「奈緒ちゃん、先輩を口説いてみない?」

中庭でお昼ご飯を食べながら、前回に引き続き先輩から逃れる方法考案中。

恋にも積極的。連戦連勝な友人を見て言った。

私に彼氏が出来るより、先輩に彼女が出来るっていう方が現実的というものだ。
彼女を放ったらかしてまで、私に構ってきたりはしないだろう。

けど、素気無く断られた。

「嫌よ。好みじゃないもの」
「私だって嫌なのに・・・」

奈緒ちゃんは先輩を好みじゃない、と一蹴できる数少ない人物だ。
彼女くらい冷静で頭の回転が良ければ、きっと先輩の言動にもきちんと対処できるに違いない。

成績なんて気にしてないけど、この時ばかりはお馬鹿な自分が恨めしい。

でも、先輩だって奈緒ちゃんくらい頭良い子の方が、会話の応酬もきっと楽しいと思うんだけど。
奈緒ちゃんだって先輩に興味ないのは一緒だし。

「きゃぁっ」

物思いに耽っていた私の耳に、短い悲鳴と、ばさーっと何かが落ちるような音が聞こえた。
どうやら誰かがこけたらしい。
ばっちり目撃しといて放っておくのも嫌なので、傍に寄って豪快に落とされたプリントを拾い集める。
転んだのが恥ずかしいらしく、頬を染めながら散らばしてしまったプリントを集めるのはかなりの美少女。
美少女は、とっさに出る悲鳴まで可愛らしいんだなぁ。
私なら絶対「きゃぁっ」とか言えない。ていうか、そんな自分想像するだけで寒い。

「ありがとうございます・・・あ、狭山さん」

はにかみながら御礼を言った美少女に、名前を呼ばれてきょとんとする。

はて?
面識あったっけ?
でも、どっかで見たことあるような?

「会ったことありましたっけ? でも、見たことある気が・・・」
「あ、いえ。一方的に知ってるだけです」
「ほぇ?」
「高宮先輩といつも一緒にいるので・・・」

いつもというのはとっても否定したいんですが。
私は出来る限り離れたいんです。
しかも、ここで先輩の名が出て納得してしまうのが複雑なところ。

まあ、それは置いといて。
この反応を見る限り。

「先輩が好きなんですか?」

私の一言に、一瞬にして顔が真っ赤になった。
何て素直な反応・・・。

「あ、あの、でも安心してください。邪魔しようとか思ってるわけではないので!」
「はい?」

何でそんなに焦って弁解しようとするのか分からず、きょとんとすると、相手もきょとんとして尋ねてきた。

「お付き合いしてらっしゃるんじゃないんですか?」
「あり得ません」
「そうなんですか?」

私の即答に、ぱっと彼女の表情が明るくなる。
可愛いなぁ。
ん。待てよ?

いいこと思いついた!!

「私、協力しますから!! 是非とも先輩をおとして下さい!!」

私に彼氏を作らずとも、先輩に本命の彼女が出来れば私は平和な学園生活が送れるに違いない。

だって、目の前に完璧な彼女候補が!!

これだけ素直なら反応も楽しいだろうし、いくら先輩でも、こんな素直な子に嫌がらせするほど邪悪じゃないだろう。
もしかしたら、ちょっとくらい先輩の捻くれ切った真っ黒な部分が浄化されるかもしれないし。



狭山小都。平和な明日のために、がんばります!!







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