第五話

 人払いの結界。この結界は、妖怪が自分の存在を人間に見られない様にする
為に、人間を遠ざける目的で張る結界だ。この結界を張ると人間は其処の側に
は、行きたくなくなり遠ざかっていくのだ。又、この結界は人間だけに効くものも
あれば、妖怪だけ、その両方にきく結界もある。ちなみにこの結界を張れるのは、
しろがねでは、リンとシンシアだけである。
 ハクの叫んだ言葉にリンは身構えて周囲を見まわす。と、其処へ数人の外国
人が歩いてきた。見た所、東南アジア系の様だ。が、その外国人を見た途端、ハ
クとリンは、警戒し出した。別に何も彼らが、外国人だからではない。感じたのだ
強い妖気を・・・
 その外国人は、ニタニタと冷酷な笑みを浮かべて三人に近づいてくる。ハクとリ
ンは千尋を背後に下げさせた。そして、身構える。
 「ハク、リンさん!!後ろからも!!」
 千尋は、自分の背後を見て叫ぶ。振り返ったハクは、其処にも数人の東南アジ
ア系の外国人が近づいてくるのを確認した。勿論、強い妖気を放ちながら。全員
で九人。
 「囲まれたか・・・」と、毒つくハク。
 三人は、追い詰められて背中を寄せ合ったそして、聞き取りにくい小さな低い
声で囁くのを三人は聞いた。
 (ミツケタネ・・・)
 (コイツラニマチガイナイネ・・・)
 (コイツラサンニン、コロスネ・・・)
 (ソシテタラ、アノカタヨロコブ。ソシタラワタシタチ、アタラシイチカラモラエル)
 (ドッチニセヨヒサシブリノカリネ・・・タノシマセテモラウネ・・・)
そう言ったその外国人は、姿を変えた。黒いマントをまとって円月刀を持った影
のような姿に!!
 「いじんか!!」
 ハクが叫ぶ。そして、本来の姿になって、相手を威嚇する。リンは手の平に火
の玉を出現させて、何時でも放てるようにした。そして、千尋に叫ぶ様に言った。
 「千尋、御神刀はどうした!!」
 「・・・そ・・・それが・・・・・・」
 「持って来ていない訳だな・・・」
 「ハイ・・・」
リンは、何か言いかけて辞めた。今はそんな事を行ったて、如何する事も出来
ない訳だし・・・
 いじんは、三人を取り囲む様に集まってくると、何処までも冷酷な声で「シヌネ」
と言うと、いっせいに円月刀で切りかかって来た。ハクは、咄嗟に相手に目掛け
て稲妻を放つ。リンは、火の玉を相手目掛けて放った。
 いじんは二人の攻撃の攻撃をかわすべく飛び下がる。その隙を付いて、リンは
千尋を抱えると、素早く建物を背にして立つ。ハクもそれに習う。コレなら退路を
失ってしまうが、背後から攻撃される恐れは無い。
 畜生と言って、リンは左手の二の腕を押さえた。いじんの攻撃をかわし切れな
かったのだ。ハクも体に二・三の傷から出血して白い鱗を血で赤く汚していた。
 そんな様子を見た千尋は、しろがねに連絡を取ろうと携帯電話を取り出してダ
イヤルするが全くつながらない。
 「如何して!!別に圏外にいる訳じゃないのに!!」
 「電池切れじゃないのか?!」
 「出掛けるときに、充電してきたんですよ!!そんなのあり得ない!!」
 リンは、自分の携帯を取り出して千尋に渡す。千尋は受け取った携帯で電話し
ようとするがやはり繋がらない。
 『リン、奴らだ!!奴らが妨害していると見て間違いないだろう!!』
ハクが念話でリンに話し掛けて来た。
 相手は、慌てふためいている様子を楽しむ様にじりじりと、三人に接近してく
る。
 「畜生、如何する・・・」
リンは、うめく様に呟いて相手を睨みつけた。ハクも牙をむき出して唸り声を上
げて威嚇する。九対三しかも、こちらの一人は戦力にならない。どうにかして連
絡を取らないと三人とも皆殺しだ。
 「オイ、ハク様。自分が囮になるから、千尋を連れて逃げろ―などと言うのは
ナシな。オレは真っ平御免だぜそう言うの」
 見抜かれていたか・・・と思うハク。と、其処へ千尋が話しかけてきた。
 「ね・・・ねぇハク・・・ハクは確か局地的に天候を操る事が出きるんでしょ。だか
らその能力で・・・」

 所変わって、ここしろがねの店内には店の主、武男とシンシア、神楽がいた。
 「なぁ、神楽さんよ。お前何時もここに入り浸っている様なんだけど・・・」
 「んー、なに、ここに居ると小うるさい担当が来ないからね」
ノートパソコンの画面から目をそらさずに神楽はこともなげに言う。
 それってただ単に締め切りって奴から逃げてるだけやないのか?と、激しく思
うシンシアしかし、口にはしない。
 「おい、神楽コレ如何する。千尋ちゃんに電話駆けて、取りに来させた方が良く
ないか?」
 武男が御神刀を手にして言った。
 「んー、その内取りに来るよ・・・いや・・・ヤッパリ、一応忘れていった事知らせ
ておいた方がいいかな」
 そうだろう。と言って電話をかける武男。と、暫くして武男がシンシアと神楽に言
った。
 「なぁ、神楽、三台の携帯電話が繋がらなくなる確率てどのくらいだ?」






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