inf
は無限大という数学的概念を表します。
Calc には実際、少しずつ異なる 3種類の無限大的な値があって、
inf
, uinf
, nan
という名前がついています。
これらは単なる変数名(変数 参照 )に過ぎませんが、
Calc はこれらを特別に扱うので、自分の計算に使うのは避けるべきです。
これらの変数は、他の変数と同様に、代数的入力方式で入力します。
「無限大」を数値のように取扱うことは、 数学的には厳密に正しいと言えませんが、 数学者はしばしば非公式にそういうことをします。 彼らが `1 / inf = 0' と言ったら、本当は、 「x がどんどん大きくなるにつれて 1 / x はゼロにいくらでも近づく」 という意味です。 もし x が「無限大に限りなく近づく」なら、 1 / x は「ゼロに限りなく近づく」ということが想像できるでしょう。 同様に、`exp(inf) = inf' の意味は、 exp(x) は x とともに限りなく大きくなる。 記号 `-inf' は、同様に大きさが無限大の値を持つ負の実数です。 例えば、`exp(-inf) = 0' などと言います。 複素平面上では、どの方向にも無限遠点をとることができます。 例えば、`sqrt(-inf) = i inf' です。
極限の同じ概念が、 1 / 0 の定義に使えます。 本当に欲しいのは、x がゼロに近づいたときの 1 / x の値です。 1 / 0 の値しか無かったら、x が何処から来たのか判りません。 もし x が正で、右からゼロに近づいたのなら、 `1 / 0 = inf' と言えます。 しかし x が負で、左からゼロに近づいたのなら、 答は `1 / 0 = -inf' です。 実際、x が虚数で、 答が `i inf' や `-i inf' と言うこともあり得ます。 Calc は特別な記号 `uinf' を使って、 undirected infinity(向き不明の無限大) 、 つまり「絶対値は無限に大きいが正負(または複素平面上の方向)が不明」 な値を表します。
Calc は実のところ、無限大の取扱いに関して 3つのモードを持っています。
通常、無限大が元の計算に含まれていない限り、
決して自然発生するものではありません。
従って、1 / 0 は単にエラーとして取扱われ、評価せずに残されます。
m i (calc-infinite-mode
) コマンドは、
1 / 0 をエラーではなく uinf
として評価するモードを起動します。
さらにもうひとつ別の無限大モードがあって、
`1 / 0 = inf' になるように、ゼロを正のごとく取扱います。
数学的にはあまり正しくないのですが、
場合によっては望ましい答えを出すことがあります。
無限大はどれも同じくらい大きいので、
Calc は `5 inf' を `inf' に簡単化します。
また他の例では、`5 - inf = -inf' があります。
`-inf' は非常に大きいので、
5のような有限の数を加えても影響しないと言うことです。
`a - inf' も `-inf' になることに注意してください。
Calc は a
のような変数を有限の値と見なします。
無限大はどれも同じ大きさだと言うことを示すには、
Calc の記法で、`sqrt(inf) = inf^2 = exp(inf) = inf' と書けます。
`0 * inf' や `inf / inf' のような式を定義するのは、
容易なことではありません。
このゼロや無限大がどこからやってくるかに依って、
その答は文字通りどうにでもなります。
後者の式は、次の極限のどれでもあり得ます;
x / x (極限は 1), 2 x / x (極限は 2),
x^2 / x (極限は inf
), x / x^2 (極限は 0)。
このような不定(indeterminate)な値を表すときに、
Calc は記号 nan
を使います。
("nan"と言う名前は、IEEE 算術標準の"NAN"の概念に似せたもので、
"Not A Number" に由来します。
nan
は有限または無限大の値を持つれっきとした数なので、
これはちょっと言いすぎです。
単に、「どの値なのか定められない」だけです。)
Calc の表記法では、`0 * inf = nan' や `inf / inf = nan' と書きます。
この他に有名な不定の式は、`inf - inf' と `inf ^ 0' です。
上記の「無限大モード」であれば、`0 / 0 = nan' もそうです。
無限大は、区間の範囲として使うと非常に便利です。区間型式 参照 。
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