04'03/10    平成の隠居

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シーラカンスの回想録  

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回想録(T)
・シリコン騒動 ・静電気−T ・静電気−U ・静電気−V ・日本製は浮気者
・安物買い・蒸し風呂 ・赤道直下  

ここに書かれていることは全て筆者の記憶に基づいている。裏づけとなる物証・記録は存在しないので、事実と相違するかもしれない。 しかし、同じ轍を踏まない事を願って記すものなのでお許し願う。何故か品質の話題が殆どである。


シリコン騒動

 初期の自動車ラジオに使われていた「バイブレーター」と初対面した。箱入りの新品で、内部の励磁コイルの抵抗値も正常だし、電圧を加えると可動片も動きそれに伴い振動が手に伝わって来る。一見して正常なのだが、自励する状態に接続してようやく動作しない事が判明した。内部を開封し観察すると、肝心の接点が見事に酸化してた。酸化物を取り除き、接点を磨いて動作状態にする事が出来たので、目出度・目出度しで話は終わるのだが!。
 この物が製造されたのは昭和30年代だと思う。それから50年も経っているのだから、いくら「密封構造」だからといってやむを得ないと一般には考えるだろう。しかし、「密封構造」だからこそ酸化が進んだとシーラカンスは思ってしまう。しかも、もっと面白いのはその取扱説明書に書いてある事だ。
「バイブレーターを数ヶ月間使用せずに置くと接点面に絶縁皮膜が出来る事があります。・・・」
とあり、その酸化皮膜の除去方法が説明されているのだ。文面からすると接点の酸化は発生が当然の事として認めているのだから恐れ入る。 ちなみに記載されている皮膜除去方法では全く回復することは出来なかったのを申し添える。これこそ50年も経っているのだからやむを得ないと思うのだが!。
密封構造のバイブレーター

  バイブレーターの内部を写真に示した。中央の筒状の物は、バイブレーターの振動を吸収する為のゴムのスポンジである。ゴムは素材から部品に加工されるまでに「加硫」と言う過程を経る。そして、完全に加硫されずにガス化しやすい物質が必ず残る。ガスになった物質と接点材料が化学反応を起こし絶縁体となり接点表面に付着し少々の事では回復しなくなったのだ。(ここまでは検証しているわけではないので推察の領域です)
 「密封構造」はゴミ・ほこり等の外部からの異物に対しては有効なのだが、内部で発生する異物(ガス)に対しては返ってマイナスとなってしまう。密封するからには内部からの異物の発生が無いようにしないと効果が出ない。

 いかにもさらさらと原因らしき事を書いたのだが、苦い思い出があるから推察出きたのだ。問題解決に少なくとも半年と言う時間を費やし轟々たる非難に耐え忍んだ若き日の出来事を披露しよう。
 もう20数年前の話だが、音響製品の操作用ボタンにシリコンゴムを初めて使った時の事でした。仕様変更が何回もあり生産が予定より大幅に遅れ、やいのやいのと言われながらようやく出荷に漕ぎつけたのもつかの間、輸出先のお客様からクレーム頻発の知らせなのです。しかもボタン操作が出来ないという単純な内容だけに信じられない思いがしたものです。

問題のシリコンゴム釦

 空輸で不良品を送り返してもらい、調べると確かにスイッチの接点に異物が挟まっている。社外の研究機関にクロマト分析を依頼したりしながら物質の特定をしたのだが、それまでに2ヶ月近くかかったように記憶している。それがシリコン系と判明したものの、何処から紛れ込んだのかが中々判らない。微量のシリコンは色んな所から検出されるのです。結局、前述のシリコンの操作ボタンの加硫不足が主因と判り対策が取られたのですが、何を以って加硫が完全とするか、部品レベルでどう検証するか等の答えは結局出なかったように思う。いずれにしても、苦労の甲斐あってその後のクレームは皆無になり、類似の不良発生はなくなりました。

 電気製品にはスイッチをはじめ色んな所で接点が多用されています。リレーであったり、モーターであったり形態は様々ですが、最近では殆どが半導体化されてこの種のトラブルは無くなりました。それだけに、もし機械接点を使って同種のクレームが発生すると同じ事を繰り返し兼ねないのです。
 後日談ではありますが同種の品質問題は色んな電機メーカーが経験しと聞きました。当時は中々表に出る事は無く、夫々が苦労しながら解決したのですが、 情報を共有できれば時間的にも早く解決が出来ただろうと思います。その情報共有の手段として現在はインターネットと言う素晴らしいツールが存在します。 シーラカンスの経験もオープンすれば多少役立つかもしれないと思いながらこの項を終わる。

(2004/11/26)

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静電気-T