


山の中で突然、猛烈なヨダレを流し始めたまい。続いて、嘔吐と下痢。
何とか家に帰りついてすぐ電話帳をめくる。日曜日の午後にやっている動物病院・・・車で40分ほどかかるが、
Y動物病院に電話をしてみる。
まいのヨダレはまだ滝のように口全体からあふれ出している。
電話で応対してくれた先生が待っていてくれた。診察台に上げられたまいは大量のヨダレを流しつつも、尻尾を振り、
先生の顔をなめようと狙っている。
「元気ですねぇ」と先生。
「いえ・・・いつもはもっと元気なんです」
「そうなんですか?」
これ以上元気な犬なんかいるのかとでも先生は言いたげな表情だが、この大量のヨダレはどう見ても異常である。
持参した下痢便と嘔吐物、さらに血液の検査とレントゲン検査。まいはレントゲン室に尻尾をブンブン振りながら、嬉し
そうに入っていった。初めての病院で興奮しているらしく、さきほどぐったりしていた時よりは元気そうに見える。
血液検査の結果、毒物の可能性はなし。便にも異常はなし。寄生虫でもなさそうだ。
が、レントゲン写真で撮られた胃の中には大量のガス。異物は写っていないが、プラスチックやビニール袋などはレント
ゲンで写らないので、開腹してみなければ分からない。
「草と一緒に吐き出した石が原因で、胃が炎症を起こしたのかもしれません」
先生が見せてくれた血液検査結果表、AMYという項目の数値が機械の目盛りを超えるほど高くて、計測不能だったと言う。
正常値が300〜800なのに2000を超えている。これは膵臓疾患、腸疾患、腎不全の状態なんだそうだ。
「大量のヨダレは吐き気のせいでしょう」との事で、吐き気を抑える薬を前足に注射、さらに背中に点滴。背中から皮膚の下
を伝わって、点滴の液が腹部に貯まり、少しづつ体に浸透していくらしい。
看護婦さんに抱きかかえられ、点滴をしている10分間、まいは嬉しそうに尻尾を振りながら、おとなしく座っていた。
「明日の朝、また連れてきて下さい。それまでは水も食事も与えないように。点滴をしましたから、脱水症状を起こすことは
ありません。もし、何かあったら、この番号に連絡してくださいね」
先生は携帯電話の番号を教えてくれた。
夜の間もまいのヨダレは止まらなかったものの、少しづつ量は減っていき、翌朝には止まっていた。
さすがにウンチは出なかったものの、おしっこはいつもと同じくらい出た。ほっとした。健康そうなおしっこだ。これだけの尿が
出るということは脱水症状も起こしていない。腸も動いてるってことだ。
9時ちょうどに再びY動物病院へ。
玄関の自動ドアが開くと同時にまいは正面の受付へダッシュ!カウンターに飛びついて、前足をかける。
受付の看護婦さんはびっくり。
「まいちゃん?元気になったねぇ!」
「元気!!」とでも答えるかのようにカウンターの上の診察券入れやトレーをなぎ倒し、カウンター越しに看護婦さんに飛びつこ
うとジャンプするまい。必死で抑える私。まだ誰も他に患者さんが来てなくてよかった。さすが月曜日の朝一番は空いている。。
騒ぎを聞きつけて、先生が診察室から出てきた。「お、まいちゃんか!元気やなぁ!」
まいは尻尾をブンブングルグル回し(振るなんて生やさしいものではない)、大喜びで診察室へ突入!
診察台に飛び乗り、先生の白衣の胸ポケットのボールペンを素早くかすめ取る。
「うわー、まいちゃん!それ返して!!」
すでにまいはボールペンを放し、机の上の綿棒の瓶に狙いを定めている。前足をさっと伸ばして、瓶を取ろうとするまい(猫みたい
な奴だ)に気づいて、一瞬早く、先生が綿棒を救出。
「す・・・すっごく元気・・・ですねぇ・・・一応、採血して、レントゲンを撮りましょうか」
採血の時はおとなしかった。そんなまいに先生は油断したに違いない。
「じゃあ、レントゲン室へ連れていきます」
軽い口調で私の手からリードを受け取り、「まいちゃん、おいで」
まいは診察台から飛び降り、奥のドアへ猛然とダッシュ!引き倒されそうになる先生。
気をつけて・・・と言うヒマもなく、まいと先生の姿はドアの向こうへ。
そして、凄まじい物音が。
ドカン、バタン、タンタンタンタン(尻尾がどこかに当たっている音に違いない)、
ガッシャーン!
「うわっ!まいちゃん!ちょっと!!駄目!それは!!」
「おいっ、誰か!」
「まいちゃん、駄目!!そこ、押さえてて!おわっ!」
病院のスタッフが全員レントゲン室に集結しているようである。一体、何が起こっているのだろう?
「もう完全に回復したようですね」
楽しかった!と笑顔を浮かべているまいを連れ、先生は戻ってくるなりそう言った。
念のため、処方食の缶詰を3日分もらい、ついでにアカラス症の相談をした。
薬浴という治療法は同じだったが、飼い主に薬を渡さず、病院で薬浴をすると言う。
「危険な薬ですから。でも、まいちゃんの場合は一度、自宅で洗ってらっしゃるので、お渡ししてもいいですけど。」
いやいや。あんな大変で不安な治療はもう自分でやりたくない。聞けば、料金もそれほど高くない。
「先生にお任せします」
という事で、その後はY病院で薬浴をしてもらい、4回で終了。塗り薬と免疫力を高めるためのサプリメント摂取も平行し、その後、
現在に至るまで、再発はしていない。
最初に連れていった時、じっくりと時間をかけて話を聞いてくれ、丁寧に診察して下さったこの先生が気に入ったので、これからは
このY病院にお世話になることにした。何と言っても、日曜、祝日(お正月)も診察して下さるので、何をやらかすか分からない、
かいじゅうの飼い主には心強い。
結局、原因は異物(小石)誤飲。先生の話では、ラブは石を飲み込むクセのあるコが多いそうで、この病院でも石を飲んで4回(!)
開腹手術をしたラブがいるという。
16 まい、復活!