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短波ストレートラジオ(その2)


 国内の短波放送「ラジオNIKKEI」は第一放送と第二放送がある。この二つの放送は極めて近い周波数が使われている。もっとも第二放送は土用と日曜の日中だけしか放送されていないからあまり実害は無いのかもしれない。それはさておき今回の目標は、この2つの放送を識別できるストレートラジオが実現可能かの立証実験である。

1.ラジオNIKKEIの周波数

ラジオNIKKEIの周波数と必要なQ値 
周波数帯 75M 69M 31M
第1放送(Mhz) 3.925 6.055 9.595
第2放送(Mhz) 3.945 6.115 9.760
周波数差(khz) 20 60 165
Q20db 976 502 289
 左の表に周波数および2波の差を示した。スーパーヘテロダインなら分離して受信可能であるが、ストレート受信機ではとても分離は出来そうに無い。唯一あるのは、再生方式にしてコイルのQを高くし、選択度を稼ぐしかない。例えば受信周波数を3.925Mhzとし、20khz離れて20dbの選択度を得ようとすれば、必要なQは976と計算される。(参考までに計算式を末尾に掲げておく。)果たして帰還をかけたとしてもこのような高いQが実現できるのであろうか?

2.回路の変更

 前回のラジオは1.5Vで動作させていたが、帰還をかけるに必要な電圧が得られないため、電源電圧を5Vと高くした。これに伴い、バイアス回路の定数が変わってきている。また、検波感度が最大となるよう、半固定のボリュームを使いバイアスを調整できるように変更した。
 検波トランジスタに入力された信号は、コレクターに脈流として現れる。これを平均化し検波出力を得ているが、再生を掛けるにはこのほかに高周波成分を取り出す必要がある。このためコレクター負荷を2.7Kと8.2Kに分割し2.7Kから帰還用電圧を、8.2Kから検波出力を取り出すようにした。当初、2.7Kは抵抗ではなく、高周波コイルを使ってみたが、自己共振周波数の存在が帰還電圧に影響を与えたので抵抗に変え、安定した動作が得られるようになった。帰還量の調整は50pfのトリマーコンデンサーで行っているが、手持ちに再生バリコンが無かっただけの理由である。実験目的にはこれで十分であるが、本格的な製作の場合には調整しやすいバリコンを使うべきであろう。
 再生をかけ受信すると検波出力が大きくなり、イヤホーンアンプの飽和が生じたので出力にも半固定の抵抗を入れ、調整可能とした。なお、電源電圧を5Vとしたのは5V3端子レギュレーターICの手持ちがあったためである。

3.コイルの製作

 右の図に巻線仕様を掲げた。前回まではタップを儲け、継ぎ変えが可能なようにしていたが、最終に近づいたためスッキリした形にした。なお、アンテナ入力レベルが過大の場合は直列に数百オームから数kの抵抗を挿入し調整する方法が容易である。
 帰還用のコイルは右図仕様図の様に同調用のホット側の上部に、スペースをとらず巻きつけた。正帰還をかけるには外側をコレクターに接続すればよいのだが、でたらめに接続しても確率は1/2であるから気楽にやれる。

3.実験結果

 実際に放送を受信してみると、思いのほかシャープなチューニングが出来る。しかも感度も格段に高くなった。残念ながら発振直前まで帰還容量をあわせこむと同調が極めてやりにくくなる。ほんの僅かな回転角で受信周波数が変わるためである。バーニヤダイアルか、糸かけで回転の微調整が出来るような工夫が必要となろう。

(注:Ant.Dummyは560Ω直列抵抗のみ)
周波数(Mhz) 3.900 6.000 9.600
S/N=20db 感度(μV/50Ω) 31 26 25
選択度(khz)
(-20db)
+2
-2
+4
-4
+9
-9
Q
(-3db帯域幅)
3900(1.0khz) 4600(1.3khz) 4800(2.0khz)

 75Mバンド(4Mhz)は電波も弱く、回路のQも低いようで、帰還容量50pf一杯にしても発振に至らない。20pfの継ぎ足しが必要であった。
 発振ギリギリに調整した場合の各周波数での感度・選択度を表に示す。選択度は出力が20db低下する中心周波数からの差で定義した。3db幅を測定し逆算したQの値も参考までに記載する。ただし、SGの周波数微調がmin 100Hzのため精度は高くない。

4.まとめ

 真空管で同種の受信実験をした事が無く比較は出来ないが、遜色ない結果が得られているような気がする。しかも、トランジスタ2石(4?)で短波放送が楽しめるのは愉快である。目標とした「ラジオNIKKEI」の第一放送と第2放送の識別は3.9Mhzでは確認出来なかったが高い周波数では十分に可能であった。再生受信機の性能を測定するのは難しいが、上表の如き簡便法でおおよその見当はついた。実際にアンテナをつなぎ受信してみると、中国・台湾・北朝鮮・韓国からの日本語放送が快適に受信できる。7Mhzのアマチュア無線も時間によっては受信可能であった。(SSBの復調は、SSGよりキャリヤーを加える方法としたので一般的ではない。)
 750円ラジオから出発し、短波帯の再生受信器まで実験が進み、それなりの成果が得られた。得られた成果を「2バンドストレート受信機」としてまとめるのも面白いかもしれない。(05/3/16完)

(参考)単一同調回路の選択度の計算式は E/E01/√1+(2QΔf/f0)2で表わされる。
 ここで、E/E0=1/10 (-20db)とすると必要なQの値はQ20db=4.975×f/Δfで求められる。

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