作曲年1881/9/23-83/9/5,1885 依頼/献呈Bayern国王LutwigII世

1.原典版(HAAS版):1881/9/23-1883/9/5

2.原典版(NOWAK版):1885P(シャルク、レ-ヴェ、ニキシュ改訂) 

初演;1884.12.30Leipzig,Nikisch:

編成2fl,2ob,2cl,2fg,4hn,3tp,3tb,4Wagnertba,tba,timp,(cymb,trg),st

  

 この曲との出会いは全部で三回あったことになる。最初に聴いて印象的だったのが魅力的なスケルツォの旋律。このテーマをスタカート気味に奏するのは私の好みではなく、アダージョの六番に対してスケルツォの七番とでも言えるこの曲の要は決してワグナーの追悼アダージョ楽章ではない。その次の出会いは、オーマンディの演奏。早めの速度設定とフィラデルフィアの華やかで透明な音響で奏でられる軽快で爽やかな七番。そして、三度目は朝比奈さんの「楽章の合間に鐘の音」が入った実況録音。

《アイヒホルンのブルックナー交響曲第七番》

 はじめに録音の良さに驚かされた。実演ではなく記録された音楽を語る時に必ず分けておかなければならない録音の音質と音楽内容。大規模な近代的オ−ケストラの場合、特に前者が無視できない事は昔から言われているし、ブルックナー・マーラーブームも録音技術の進歩を前提にした商業主義のコピー文化の一現象としても理解しておく必要がある。この優れた録音にまず気を取られてしまった事で思いだしたのが学生時代にカラヤン指揮の第七を聴いた時の印象で、この時は音の良さと同時に、あの高級ム−ド音楽の壮麗な甘さに拒否反応で終結してしまった。アイヒホルンの演奏は、きわめてオ−ソドックスな中に、豊饒な質感が最初のチェロの旋律から感じとれた。これは朝比奈を聴いたときの印象に比較的近い。この七番ではじめて体験した事は、1楽章、2楽章の中に第九番の3楽章が聴こえた事があげられる。勿論、作曲経過からくる事実はその逆とは言うものの現在の我々からすれば、両方の交響曲に同じ系統のモチ−フがあるわけだからどちらを聴いてどちらを思い浮かべても別に不思議はない。しかし、これまで何人もの七番を聴いてきたけれども、第七番に第九番の清浄な宇宙的虚無感を連想させる響きを含ませたものはなかった。一般にこの七番の真骨頂は、ヨッフムの弁を引くまでも無くアダ−ジョであると言われているが、私と七番の関わりでみる限りこの交響曲の最も魅力的な楽章はスケルツォであり、アダ−ジョのクライマックスでシンバルがなろうがなるまいがどうでも良い事で、彼とワグナ−のからみに関しても、それがアダ−ジョをこの曲の頂点におかなければならない理由にはならないと言うのが持論。従ってこの曲については、2楽章にあまり重きをおいて聴く事はせず、聴き方としては、精神性を深く感じさせるヨッフム、金管の透明なオ−マンディ、あるいは壮麗なオーケストラで豊かになりたければショルティかカラヤン、しっとりと共感しあいたければ朝比奈と言う具合にそれこそ皮相的にセレクトできる。このアイヒホルンの演奏が加わって、第九番の高みをかいま見る事ができるという素晴らしいオプションが一つ増えた。このことはこの演奏のスケルツオの平凡さを補ってあまりある価値と言える。アイヒホルンは特に個性的なものが無いところが特徴のように感じられ、それだけに優等生の出来映えでブルックナ−を聴くときの教科書的存在と見なしても良いのではないだろうか。

 この曲のCDに手が伸びることはあまり多くは無く、従って所有CDも数は少ない。スケルツォに重点をおいてベストを挙げるとスウィトナーかハイティンクになりそうで、疑似体験としては朝比奈さんの聖フロリアンのCDがすばらしい。平和な中に、たたみかけてくる戦慄を味わうとすればフルトヴェングラーだし、その反対に平穏であるが骨太の広大な時空に浸りきるのであればチェリビダッケになる。この曲の性格は正にこれかもしれないが。 

【所有CD】  

指揮 オーケストラ I  II III IV DATE
Nowak オーマンディ フィラデルフィア 17'34" 18'45" 9'13" 10'13" 1969/5/22
Nowak ハイティンク ロイヤルCGO 18'10" 21'00" 9'19" 11'46" 1966/11
  ベイヌム ロイヤルCGO 18'40" 19'05" 9'10" 11'45" 1953/5
Nowak スウィトナー Staatskapelle Berlin 18'53" 21'15" 10'18" 12'34" 1989/1/23-27
Schalk フルトヴェングラー BPO 19'06" 22'03" 9'42" 11'38" 1951/4/23
Haas カラヤン VPO゙ 19'40" 23'15" 10'11" 13'00" 1989/4
Nowak ヨッフム BPO 20'18" 24'46" 9'33" 12'22" 1965/7
Haas 朝比奈 大阪フィル 20'46" 23'05" 9'32" 13'06" 1976/4/14
Nowak ハイティンク ロイヤルCGO 20'48" 22'20" 9'51" 12'05" 1979
Nowak ヨッフム Staatskapelle Dresden 20'49" 25'43" 9'55" 12'22" 1976/12/11-14
  ワルター コロンビアSO 20'50" 19'25" 10'22" 13'52" 1961
  ショルティ シカゴSO 21'27" 25'12" 10'10" 11'45" 1986/10 
  スクロヴァチェフスキ サール・ブリュッケンRSO 21'45" 24'46" 9'33" 11'45" 1991/9/27-29
  コリン・デーヴィス バイエルンRSO 21'47" 24'04" 10'18" 12'07" 1984/5
Nowak アイヒホルン Linz・Bruckner 21'51" 23'12" 9'39" 12'15" 1990/4/9-12
Haas 朝比奈 大阪フィル 22'49" 25'01" 9'34" 15'23" 1975/10/12
Haas チェリビダッケ ミュンヘンフィル 24'16" 28'46" 11'35" 14'30" 1994/9
   E・シュテンダー  オルガン独奏 17'53" 15'15" 9'38" 13'05"