散髪

 大阪市内に住んでいた頃は行きつけの美容院があったのでそこにずっと行っていたが、高槻へ越してからはなかなか髪を刈るところが安定しない。高槻の美容院は高いからだ。いろいろ探したがどこも3500円を下らない。安くてひげと顔まで剃ってくれるので床屋へ行ったこともあるが大概床屋の親父というものは頑固でこっちの言った髪型にしてくれないので、安い料金で無難にこなしてはくれるがもうひとつ満足へ至らないところがある。やっと一軒、美容院でカットが1600円とバカ安のところを見つけたので2回ほど通って、ここにしようと決めて昨日も行ったが満員だった。待っても閉店になってしまうので申し訳ありませんがと断わられた。僕は散髪に行くのが非常に億劫な性質なので行く気になったときに行っておかないと次がいつになるのかわからない。今回も4ヶ月ぶりで、もはや金田一耕助か升田幸三のようになっているのだ。困ったが床屋へ行くのはいやだし、どうしようと思っていると阪急高槻駅に料金千円仕上り十分のカット屋があるのを思い出したのでそこへ行ってみた。中へ入る。待っている人はいないが、中年ぐらいの男の人と女の人が客に付いて髪を刈っていた。待っていればこの二人のうち一人が僕の髪を切ってくれるのだろう。しかし、
「いらっしゃいませ、どうぞ」
と言われて顔を上げると、どこから来たのか頭悪いのが丸出しの若い、ちゃらちゃらしたいかにもという感じのやつがいた。案内係かと思って導かれるまま散髪台へ行くと、どうやらこいつが僕の担当らしい。
「わっちゃ〜!」
と思ったが千円の店でこいつだけはいや!とも言えず、大丈夫かいなと不安になりながら台の上に座る。こちらの指示は、
「バリカンで耳の周りと襟元をかなり薄く刈り上げてそこからつなげていく。前と横は4ヶ月前の長さを想定して切る。」
というもの。作業を始めるがなんとも手つきがぎこちない。バリカンを使って刈り上げ始める。かなり薄くだから、耳元はスキンヘッドに近い状態だ。これはこれでいい。そして、いきなり前と横を切り始めた。
「こいつ話聞いてんのか?」
と思うがもう既にそのように切り始めている。前と横を切り終るとそいつは作業そのものを終えようとしたので、
「つなげてくれって言ったの覚えてる?」
と聞くと、そいつはハッとした顔になり、
「ええ、いまからやりますよ」
と、忘れていて言われたから気付いたというのが完全にモロバレである。大体目の前の鏡に映った客の髪型を見ておかしいと思わんか?耳の周りがスキンヘッドなみに刈り上げられていて、そこから突然、普通の長さのサイドと前髪になっているんだぞ、なんか

森の人ブロッコリーマン

みたいな髪型になっているのに、これでOKなんていうやつがいるのか?そこからなんとかつなげて仕上がりは比較的まともになったが、今見ても「雑さ」は拭えない感じがする。おまけにこやつは途中で
「個性的な仕上がりになりますね」
とか、すきバサミを入れたあとで
「かなりすきましたから、かわいく仕上がっています」
などと訳のわからんことをいい出す始末。一刻も早くこの店から脱出したかった。なんで客がこんなラリリ店員の相手しなきゃいけないのだ?
 やはり散髪屋は喫茶店と一緒で、店の雰囲気もひっくるめてゆったりと過ごすところなんだなとつくづく思った。多少高くても満足の行く仕事をしてくれるところに行くもんなのでしょうね。

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