反京

 最初のショックは、王貞治の
「ナボナは、お菓子のホームラン王です」
「もりのうたもよろしく」
というお菓子のCMだった。これは一時期いろいろなマンガでネタにされており、当時小学生だった僕はこれが出てくるたびになんのことやらさっぱりわからなかった。そりゃそうだ、関西でこのCMは流れていなかったのだから。
 その次のショックはインベーダーゲームの裏技「ナゴヤ撃ち」。バグを利用した裏技の元祖で、最早伝説とも言っても過言ではない攻略法である。しかしこれを僕の近所では
「タコヤキ」
と呼んでいた、語源はさっぱりわからない。当時のゲーム記事(といっても「ゲームセンターあらし」内のコラムぐらいしかなかったが)で「ナゴヤ撃ち」という言葉が出てくるたびに「ぬわぁにがなごやうちじゃあ!」と反抗の炎を心に燃やしていたものである。
 そしておでこを指ではじくショート罰ゲームの「でこぴん」。これをうちの近所では「こんぱち」と呼んでいた。けんかするときなど相手の眉間に頭突きを叩きこむことを「ぱちき」と呼んでいたので、恐らくこんぱちの「ぱち」はこの「ぱちき」から来ていると思われる。しかしこの罰ゲームそのものがほとんど伝承芸能(?)なので詳しくはわからない。
 そして「めんこ」。ドラえもんをコミックで読んでいるとこの言葉がよく出てくる。これって、「べったん」とちゃうん?と、関西人である僕はまたまた反抗の炎を燃やしていたのである。関西では「べったん」というのだ。なにが言いたいのかというと、

子供の遊びにまで東京弁を標準語にするな

と言いたいのである。「めんこ」というのは、あの、質の悪い2cm×5cmぐらいの紙に相撲取りやプロ野球選手が描かれているものを指す東京の言葉で、あんなものに標準語などないし、標準語化するにしても東京で使われている言葉を使用する理由などないのだ。
 関西人は子供の頃からこういう仕打ちを受け続けることになるので、自然「反東京」というものをどこかに抱えて育つ。東京でも関西人は関西弁を捨てないがそれはこの精神を忘れぬ者たちの魂がそうさせるのだ。
 大人になってからの関西差別は、芝居などで悪どい金貸しや根性ばば色のいやみなやつはなぜか関西弁だったりすること。それも流暢な関西弁ならまだ許せるが、大概

「な(↑)に(↓)ゆうてんねん」

などという変なアクセントのついた関西弁である。これをされると尚更むかつく。耳元でパルナスの歌をフルコーラス全開で歌ってやろうかという気になってくる。現実でも債権取立ての脅迫電話が録音されたテープなどがたまにニュースで流れたりするが、ガタガタの話にならん関西弁である。脅すときに迫力を出そうと思って使っているのだろうがそれならばちゃんと使えといいたくなる。こういう輩がいるから関西弁のイメージがどんどん下がっていくのだ。関西弁のイメージというか品位を落としたタレントとしては明石屋さんまや西川のりおが挙げられる。
 あとこれは関西に限ったことではないが、台風や洪水のニュースなどで、四国だ和歌山だに被害がありそうなときは事務的に
「十分お気をつけ下さい」
とうわべだけでアナウンスしている。しかしこれが東京近郊で起こると
「台風の被害には十分お気をつけ下さい!!!!!!!!!!」
なんて、感情を込めて心の底からから心配してコメントしているのだ。東京=全国ではないのだがこういうことはこれからも続くのだろう。
 まんがに出てくる農民はなぜか東北弁で、相撲取りは薩摩弁だというのもいい加減いかがなものかと思うが。

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