Schwesterピアノ

 

アプライトピアノは2つに区分されるようで、

電子ピアノと同様にピアノ入門の練習機で

ピアノに目覚めたらグランドに買換え、

と言うものと

機能的にはいくつか制限があるものの、

あくまでも楽器として

作り上げられているものと。

 

シュベスターは幻のピアノとか 言われて、

量産性の乏しい手造り品。

欧州の楽器のコンセプトに沿って

日本の職人さんの手造りで今に残る物のひとつ。

 

モデル#54:Lot:330402

 

アクションとハンマーRenner P4

弦はRoslau GMBH

響板は「赤蝦夷松」

 

外装はダークマホガニー半艶

鍵盤はアクリル白鍵、黒檀黒鍵

 

オリジナルの製造は1958年4月21日

お宝鑑定も狙えそうな古参兵

 

フレームにモデル番号が鋳込んでない事と

フレーム全体が金色塗装でない点が

物足りないか。

 

 

 

 

最初の頃は高音ノイズがあったり、ピアノらしい響きが乏しかったものの、

そこは手造り品の自由度の広さで、

打弦距離の変更、ハンマーの針刺し、先端部の弦との馴染み調整、

コマ部分の潤滑促進等々、調律師さんの、

時を忘れた努力の甲斐あって素晴らしい音色になってきた。

 

田園ソナタの第二楽章とか、Op119-1のバガテルなどの一節を弾くと

ベートーヴェンの諦観や寂寥感が音場に漂うかのよう。

特に低音部の和音は充実している。

 

  【経緯】

   楽器は音色が価格に正直に反映されるものであることは承知の上で、糸目を付けたうえで  の良品探し。グランドのフル機能が必要になる程に芸術性をもって曲が弾けるまでに腕は上がら  ぬと判断し、個性的なアップライトを探索。

  ひょんなことからシュベスターを触る機会を得て、その音色にとり つかれた次第。

 

   2004年6月初旬、(有)エスピー楽器に問合せてみると、もともと手造り品で数が少なく

   市場に出回るケースは まれでリニューアル品は偶然の出会いに近いとの事。

   そんな中で、#54のリニューアル品が出そうだから3ヶ月程、待てますかとの事。

   これも縁と思い、快諾するとまずは外装の仕上げ仕様の選択と言うことで、

   外装塗装見本板がどっさり届く。

 

   元品が黒塗装なので着色の関係上、暗色系ベースの制限の中でダークマホガニー半艶を選択。

   そしてさらにハンマー、アクション、ワイヤ等の心臓部パーツ仕様の選択を促される。

   意味するところがよくわからないゆえ、何度もメールで問合せ。

    良質のアクションはグランドまでは行かないまでも、トリルの速度への追従性が上がるとか

   良いハンマーは針刺しによる音色調整の幅が広いとか、一つ一つ丁寧に解説を受けながら

   とてもわくわくするカスタマイズの期間。

 

   10月23日 検品に磐田市の工場まで出かける。社長の岩本さんに工場も見せていただく。

         検品と言っても、外観、内部のパーツ類の新しさ位しかわからず、

        音色は設置環境も違うし腕も素人だし、なんでも調整しますよと言われても

        何をどう 言って良いのかわからない。   

   11月6日 待ちに待ったシュベスター#54が到着。流石に重厚な外観。音色はまだまだ若すぎ。

        シュベスターの音になるまでには、しばらくかかると覚悟してお付き合い。     

 

2007年3月31日、今回の調律、整音にて

どうやらシュベスターの音色が確定してきた。

 手造り品のリニューアルは、いくつかの部分で

細工の余地が残る事が調律が乱れやすい理由とも。あとは素材の品質と均質性の問題か。 

 

 

 

2013年現在。シュベスター独特の分厚い低音域から芯の透明な高音まで味わいのある音色となった。

  骨格が古いためか季節による変動が多い様な気もするが満足な状態。