「楽しく仕事が出来ているかい?」 | |
2.上司と上手に「たたかう」方法 はじめに 大学や大学院での教育や研究の課程を卒業し、あるいは修了して、多くの学生はコストや効率化が個人の業績よりも優先される企業や組織や団体に就職する。学生や研究生たちを受ける側は、文化や考え方の全く異なる組織において蓄積されてきた学問や知識あるいは知見を最大限に引き出して企業や組織の発展と経営に対する大きな成果に貢献してもらいたいと切に思うことであろう。確かに多くの組織において、新入社員の入社式などでは「考え方や風土の違い」がここぞとばかり強調され、そして「事業の発展」に貢献して欲しいと社長や代表者は強いメッセージを発する。そして、たぶん、3か月~1年間の研修や見習いの期間を経て新入社員や若手社員として活躍していくことが期待される。このとき学生から利益追求のための組織に属する従業員となり、新入社員たちは文化や風土に対して大きなギャップを味わうことになる。このときの大きなミスマッチは多分以下のようなことなのであろう。 学生や研究生の時代には個人の業績や成果を出せば良かったが、利益追求の組織に入ると個人よりも組織や事業のための利益の確保が大きく求められる。さらに、個人の作業の流れに対しても高いパフォーマンスが求められ、基本的には赤字状態での作業は認められない。学会活動に対しても組織のための行動が求められる。もし、個人的に学会に自由に参加して行動したいならば、個人の休暇の中において自費で活動することになるであろう。ただし、組織や事業のための学会参加であるならばそれらは業務の範疇に含まれるので組織の経費となるが、技術的な発表だけにおいても組織からの許可が求められる。また、必ず報告する義務も生じるであろう。 自分自身が所属する組織だけでなく関係する団体や組織においても積極的な活動が求められる。これらは、例えば組合での活動とか後援会や関係団体のような場での交流などである。社員や従業員の社外での行動や活動そのものが事業推進や研究開発などに大きく影響していくので重要である。ただし、個人的に人為的な交流が苦手な個人や場合、あるいは業務の並行処理が得意でない場合もあるので、全て問題なく推進できるかが課題となる。 教育や研究を行う組織では、与えられた設備や備品(あるいは機器)などを伝えられた方法や指示に従って操作すれば良い。しかし、企業における研究開発や生産活動ではほとんどの場合にその通りにはならない。例えば、次々に目的や内容が変化していく業務に対しては、設備や機器などは安全を第一に改良や改善しながら最も高い作業パフォーマンスを出せるように創造していかねばならない。また、安全衛生的な活動に対しては、全ての社員らが主体となって改善をしながら最善の状態を構築することが本来業務の1つとして求められる。 思えば、著者の学生時代には大学の研究棟の実験室の通路や出入り口に高圧ボンベが無造作に置かれ、また資料棚や備品が廊下などに此処彼処に並んでいたが、企業や組織の中ではそのような不安全な状態は決して認められない。こうした専門分野とは異なる業務に対するやり方の違いも習得していかねばならない。 このような学生と社会人との間のミスマッチをできるだけ低減させるために、在学中に企業の実習生(インターン)として活動したり、あるいは、企業や組織の卒業生が大学や大学院で講習を行うセミナーなどを活用したりすることも可能であるが、多くの企業では十分な理解を得られるまでは至っていないのではないだろうか? 本書では、このような若手社員の働きやすい職場づくりのために、著者の経験やノウハウを具体的に伝えたいと考える。本書のタイトルは「上司と上手に『たたかう』方法」とした。ここで、「たたかう」ということは、一般的にバトルと称される熱く「戦う」とか「闘う」ということではない。すなわち、上手に「たたかう」ということは同僚や先輩などの人為的なネットワークも活用して、「根回し」や「説明」も含めて上手に立ち回ることを意味する。本書ではこうした趣旨で「たたかい方」を記載していく。 ただし、実際には本書でのアドバイスや考え方が及ばない場合も多々あるので注意して頂きたい。そのような例としては、多くの場合に上司の人間性に問題があると著者は考える。すなわち、上司も人間であるので「凝り固まった考え方」や「差別的な考え方」、あるいは「全く興味を示さない」などのタイプなどの場合が存在する。こうした場合に種々の方法で試してみてもほとんど効果が無い場合には思い切って諦めた方が良いのかも知れない。その場合には、配置換えや転職などの自らが選択をしなくてはならない場合もあるだろう。 本書は、上司と上手に「たたかう」方法としたが、必ずしも新入社員や若手社員が直属上司に対して「たたかう」ことだけをイメージしてはいない。すなわち、部下と上司は全ての場合において相対的な関係であるので、部下の上司がその上司に対する対応も「部下と上司」の関係にある。また、直属の関係でなくても本部長を上司とし、あるいは社長に対する「たたかい方」なども含まれるので、広い意味で部下と上司を関係づけて頂きたい。
|
|
戻る |