「お姉さ〜ん! ボール取って下さ〜い!!」

 10mほど後ろから、小さな子供の声が聞こえた。小学校の3,4年くらいだろうか。
 私は足下を見る。
 そこにはサッカーボールが転がっていた。

 「ほら、パス」

 私はインサイドキックでその子供に軽くパスをした。
 ボールは正確かつゆっくりと子供に渡されるはずだった。

 しかし。

 ボールは、その子供の股をトンネルした。
 その先は下り坂で…ボールは遙か遠くまで転がっていった。

 私の行動は裏目に出た。

 「…やっぱりね」

 慌ててボールを追いかける少年を見ながら、私は…何も思わなかった。

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