1ヶ月ほどの時が流れた。
 私は変わった。
 今まで無理に無視して生きていたけれど。
 もう無理することはやめた。
 【意図】が伝わらないこともある。
 【結果】が伝わらないこともある。
 でも私は、社会の中で、人と人との間で、生きている。
 不自由だけど、不幸じゃない。
 五体不満足の人の言葉だが、それは私にも言えることだと思う。

 あの男とも、それなりに親しい関係が続いている。
 学校が終わると、毎日いつもの橋の下で、川岸に座って、色々なことを話し合う。
 きっと私は、この男のことが好きになっているのだと思う。
 でも私はウラメだから。
 「好きだ」という【意図】は伝わらず。
 それでも「一緒にいられる」という【結果】は伝わっている。
 まあいいか。
 一緒にいられるんだからね。

 「おいおい、まーただんまり攻撃ですか」

 あっ、物思いに耽りすぎて、彼の話を全然聞いていなかった…。
 どうやら彼は、自分の発言が無視されたと思ったらしい。

 「こりゃー、キリフダ第二弾を使うっきゃねーな」

 キリフダ…第二弾?
 キリフダにはまだ続きがあったの?
 一弾目は告白だったっけ。
 ということは、二弾目は…。
 告白で結ばれた恋人同士が次に取るコウイとは…。

 も、もしかして…。

 彼はゆっくりと近づいてくる。
 目と目が合う。

 え?
 え?
 えええええっ!?

 どんどん近づいてくる彼。
 私は早鐘を打つ鼓動を抑え、静かに目を閉じた。
 ……………。
 …………。
 …。

 「それ、コチョコチョコチョ〜♪」

 彼のキリフダがウラメに出たことは言うまでもない。

おしまい。

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