本編6 由佳とオレイアスは手をつないで、家路をゆっくりと歩いていた。 「そうだ」 オレイアスはポケットから指輪を出した。 「キスの後になったが…俺はアンタが好きだ」 由佳は手を差し出す。 「運命の輪には、プロポーズって意味もあるのよねー」 茶化したように笑う由佳。 「私も…好き……」 そう言って、少しはにかんだ。 ◆ 「あ、ネコだ」 静寂はやぶられた。 「由佳はネコが好きなのか?」 オレイアスは後ろから由佳に呼びかけた。 「うん! 弁証法と同じくらい好きだよ。 相変わらず、変な例えだな…オレイアスは苦笑した。 「由佳、戻るんだ!」 オレイアスは急いで由佳の後を追いかけた。 「危ない!」 由佳は、ネコを守ろうと通りへ飛び出した。 ◆◆◆ 由佳は緊急手術室に運ばれた。 「娘は…娘はどうなんですか!?」 由佳の両親達が、医師にすがりついた。 「手は尽くしました。後は生命力次第です。 そう言って、医師達は去った。 死は変化に過ぎない。 「先生!」 オレイアスは、去ろうとする医師達を呼び止めた。 「由佳を励ましたいんです。側に行ってもいいですか?」 医師達は頷いた。 ◆◆◆ 由佳はベッドで眠っていた。 由佳は死ぬ。後一時間弱で。 オレイアスは由佳と過ごした3日間を思い出していた。 「キミ、ここに埋まってたんだよね? 私のタロットカード見なかった?」 「え!? 手伝ってくれるの?」 「要はキミ、ラプラスの悪魔なんだね」 「私って死ぬんだ…?」 「私? 私は由佳。『ゆかし』の『ゆか』。見たい知りたい聞きたい…って思わない?」 「キミってアイデンティティー持ちすぎだよ。私にも分けなさい」 「見た!? 私のハラハラドキドキショット!」 「これでもレディーなんだからね!」 「必殺!」 「愚かであっても、愚行を重ねまいと必死に頑張ってるんだよ…?」 「私も…好き……」 それなのに―――。 「一体なんでなんだよーーーッ!」 死神の目から涙がこぼれた。 パリーン。 「泣いちゃ…ダメだよ……」 由佳の意識が戻ったのだ。 「泣いてなんか…いない…。 オレイアスは由佳に抱きついた。 |