中国秘境のチベットロード5

Photo:三浦氏

第5話 郷城(シァンチョン)

それはホテル(旅館)だったのだろうか?
 もしかすると旅館の名前(郷城賓館かな?なんせどこがやねんって思っていた)があったのかも知れない。
が、夕暮れだったのとあまりにも疲れていたためあまり気にもとめなかった。
途中、バスの中で成都に留学している志村さんと出会う。
最初は中国語を隣のチベタンとやけにうまく使うので、中国人だと思っていたが、
途中何度かの休憩、水の補給、検問でバスから降ろされるので話す機会があり、
日本からの留学生だとわかった。その彼も合流して、僕たちは4人になった。
三浦、浜崎、志村、そして僕。宿のおばちゃんはパスポートを見せろと、外国人宿泊書を書くからだという。
 太陽は日本から果てしなく遠く離れたこのチベットの谷間に沈んで行く。
僕たちは通された部屋に絶句しつつ、荷物を起き今日の晩飯を取りに街に出かけた。

 雲南省と四川省の省界近くにあるこの小さな街にも雲南省でよく見た光景がたくさん見うけられた。
カラオケ、ビリヤード(なぜか流行っている。道端に数台出してあり、
おばちゃんやおっちゃんが台の番をだるそうにしている)、VCD(ビデオCD)レンタル、川菜(四川料理)、
スーツを着た兄ちゃん寝癖がついた兄ちゃんなどなど。
 僕たちは適当に店を選び入る。ココら辺からは食堂に行ってもメニューはなくなる。
料理の名前を言うか、野菜や肉を指して炒めてくれとか、スープにしてくれとか、チャーハンにしてくれとか頼む。
野菜料理で一皿4元(50円)、肉で6-8元(80-100円)、スープで2-4元(30-50円)で食べられる。
この値段は雲南省でも同じ位だ。中華は人数分の皿+1と湯(スープ)が基本らしい。
それとご飯1元(13円)で一人100円ほどでおなかいっぱいになる。

 この時は蕃茄炒蛋(バンジェチャオタン。トマトと鶏卵の炒め物)などを頼んだ。
これは志村さんが頼んだのだが、あまりに美味かったので以後僕たちは何度も
メニューに困ったら頼んだのである。
 宿に帰ると辺りは真っ暗、まだ食事をしたところは繁華街(なのか?)なので明るかったのだが、
バス停近くの宿の辺りは既に暗黒と化していた・・後ろを振り返ると???街も暗黒化していた。
 停電だった。そう言えば、カラオケ屋にはラジエーターがたくさん備え付けてあったことを思い出した。
しばらくすると、遠くのほうからウィーンという音が聞こえ、カラオケ屋だけ一足早く電気が戻っていた。
 しかし、われわれの宿は・・・真っ暗だった。

 おばちゃんがろうそくを持って来た。それを部屋の中に置くとやわらかな炎の明かりが
部屋の中心から部屋の空気を包むようにゆらゆらと揺れた。「山小屋と思えばまだマシなほうですよ。」
三浦さんが言った。彼は登山家でもあるので、僕は「う〜ん。そうなのか。」と妙に納得してしまった。
「しかし、これはぁ・・まぁ、寝たらいいか。」と僕たちは寝ることにした。

 トイレはない。行きたいときは、外で畑に向かってするか、もう庭らしきところでするしかない。
僕は催したため三浦さんにヘッドライト(洞窟探検のときとかに頭につけるやつ)を借りて、庭に行った。

 夜が明けるとみんなで畑に出て朝焼けを見ながら連れ○○○をする。凛とした冷たい空気が少し寒かった。
早速出発なので、早速チケットを買いにバスターミナルに出かける。
相変わらず横柄なチケット売りから理塘(リタン)行きのバスの切符を買い乗り込んだ。
65元(850円)朝6時出発。これは豪華なバスだった。中甸からのぼろバスとは違い、
VCD、エアコン付き。お客も少なく少しは快適な旅を予感させた。

バスはチベットの大草原に向けて走りだした、

注)
外国人宿泊書:旅行するとどこに行ってもそうだが、パスポートに記載してある国籍、住所、名前、性別、
パスポートナンバー、ビザナンバー、どこから来て、どこに行くのか、などを書く。この時は疲れてたし
、限りなく民家に近いこの旅館なので、「もうええやろおばちゃん。」って笑ってたら、そのまま記入せずにすんだ。

VCDレンタル:アジア各国のVCD普及はものすごいものだ。
ちょっと裕福な家庭(日本でゆう中流)だと各家庭に一台はあると思う。
中国製の格安デッキとこれまた中国製の違法海賊版ソフト。買えば一枚10元(130円)だが、
それをレンタルする。子供たちなんかは電影院(映画館)でVCDを観る。
電影院と言っても公民館みたいな大きなとこ(田舎ではこのサイズでもでかいほう)から
雑貨屋の奥でやってるところまでいろいろある。

スーツを着た兄ちゃん:中国大陸では男はスーツ!がおしゃれらしい。
田舎に行けば行くほどスーツ密度が濃くなって行く。こ
の辺りでは中学生くらいからちょっとだぼだぼ兄貴のお下がり系のスーツだ。
そして不思議なのは、必ず袖のところにでかでかとネームを入れている。
”**牌(ブランド)”って書いてある。必ずだ。これが彼らの基本形。

寝癖がついた兄ちゃん:さらに忘れてはいけないものがある。
それは寝癖。中国人男性の5割は寝癖をつけている。これも不思議。
これも田舎に行けば行くほど密度が濃くなる。チベタンは風呂に余り入らない(水そのものが貴重)ので、
その寝癖パワーも他地方の中国人よりすごい。
もうハードジェルで固めました系の勢いである。パンクな兄さんたちだ。

理塘(リタン):海抜4000M。大草原の小さな町。
チベット東部カム地方(チベットの大阪と誰かが呼んでるらしい)の濃い街。
バックパッカーが集まってきていると言う噂。


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