自分が一番 | |
3.組織で充実した時間を過ごすために 「自分が一番」 自分自身に降りかかる影響や不利益に対して如何にして上手に立ち回れるのかについて、幾つかの解につながるヒントを第1部「部下を伸ばす上司と部下を駄目にする上司」と第2部「上司と上手にたたかう方法」で紹介した。これらの行動に対しては、勿論、自分自身でも積極的に動くことが必要な手段となる。そのために、第3の課題として自分自身が自発的に動くための策を考えていきたい。題して、第3部「組織で充実した時間を過ごすために」について著者の経験や考えを述べていきたい。 企業や組織の中で上手に立ち回るためには、もちろん自分自身が最も良い状態であることが求められる。そして、そのためには何をおいても、自分自身が他の人よりも一番良い状態でなくてはならないのであろう。つまり、どこかの慈善団体のようにボランティアと称して自分自身を犠牲(?)にして周囲で上手に立ち回れることはあり得ないのである。そこで、この章では、部下としての自分が一番でいられるための工夫を書いてみたい。 自分自身が一番良い状態を維持するためには、本人がもちろん最も良い心身の状態でなくてはならない。すなわち、このためには、オン(企業や組織での活動)とオフ(プライベートでの活動)を切り分けることが必要となる。ここで言うオフとはプライベートでの場において実作業を行わないということを意味する。しかし、これはある性格の人によってはなかなか難しいのである。現役時代には著者もその一人であったが、オフのときでも何かとオンの状況が気になり、帰宅後もマイコンピュータでExcelやWordなどを使って作業も行っていた。ちょっと閃いたらすぐに記録するとか、あるいはまとめるという性格もあり今から思えばだいぶ損をしたのではないかと思う。オンとオフを切り分けるとよく言われるが、本当にそのようにできるかは疑問であったのも事実である。 それでは、そのような場合にはどうしたら良いのかという質問が出てくる。少しでもオフの気持ちになれるためには、やはり趣味や興味のあるものや何かしらの行動をすることが良いのではないかと思う。組織の中で日常的にパーソナル・コンピュータを使っている場合には精神的なストレスを和らげるためにもFacebookやTwitterやLineのように、いわゆるSNSにのめり込むことは精神的にもあまり得策ではないように思う(ただ、適当な時間配分ならば良いのであろうが…)。やはりできたら自然相手とか生き物など、あるいは数字が少ない環境や本人の身体を動かすことが良いのであろう。ゴルフやサッカーやウオーキングなどで趣味と体を作るなどの両立をはかるものも良いと思う。 ただし、このようなオフの状態においても突然オンの気持ちが出てくることがある。私は、このような状況を「閃き」と感じている。昔の話であるが、単独登山家で有名な加藤文太郎(新田次郎の「孤高の人」の主人公)は、雪洞でビバークしていた時に雪洞内部に吹き込んでくる雪粒の流れを見て内燃機関の改良を思いついたらしいいが、自然もまた物理的あるいは化学的な法則に従っているので、自然の中でオンの状態を感じることは多々あるであろうが、閃いた状態をただそのまま流してしまうのではなく、何か生かしたいと思うので「備忘録」などに項目だけでも記録しておくことを勧めたい。 何かを常に考えながらオフを過ごすことは多少なりともストレスになるであろう。そのためにも、オフのときにはオンを忘れる、しかし心のどこかで何かのきっかけでヒントが出てくることがあるのでその瞬間は大事にしたい。例えば、コーヒーにミルクを入れて掻き混ぜているときに流体の挙動から粘性流体の特性を知ることもあるであろう。著者の例が参考になるかはあるいはならないかは人それぞれの感じる視点が異なるのでわからないが、先輩の友人とプラモデルやラジコンの話をしているときに、2つに分かれた加工工程を一連の作業で行うことを思いついた。多分、同じような作製の工程を連続して1つにまとめたらよいと思ったのであろうが、その時に「そうだ、あの工程に応用してみたら」と閃いた。オンのときに考えていた加工工程が「強化板ガラスのヒートソーク試験技術」であった。 よく、追い込まれないと革新的な考えやアイデアは出てこないと言われる。また、そうしたことを部下にしつこく説く上司もいる(だからもっと目の前の仕事をしろと言いたいように)。著者も、現役時代には社員研修の場において、「沢山の仕事量でもそこから新しいアイデアが生まれるので、とにかく沢山の仕事をこなして、その中から研究開発の芽を出して欲しい」という言葉を講師の役員や管理職から何度も聞かされた。根性論的には確かにその通りかもしれないが、著者が体験してきた中では心身ともにへとへとになって深夜まで過勤務での仕事をしてその場においてその中から画期的なアイデアが生まれたことは一度もなかった。だから、自分をあまりにも追い込んだ状態ではいいアイデアは出てこないと思う。心身ともにメリハリを付けてオンとオフを過ごす。そして、やはり適度なストレスが「閃き」には必要なのであろう。 オンの時のやるべき仕事量にはやはりきちんとキリを付けたい。やるべきことが少し残っても良いのでそれを次回に回そう。そうするとオフの時には何か閃きが出てくるかも知れない。このような行動を通して自分が一番良い状態を維持していきたいものである。。
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