<ぼかし肥>
ぼかし肥とは?油粕や米ぬかなどの有機質肥料に山土や籾殻等を混ぜて発酵させた物をぼかし肥(ごえ)と一般には呼んでいるようですが、厳密な定義や解釈は今の所、無さそうな気がします。そのため有機質肥料や無機質肥料だけを使って単 に発酵させた物もぼかし肥と呼んだりしているのもあります。なかには山土や籾殻などを入れない物は、ぼかし堆肥・発酵肥料・菌体肥料と呼んでちゃんと区別しているのもあるようです。なかなか呼び名もぼかされているのでしょうか?(「ぼかし」とは、〜をぼかす、ぼんやりさせる、曖昧にする、薄めると言った意 味合いなんでしょうね)
参考1: |
本題に戻りますが、発酵過程では微生物が繁殖、死滅のサイクルを繰り返しながら油粕や米ぬかは微生物に分解されていきます。それと並行して死滅した菌体に含まれる物質も徐々に集積されてタンパク質なる物質に変化していきます。これらのタンパク質が後の植物に有用なアミノ酸の形成に役立つそうです。ところで
有機質肥料は一般に分解速度が遅いので遅効性肥料として扱われていますが、発酵させることにより有機態のチッ素成分がアンモニアや硝酸性の無機態に変わり、植物にとって吸収しやすい形になりますので肥料の性質としては遅効性と速効性の併せ持った物になっていくようです。
参考2: 発酵には色々な菌が携わっていますが、よく発酵肥料作りで出てくる主だった菌を列挙してみました。
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さて、ぼかし肥の有機質肥料の材料としては、チッ素とリン酸が多い材料を組み合わせるのが基本のようです。チッ素は油粕、リン酸は骨粉が中心のようですが、米ぬかは各種の成分がバランスよく含まれ微生物の培養や繁殖を促進するので発酵させるのには丁度良い材料の様です。不足分のカリは有機質肥料にはあまり含まれていませんので草木灰や硫酸カリなどで補うようです。また、作物により養分吸収量が異なるので葉菜類はチッ素、果菜類はリン酸を主体にして肥料の配分比を変えたり、もともと持っている肥料の速効性や遅効性の性質を利用して、ぼかし肥用の有機質肥料を作物の栽培期間にあわせて組み合わせたりもするようです。味を重視する野菜などには魚粕などの動物性有機質肥料が有効なようです。その他にはミネナルやアミノ酸が豊富な茶かすや昆布、放線菌が喜ぶキチン質が豊富なカニ殻など、自然界での色々な材料を組み合わせて作っているのもあるようです。
参考3: |
また、ぼかし肥に用いる山土や籾殻などは保肥力があるので、それを利用してアンモニアや他の物質を吸着させる働きを持たせます。土壌の保肥力が強くない場合はベンナイト、ゼオライト、バーミュライト資材を一部入れる事によって改善する事も出来るようです。
参考4:
*これらの土壌改良資材を使う際、アルカリ性による活着障害や漏水防止効果の低下等もありますので注意が必要です。 |
ところで土は土壌に含まれる微生物が発酵の種菌にもなりますので、採種した土がうまく行けばご自分の畑にあったぼかし肥が作れますし、小生のぼかし肥の前実験のやり方でも進める事が出来ると思います。(種菌となる微生物資材としてはEM菌・コフナ・バイフードや自然の菌として土着菌と呼ばれる物などがあります。これとは別に地力増進資材として扱われているVA菌根菌があります。)
<発酵実験(1)>
小生もぼかし肥は初めてであり、発酵とはどんなものなのか?勉強の為にチャレンジした実験内容があるので、その記録をご紹介します。(環境や条件によって小生の実験と異なる事もあるかと思いますが、その点はご容赦願います)また、ぼかし肥作りは寒い時期の方が雑菌などが入りにくく作業がやりやすいとの事で11月〜3月くらいまでを目安に進めた方が良さそうです。
注意)匂いに敏感な方は密室で作業しないようにして下さい。また、様々な菌の出入りがあると思いますので手袋・マスク等の着用と消毒を忘れないようにして下さい。
実験内容:
・ぼかし肥の前実験(1)小生ちの土作りで用いた馬糞堆肥でも発酵が期待出来るのか?
・ぼかし肥の前実験(3)手作りのコウジ味噌でも発酵が可能か?
・ぼかし肥の前実験(4)市販の納豆でも発酵が可能か?
・ぼかし肥の前実験(6)市販の発酵牛糞を使ってさらに発酵が可能か?
・ぼかし肥の前実験(8)純粋に米ぬか発酵だけをやってみたが・・・
今回の実験は、前実験としての「米ぬか発酵」だけですが・・・・
この実験で分かったことは、
@米ぬかの量と水分量について
手で握って離すとバラける水分量が適量と書かれていますが、なかなか頃合いが難しい。生糠はそのままの状態でも油分があり、手で握ると塊が出来て、あたかも水分が含んでいるような勘違いを起こす。そのためあらかじめ水分が入っていない最初の状態を把握してから水分調整を行った方が無難です。小生は全材料の1/4〜1/5を目安にして少しずつかき混ぜながら調整しました。油分の逃げ手としてはフライパン等で米ぬかを熱し、先に油分を飛ばす方法があると思いますが・・・大量の場合は無理ですね。
A米ぬかの量について
米ぬかの量が少ない場合、比較的発酵期間が短いようです。実験では米ぬか500g〜1kgで約3日〜1週間で発酵が完了。10kgで行うと2週間は継続して発酵しているようです。
B拡張発酵の場合に使う種菌の量について
米ぬかの量を増やして新たに発酵させる場合、種菌の量は1/10程度が良いとなっているが・・・種菌の発酵力が強い場合は、少ない量でも比較的早くから発酵しますが、弱い場合にはやはり発酵するまで期間がかかるのでさじ加減が必要です。
C発酵力について
温度が低いとなかなか発酵しないが、なんらかの条件が揃うといきなり発酵を始めるようです。発酵は材料の中心部から周りに拡散するようだが、周りの温度が低い場合はなかなか外周まで拡散してこない。そのため材料の外周周りにあたる部分は熱が逃げないような工夫が必要のようです。箱を使う場合はトロ箱のような発泡材なる断熱効果のあるものが適しているように思う。また、菌は活力(増殖力)が無ければ弱い発酵しか得られない。
D発酵後の水分量について
発酵は熱を伴うので水分の拡散があります。そのため補充が必要ですが、水分量が多ければ発酵速度が遅く嫌気的な発酵に陥り易い、また少なければ発酵速度が早くオーバヒート気味になるため度々の補充が必要となるようです。
まだまだ「ぼかし肥づくり」としては初期の段階ですが、とりあえずこの段階での結果を見るために、この実験で出来た発酵肥料は2007年のトウモロコシ、ナスビ、トマト、紫蘇の追肥として使用しました。(栽培記録には自家製の発酵肥料として記載してあったと思います)
<発酵実験(2)>
今度は納豆菌・乳酸菌・酵母菌を使って発酵の実験にチャレンジしたいと思います。
材料は家庭用として市販されているもので、納豆菌は納豆、乳酸菌はヨーグルト、酵母菌はドライイーストを使っています。
実験内容:
・ぼかし肥の前実験(11)えひめAI−2を作る
この実験では、
@温度さえ確保出来れば簡単に作れ、しかも増やす事が可能だと分かりました。
A増やす事については「発酵実験(1)」でも取り上げたように元種による拡張発酵と同じ要領で出来る事も分かりました。
これだけではつまらないので、出来た「えひめAI−2」の発酵液で米ぬか発酵をやって見たいと思います。
実験内容:
・ぼかし肥の前実験(12)えひめAI−2を用いた米ぬか発酵
この実験では、
@この時期、気温が冬場と違って高いので発酵温度も上がるだろう〜と思っていたのですが、案外、落ち着いた温度で発酵していた。
注意:
1.実験環境や条件によって小生の実験とは異なる事もあるかと思いますが、その点はご容赦願います。
2.「えひめAI−1」及び「えひめAI−2」は、愛媛県産業技術研究所で開発されたものです。
3.「えひめAI−2」の使用効果や用途については、ネット上で色々と紹介されているので詳しくはそちらをご参考にして下さい。
<発酵実験(3)>
コウジ菌や納豆菌を使った米ぬか発酵、乳酸菌や酵母菌を使った「えひめAI−2」をこれまでの実験で進めてきました。 しかしこれらの実験は最初に何某かの菌を使って、それで増殖・発酵すれば実験を終了していましたが、 今度はそれらを組み合わせた発酵について実験を試みて見ました。
さて、実験開始です。
実験内容:
・ぼかし肥の前実験(13)米コウジ(こうじ菌)、納豆(納豆菌)から えひめAI−2(納豆菌+乳酸菌+酵母菌)を組み合わせた発酵実験
この実験では、
@こうじ菌や納豆菌などによって分解された米ぬかはいつも通り1週間くらいで発酵が終わっちゃったように見えましたが・・・
糖分やタンパク質、アミノ酸が残っているのでしょうね。続投をかけた「えひめAI−2」でさらに発酵しました。
乳酸菌や酵母菌も入り、これらはさらに良質な発酵肥料となったかな?
注意:
1.実験環境や条件によって小生の実験とは異なる事もあるかと思いますが、その点はご容赦願います。
<発酵実験(4)>
今までの発酵実験でもありましたように発酵には水分量も大切ですが、様々な菌が活躍できる最適温度と言う物があります。
発酵肥料作りにはこれらの温度管理が必要となってきます。
例えば納豆菌などは高温を好む菌で、どんどん活躍しますが気をつけないとアミノ酸をアンモニアまで分解しちゃいます。
また酵母菌は低温を好みますので温度が上がりすぎると死滅しちゃいます。
参考2にも記載しましたが、以下にもう一度まとめて記載したいと思います。
発酵菌 | 仕事内容 | 最適温度 | pH |
---|---|---|---|
こうじ菌 | 澱粉を分解して糖分の生成をおこなう | 25〜30度 | 微酸性 |
納豆菌 | タンパク質をアミノ酸に分解する | 40〜45度 | アルカリ性 |
乳酸菌 | 乳酸、有機酸の生成をおこなう | 40〜50度 | 酸性 |
酵母菌 | アミノ酸等の合成をおこなう | 30度以下 | 酸性 |
さて、発酵には水分量や温度にも気をつけなければならない事が分かった所で、今度は、ぼかし肥に使われる有機質資材を用いて実験を進めて行きます。
1)有機質資材の肥料成分について
材料は色々ありますが、どの程度の肥料成分があるのか検討がつきませんので、ぼかし肥の材料として使われる主な有機質肥料、特殊肥料の肥料成分について一部、調べて見ました。
肥料名 | T−N(%) | T−P2O5(%) | T−K2O(%) | その他 (平均%) |
||||||
最小〜最大 | 平均 | 規格 | 最小〜最大 | 平均 | 規格 | 最小〜最大 | 平均 | 規格 | ||
魚粕粉末 | 3.4〜12.5 | 8.0 | 4.0 | 2.9〜13.4 | 8.7 | 3.0 | 粗脂肪7.3 | |||
肉粕粉末 | 5.9〜14.2 | 10.1 | 6.0 | 0.3〜4.7 | 1.5 | 粗脂肪6.2 | ||||
肉骨粉 | 3.6〜10.9 | 6.7 | 5.0 | 5.1〜21.0 | 12.8 | 5.0 | T-CaO 24.6 | |||
生骨粉 | 3.0〜5.7 | 3.8 | 3.0 | 15.8〜25.1 | 20.7 | 16.0 | ||||
蒸製骨粉 | 2.2〜6.9 | 4.4 | 1.0 | 11.8〜28.7 | 21.7 | 17.0 | 0.1〜0.2 | 0.2 | T-CaO 28.2 | |
蒸製皮革粉 | 6.4〜12.9 | 11.1 | 6.0 | |||||||
大豆油粕 | 3.9〜8.7 | 7.3 | 6.0 | 1.1〜2.8 | 1.6 | 1.0 | 1.2〜2.9 | 2.2 | 1.0 | |
菜種油粕 | 4.5〜7.4 | 5.6 | 4.5 | 1.9〜3.7 | 2.5 | 2.0 | 1.0〜2.2 | 1.3 | 1.0 | |
棉実油粕 | 4.8〜8.2 | 5.7 | 5.0 | 1.4〜3.9 | 2.4 | 1.0 | 1.0〜2.3 | 1.6 | 1.0 | |
米糠油粕 | 2.3〜3.4 | 2.7 | 2.0 | 5.0〜7.0 | 5.9 | 4.0 | 1.2〜2.5 | 1.5 | 1.0 | 粗脂肪13.0 |
肥料名 | T−N(%) | T−P2O5(%) | T−K2O(%) | その他 (平均%) |
|||
最小〜最大 | 平均 | 最小〜最大 | 平均 | 最小〜最大 | 平均 | ||
草木灰 | 0.1〜0.2 | 0.2 | 0.9〜1.2 | 1.1 | 1.1〜29.2 | 11.7 | |
乾燥鶏糞 | 1.1〜5.3 | 3.0 | 2.2〜9.9 | 5.0 | 1.0〜3.7 | 2.4 | 水分13.4 |
注:
「規格」は公定規格に定められた最低の保証成分値であり、これ未満のものは普通肥料として登録されません。
特殊肥料については、肥料成分の保証はありません。
なお、数字はすべて現物あたりの表示です。
2)実験肥料の成分計算について
材料の肥料成分が分かった所で今度は成分計算をします。 計算の仕方については「野菜の肥料(2)」でご紹介したような計算方法で行います。 (この計算例は発酵等で生じる様々な条件を考慮した計算ではありませんのでご注意願います)
@ぼかし肥の手作り前実験(17)の材料は、それぞれ
米ぬか:1000g
油粕:500g
魚カス:500g
草木灰:70g
を使っています。
A小生ちにある材料の窒素、リン酸、カリはそれぞれ下表のようになっています。(米ヌカは他資料より引用)
資材名 | 窒素 | リン酸 | カリ |
米ヌカ | 2.0 | 4.0 | 1.0 |
油粕 | 5.3 | 2.3 | 1.0 |
魚カス | 6.0 | 6.0 | 0 |
草木灰 | 0 | 0.85 | 15.57 |
B途中の計算を省きますが、この実験で出来た発酵肥料の見込み肥料成分は
窒素・・・3.69
リン酸・・3.96
カリ・・・・1.25となります。
3)実験内容:
・ぼかし肥の前実験(17)有機質資材を用いての発酵実験
この実験では、
@乳酸菌や酵母菌を入れたときに温度が上がる現象が見られた。これは、
ア、材料のかき混ぜによって、新鮮な空気の取り入れ、適湿度など、菌の活動状態が良くなった。
イ、乳酸菌も酵母菌も水で溶かした状態で入れているのでやや水分不足状態から適湿になった。
ウ、投入菌が好む材料状態になっているので菌が活発に動き始めた。
などの原因が考えられますが、まだ詳しくは分かっていません。もう少し勉強が必要かな?
注意:
1.実験環境や条件によって小生の実験とは異なる事もあるかと思いますが、その点はご容赦願います。