トップ >> 練習船実習・回顧録 >> 帆船の話し・海外編 >> 神戸〜シアトル(10) -- 船の敬礼


神戸〜シアトル(10) -- 船の敬礼


<< prev next >>

ついに畳帆の日がやってきました。
残念ですが、練習船には日程があります。
ここは、キャプテンの政治的判断ということでしょう。

しかし、陸も近いという証拠でもあります。
その証拠に船内の時刻をアメリカ合衆国の太平洋岸夏時刻(PDT:Pacific Daylight Time)に徐々に合わせて 行くため、7/15に57分、7/16に1時間、7/17に1時間の時刻改正をおこないました。

畳帆ということで、ここまでやってきた実習生に活気がなくなったのを読み取ってか、7/16にはドライイングセールという名目で1日帆走しました。
これは結果論ですが、7/15に一旦風がやみ、このままでは日程通り次の港に着けないと判断したのだけれども、機走と同じくらいのスピードのでる風がまた吹き出したため、実習生の覇気もあげるようにだと、今では思っています。
(当時はキャプテンの判断ミスだとみんなで言い合っていました。)

7/17には今航海で3隻目の船に出会いました。
太平洋のド真中を航海していると、ほかの船と意外とすれ違ったりしないものなのですが、このときの船は日本船でした。
大阪商船三井のコンテナ船で東京丸と読めます。(**1)
会社名は煙突に描かれているファンネルマークで世界中の会社名がわかるのです。(**2)
私は日本の数社しか知りませんが・・・。

商船三井のファンネルマーク
商船三井の
ファンネルマーク
この船がわざわざ近くまで来て敬礼をしてくれました。
船の敬礼というのは、船尾に掲げている国旗を半旗にし、またあげるというものです。
敬礼というのは、人どうしでも同じですが、例えば私が目上の人にするとすると、

  ・ 目下のもの(私)が敬礼をし、
  ・ 次に目上の人が敬礼(返礼)をしたのち、
  ・ 目上の人あげていた手をおろしたのを見て、
  ・ 目下のもの(私)が手をおろす、

という具合です。

従って、東京丸が敬礼した時には面食らいました。
こちらはただよって来ているだけだと思っていたのですが、向こうは日本のフラグシップである日本丸に敬意を表してくれていたのでした。
相手にあまり長く敬礼させておくのは、された方の礼儀としてよくありません。
あわてて2、3人の実習生と士官が船尾に飛んで行き、ほかの者は船側に一列に並んで(登舷礼)、この礼儀正しい東京丸に敬礼しました。

もうすぐシアトルです。
ここからがいきなり忙しくなります。
ボーイングのお膝元ということでか、このあたりは軍事産業が多く、昔はここを偵察にくるソビエトの潜水艦等が多かったと聞いています。

そのなごりでか、このアメリカとカナダに挟まれたジュアンデフカ海峡を通過する船舶には事細かにその位置、次にいく港とその到着時刻等を、TOFINO TRAFFICという管制塔に連絡しなければならないのです。

とうとう、もうすぐ、船がとまります。


(**1)
「商船三井」に関しては「帆船の話し・国内編 >> 大阪(3) -- フラグシップとしての意識」を参照してください。


(**2)
ファンネルマークは、会社の特徴をイメージした色や模様をファンネルにデザインしています。

リンク :   ・ファンネルマーク  
<< prev next >>

戻る