ドロップ

 駅へ行く途中で百円ショップに寄ると、宇多田ヒカルのヒット曲の影響か「サクマ・ドロップス(缶入)」がドーンと置いてあった。思わず買ってみたが、缶のデザインも昔と変わらないし、振ったときのからころという音も懐かしい。非常に単純で直線的なあの味も変わってませんようにと願った。
 ところで、ドロップといえば...そう、ハッカである。あの、中盤に差し掛かった辺りに出てくる悪魔の味である。それまでにイチゴとかメロンとかで散々夢のように甘やかされたその口を一気に現実へ引き戻す冷血漢である。子供の頃など、ハッカがいつ出てくるのか、常にびくびくしながら手のひらにドロップを空けたものだ。半透明の玉が出たとき、「ついに年貢の納めどきがきたか」と、覚悟の上で口に運び、それが「レモン」だったときの安堵感といったらなかった。しかしやがて、悪魔は必ずやって来る。真白でピュアな見た目か、ひょとすると「ミルク」かな?などど淡い期待を抱かせるが、その期待は、必ず裏切られ。最初からミルクなんてのは種類として存在しないのである。子供たちは、その中途半端な甘さと、ハッカ能の効果による冷たさを兼ね備えた味に苦悶の表情を浮かべるのだ...。
 ってなことを考えながら、封を切ってワクワクしながら十円玉で蓋をぽんと外し、ドロップをひとつ、からりと取り出した。

初球 ハッカ

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