協力して折り合いをつけながら動くという事が出来ないからだ。
よって、多数の吸血鬼が手を組むことはほどんどない。
リーファが知っているのは一度だけ。
あの時、たった一度だけ―――
「―――そういや、最近報告が減ったな」
「何の?」
「人間を襲ったって報告だよ。3ヶ月くらい前からか」
単純に、活動の拠点を変えたという話ではないだろう。そんな単純な話なら、わざわざリーファに言うはずがない。
吸血鬼の数は変わらず、人を襲う吸血鬼の数だけが減っている。
なら、残ったものは何をしているのか。
「・・・最近、姿を見せなくなった吸血鬼のリストはある?」
「ああ」
こいつらを探っていけば、おそらくアイラの探す吸血鬼のいる組織に当たるはずだ。
アイラが見た吸血鬼がいるかもしれない。
アイラにも確認してもらおうか。
待っているだけと言うのは、ひどくはがゆいものだ。
少しでも何かしていれば、気も紛れるだろう。
まさか、連れて歩くわけにはいかないし。
リストを受け取ったリーファは、お礼を告げて踵を返す。
「リーファ」
「何?」
「あまり、思いつめるなよ」
「・・・分かってる」
今回、リーファが少女の頼みを引き受けたのは、既に少女のためだけではなかった。
10年間、ずっと探していたもののためでもあった。
・・・今度こそ何か掴めるかもしれない。
ずっと昔の、真実を。