中国秘境のチベットロード2
Photo:三浦氏

第2話 麗江(リージャン)〜中甸(ジョンディエン)

 “こんにちは”“あ、こんにちは” バスの待合室に日本人の女の子がいた。

 彼女も僕達と同じバスで麗江に行くと言うこ とだった。
年は24歳。姫路に住むケーキ屋見習の女の子だ。けっこう可愛い。
しかし僕達が何よりも驚いたのは、彼女のバックパックの大きさだ。小さい。
街で使 うサイズと同じだった。3週間の旅行と言っていたが、
こんなに小さくてできるもの なんだろうか。 すごく不思議だった。
彼女はライダーで山登りが好きな子だった。
旅なれると荷物は 少なくなると聞いていたのだが。
更に彼女は広末涼子に似ていたので、僕達はリージ ャンのヒロスエと命名した。

 2時間ほど遅れてきたバスは最近できたバイパスを快調に走り、
わずか3時間で麗江 の町に到着した。僕達3人は、宿を探しに旧市街へと入っていった。
宿のドミトリーは2段ベットが並ぶ大部屋だった。中には数名の日本人らしき人が居 た。
“筒井さん!”“え?”“麗江にもうついたんですか?しまった,追いつかれた”
“あー!、種本さんじゃないですか、久しぶりですね” 陽朔で会った彼は、
一度香港に戻り、列車を乗り継いでここまで来ていた。
そう言えばチベットに行くと言っていたことを思い出した。
東京で中国語を専攻している20 歳の大学生だ。“ “筒井さんもチベットですか?”
“まさか、追いつかれるとは思いませんでしたよ。 あの調子じゃ動けなさそうでしたから。”
陽朔では長髪だった彼は、髪を短く切っていた。
服やかばんのカバーも人民スタイル に替えていた。
変装
してチベットに入ると言う。 彼は明日、中甸へ行きチベットに向かうとの事だ。

 僕達は飯を食いにまた、三浦さんの友人に会いに、旧市街にあるサク ラカフェに行った。
“ひさしぶりだね!”おー、黒澤君元気にしてた?!“黒澤さんは外国語大学大学院の学生で、ここ麗江で
地元のナシ 族の言葉であるナシ語を勉強していた。 彼の実家からカレーのルーが届いたと聞いて、
早速久々のカレーをよばれに三浦さんとヒロスエちゃんと家に行った。麗江の旧市街を抜け
旧家を改築した住まいはなかなか 快適そうだった。
途中、街の人が黒澤さんを呼び止めナシ語で挨拶をしている。
僕達は彼から簡単なナシ語を教えてもらって、その後も麗江に居る間、
メシ屋などの 小姐と挨拶を交わしていた。評判は上々だ。
なんでも、今彼は「旅行人」から執筆を頼まれ、
「ナシ族とナシ語で話そう!」と言うコラムを書いている途中だと言う。
それからも僕達は毎日彼の家に遊びに行っていた。
彼が日本語の家庭教師をしている 女の子の家に夕食を一緒によばれに行ったり、
書道家の親父から東巴文字の作品をも らったり、楽しい日々は過ぎていく。

 ある日、サクラカフェでインターネットをしていると、日本にいる友達から一つの メールが入っていた。
その子はカンボジアで知り合った都銀に勤めるパッカーで、
そ の友達が四川省康定(カンディエン)でチベットのパーミットを取った情報が入って きた。
このパーミットがあれば合法的にチベットに入れる。僕達はチベットへのルー トを四川ルートに決めた。
僕達も変装セットを買いに出かけた。人民のおっさんがよく来ている
日本では到底着 ることのできないおっさんジャケット、
バックパックを隠すレジャーシート生地のす ぐ破れるかばん、ズボンはスラックス。
まだちょっとあか抜けてるが、次第に汚れていい感じになる。

さあ、中甸へ!

cover 雲南の水都・麗江―管洋志・写真集(アマゾン)
400年前から残る麗江の旧市街の街並み。街には小川(用水路?)が流れていて、住んでるおばさんたちが
しゃべりながら野菜を洗ったりしていました。チベット圏の東端にあたる麗江の街並みをお楽しみください。
実際いかれる方は少し小高い丘があり(散歩コース)、そこから麗江旧市街のパノラマが楽しめます^^

注)
中甸:雲南省チベット族自治州:標高3300Mの高地にある。
桃源郷伝説のあるシ ャングリラはここだと言う説も。ここからがチベット圏。
チベット名ギュルタン。

ナシ語:チベット系ナシ族の使う言葉。
現在は漢化され話せるのは老人に限られてき ている。

東巴(トンパ)文字:ナシ族が祭典に使っていた象形文字。
中国雲南省麗江トンバ文字での店長の名前
漫画のような絵文字だ が、解読できるのはもはや数名の老人のみ。
近い将来絶滅が予測されている。ナシ語では濁ってトンバと読む。
黒澤氏による「やさしいナシ語会話」はこちら。

coverトンパ文字―生きているもう1つの象形文字
お茶のパッケージなどにも使われているので、見た方も多いのでは?
最近日本でよく使われてるのでびっくりしてます^^
麗江の旧市街にはほとんどすべての店先にこのトンパ文字で店名が
漢字と併記されています。

康定:四川省甘孜(ガンゼ)チベット族自治州の州都。
チベット名ダルツェンド。こ こでチベット入境許可証がもらえる、らしい。

変装セット:人民のにぃちゃんがよく着ている服装を真似した。
バックパックは外人 と分かるので、そのかばんの中に入れ隠した。
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