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750円で作る

ストレートAMラジオの実験


 ラジオ工房の掲示板に札幌にお住まいのさるお方が、「1000円以下で実用になるラジオが作れないだろうか」との書き込みがありました。 ネットで調べると、リフレックス型の例がいくつか掲載されていましたが、いずれもクリスタルレシーバーを使っていました。 クリスタルレシーバーは手持ちが無かったので100円ショップで探したのですが売っていません。替わりに両耳用のイヤホンがあったのでそれを買ってきました。 2台分に使えるから、50円でイヤホンが手に入る計算です。残り950円でラジオを作れば目標達成するのですが、子供さん相手のボランティア活動をされているようで、安ければ安いほど喜ばれそうです。 そこで目標を「材料費750円の実用AMラジオ」と定めて取り組む事にしました。但し、完成品まで作るのではなく、可能性を立証する所まにとどめることで勘弁してもらいます。

1.基礎データ

・トランジスタ検波回路  ネットで調べても、余りデータがありません。SSG・バルボルも手に入ったことだし自分で測定する事にしました。測定結果は下表の通りです。

入力(dbμ/50Ω) 74(5mV) 80(10mV) 90(30mV) 94(50mV) 96(60mV) 条件
1MHz,30%mod(400hz)
検波出力(mV) .85 2.8 40 160 275

測定・試験回路 90dB入力時の出力波形 96dB入力でクリッピング開始

・電波の強さ

 実用になるにはバーアンテナでどれくらいの起電力を得られるかで決まります。バーアンテナで同調回路を形成し、2次側の発生電圧を実際に測定してみました。測定地は明石市です。 試験回路は左図の受信機接続部を4.7Kオームで終端しその両端の電圧を測定したものです。 バーアンテナの位置が最適な所を選べなかったのでおおよその値と考えて下さい。

局名 ラジオ関西 NHK第一 NHK第二 朝日放送 毎日放送
周波数(khz) 556 666 828 1008 1179
送信電力(kw) 20 100 300 50 50
受信点までの距離 20km 50Km 45Km 35km 35km
測定値(mV) 12 5 5 2.5 測定不能

・バーアンテナ ラジカセ(電子同調形)から取り外した物です。物理仕様のみを記載します。(インダクタンス・Qは計測器なきため測定不可能)

 コアー長さ 100mm 直径 9mm  巻き線(リッツ線?) 1次側 78T 2次側  22T

2.ブロックダイヤグラム

 上記のデータから、左の図の様なブロックダイヤグラムで実用になるラジオが実現できそうです。 使用するイヤホンの種類により、出力段が変わってきますがコスト・製作の技能から選択すればよいだろうと思います。

3.レシーバーの種類とコスト試算

 クリスタルレシーバーを使えば回路は簡単になります。しかし、レシーバーの単価は高く200円ぐらいのようです。 かたや一般化しているイヤホン(ダイナミック型)は前述の通り50円で入手可能です。 その差150円でイヤホンのドライブ回路が実現できればコスト的には等価となります。ドライブ回路を実現するに必要な部品と価格は下表の通りです。 (全体の回路図参照)

部品の種類 仕様 数量 単価 合計
トランジスタ  2SC1815(相当品) 20円 40円
コンデンサー(電解)  220/10V 25円 25円
コンデンサー .1μ,.01μ 20円 40円
抵抗 1/4W-1/8W 4 10円 40円
合計 9 145円

 試算からすると両者のコストは殆ど変わりません。 製作がちょっと複雑になるかもしれないので経験の浅い人にはクリスタルレシーバーを選択した方が無難と思います。
 実験の方はダイナミックイヤホンで進めることにしますが、音に関しては断然ダイナミック型のほうが良いと思います。 そのかわりに消費電流が増加するのは止むを得ません。

4.全体回路

 右に全回路図を示します。ラジオに良く馴染んだ人は回路図だけを眺めると首をかしげたくなるのではないでしょか。
 バーアンテナを除き、トランジスタとCRだけの組み合せで実現しました。また、材料費を下げるために部品を極力少なくしています。 従ってトランジスタのバラツキの影響を受けやすくなっているので、実験により最適バイアスとなるよう抵抗値を選択しました。 新たに製作する場合には、最適値を探し出す努力をして欲しいものです。
 なお、クリスタルレシーバーを使う場合には右側の2Trの直結で構成している回路は不要です。 また220µのデカップリングコンデンサーも不要となります。

5.全体のコスト試算

 下表に示すとおり目標内に入りました。但し、単価についてはアチコチから集めた値なので実感が伴わないかもしれません。 (太字はbbs投稿者のHPから拾ってきた値です)
 
部品の種類 仕様 数量 単価(円) 合計(円)
トランジスタ

2SC1815(相当品)

20 80
コンデンサー(電解)  220/10V 25 25
コンデンサー .1、.01、.0047 5 20 100
抵抗 1/4W-1/8W 10 10 100
バーアンテナ 100 100
ポリバリ 100 100
つまみ 50 50
電池ケース 単三 1個用 1 50 50
ケース 30 30
ユニバーサル基板 片面(47×72 1/2 100 50
イヤホン 両耳用(2個組 1/2 100 50
合計 735

 上表の内、ケース・電池ケースは名詞の空箱を利用する事も出来そうです。 80円が削減できますから更に安く実現する可能性があります。

6. 部分製作と受信結果

 イヤホンを除き、全ての部品を手持ちで組上げ実験しました。バーアンテナはラジカセから部品取りしたもので、 真空管ラジオを綺麗に受信するために使っていたものです。
 回路は20×38mmで穴数14×4(全穴数56でフラットケーブル中継用)を使いました。 ちょっと詰めすぎの感じがしますが相当に小さくすることが可能です。
 アンテナ部・回路部・電池を仮接続し実際の放送を受信してみました。ラジオ関西・NHK(2局)はガンガン鳴ります。 特にラジオ関西はオーディオステージでクリッピングしている感じがします。VRをつける必要がありそうでした。 朝日放送は指向性をあわせれば十分に聞こえるレベルですがやや音量不足の感じでした。毎日放送は残念ながらかろうじて聞こえる程度でした。 指向性を合わせれば内容は把握できますが、移動に伴い常に合わせ直す必要があり実用になるとは言いがたい状況です。
 下に、製作状況(バラック)と、イヤホン(16Ω)への出力波形を示します。クリッピング直前(無歪)で52mv(0.2mW)が得られ音量感も十分でした。最大出力は120mV(1mW)です。全消費電流は3.8mAとやや多めですが、音質・音量感を考えればやむを得ないでしょう。

回路ユニット部 システム全体 無歪出力波形(52mV) 最大出力波形(120mV)

少年達がラジオ製作で感動を覚え、其れを契機に科学に関心を持ち、次の世代を担ってくれるならこの上ない幸せです。多少の役に立つ事を願いつつ!(05/2/25完)
(注意とお願い:上記の回路図では1.5Vの電源電圧としていますが、実験の全てとバイアス等の最適化は1.25Vの電圧で実施しています{Ni−Cdを使用}。乾電池の使用には修正して下さい。)

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