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恐ろしい散歩の日々は続いた。どうすればいいのか、見当もつかない。
その日は朝からずっと雨だった。私は小雨になるのを待って、まいを連れ出した。
例によって、滅茶苦茶に噛みついてきたが、何とかいつもトイレをさせている場所に
たどりついた。
その時、急に雨足が強まったかと思うと凄まじい豪雨に変わった。
滝のような豪雨の中でまいが用を足す。立派なウン○だ。
ウン○を処理しようと私がビニール袋を手にしゃがみこんだ時だった。
突然、背後から雨傘をもぎ取られた。
やられた!さっきまで興味しんしんで飛びつこうとしていた雨傘が思いがけず低い位
置に降りてきた、
その絶好の機会をまいが見逃すはずがないのだ。
奪い取った素晴らしい獲物にまいは猛然と襲いかかった。
骨をへし折り、布を引き裂き、くわえて振り回す。
興奮の絶頂に達しているまいの恐ろしい姿を私は呆然と見ているしかなかった。
手には拾ったばかりの温かいウン○があり、これを始末してしまわないことには何も
出来ない。
滝のような豪雨の中、暴れるまいとウン○を手に突っ立っている私。
通りかかった2人連れの女性が「まぁ、大変・・・」とささやきながら足早に立ち去っていく。

それから雨の日は傘を持てなくなった。まいが傘をめがけて飛びかかってくる。
では、レインコートは・・・試す気にならない。
毎回、服を噛み裂くまいが新しい素材の服を見たら、どれほど興奮して襲ってくるか
想像するだけ恐ろしい。

こんな日がいつまで続くのだろう?
このまま成犬になってしまったら・・・?
やっぱり、初めて犬を飼う素人にはこんなに激しい気性の子犬を育てるのは無理なん
だろうか。
私はほとんどノイローゼ状態だった。
話は前後するが、まいは家に来た時からおなかや内股に湿疹があって、獣医さんから
「毎日シャンプーしてください」と薬用シャンプーを渡されていた。
これがまた大仕事なのだ。抱き上げる時も洗っている時もタオルで体を拭いてやる時も
ずっと暴れ続け、狂ったように私を噛み続けるのである。
散歩とシャンプー、それに仕事から帰った時に粗相しているウン○の掃除・・・
私はもう傷だらけでヘロヘロだった。

訓練所に預けてしまおうか・・・何度かそう思った。
プロの訓練士なら何とかしてくれるかも・・・
だが、決断には踏み切れなかった。かいじゅうとは言え、こんなかわいい盛りの子犬を
数ヶ月も手放すのは寂しい。
私は昔、犬の訓練士になりたいと思っていた頃があった。自分の犬は自分でしつけてみたい。
それに私は馬で障害飛越の競技をやっている。巨大な馬に比べたら、犬くらい扱えるはず・・・
私は犬のしつけに関するありとあらゆる本を読んだ。インターネットで問題犬のサイトを探して、
むさぼり読んだ。
服従訓練をやるようにと大抵の本には書いてある。でも、狂ったように暴れる犬の対処法は
全然見つからない。

リードをつけるだけでも大騒ぎになる子犬を相手にどうやって、服従訓練なんかやれってぇの?!
3 完全破壊・・・雨傘