* S.コヴァセヴィチ *

  
     
   スティーヴン・コヴァセヴィチは1940年にカリフォルニアのサン・ペドロで生まれた。8歳のときからLev Schorrにピアノを学び、12歳の時にサン・フランシスコでコンサートを開いた。1959年からロンドンへ渡り、マイラ・ヘス(69)に師事した。 21歳でロンドンのウィグモア・ホールにてセンセーショナルなデビューを果たしたが、その時の演奏曲目は、ベルクのソナタ、バッハの前奏曲とフーガを三曲、そして注目を浴びたベートーヴェンのディアベルリ変奏曲であった。27歳でニューヨーク・デビュー。30代になるとフィリップスを主に録音活動が増え,バルトークのピアノ協奏曲第2番は「エジソン賞」を受賞した。1984年には指揮活動を開始、オーストラリア室内合奏団、90年代はアイルランド室内オーケストラの音楽監督兼主席指揮者を勤め、同年、ハリウッド・ボールでロサンゼルス・フィルを率いてモーツァルトのピアノ協奏曲を2曲演奏デビューした。  
     
   昔、スティーヴン・ビショップと言う名前を聞いたことがあった。若々しい演奏のベートーヴェン・ソナタでは、ホロヴィッツの「悲愴」のようにピアニシモとフォルティッシモを磨きこんでしまったような演奏は極端としても、どうしても豪快華麗に終わってしまう。コヴァセヴィチ30代の演奏では、和音は硬質でなく豊饒で優しく広がる優雅さを見せる。「壮麗」となるぎりぎりのところで踏ん張っているような感じ。  
     
 

 若い感受性のなせる技か、音色が実に綺麗で自然で豊かな響き。スタインウェイを用いた、移民の国アメリカ流正統派ベートーヴェン。「悲愴」、「テンペスト」、「狩」、と後期のOp.101、109、110と大トリのOp.111。

 

 
   Philips 456877-2 「二十世紀の偉大なピアニスト」シリーズ