乾いた砂。照りつける太陽。
 私は自虐的に笑った。
 なんで私は大砂漠の探索なんて引き受けちゃったんだろ…。

 ホントは引き受けるつもりなんて、これっぽっちも無かった。
 でもウィルの叔母であるニーナという人が私に頼みに来たのだ。

 「大砂漠にはウィルの父親が何故死んだかを解く鍵があるんだよ…。
  コーデリアさん、どうかウィルに力を貸してやっておくれ」

 ニーナさんの説得に、私は断れなかった。

◆◆◆

 「大変だ、コーディー!!」

 ウィルの突然の叫び声に、私の意識は現実へと引き戻される。
 大変……一体何が大変だって言うの? 私が辺りを見回すと―――

 「いやあああぁぁぁぁッ!?

 な、なんと、マッチョが三人、空を飛んでいるではないか!
 大変だ!大きく変だ!世の中、科学では解明できないことがあると言うけれど!!

 「うっかり砂嵐に巻き込まれてしまったんだぁ〜〜」

 グルグル回りながら、さらに位置エネルギーを増していくウィル。
 いくらなんでも、
うっかりしすぎだろ〜〜ッ!!

 「あきらめるな、ウィル! 一か八か、マッスルダンス全てを賭けるんだ!

 とんでもない賭けに出るタイラー。

 「女ッ!よく見ているんだな、私たちのDead Or Aliveスピリッツを!

 何か勘違いしているナルセス。
 いくら一か八かだからって、
 そんな勇気、勇気と呼べるわけ―――ああッ、とうとう踊り始めたわッ!!

 「マッチョだぜ!パワ〜フル〜魂〜〜♪(Byムスクルズ=muscles)

 きゃあああッ!空中スクワットォ〜!?なんてハイレベル………じゃなくてぇ!

 「そんなの無意味だって! アンタ達、さっさと気付きなさ〜い!」

 「でもさコーディー。僕達、降りられたよ?」

 いつの間にか地面に生還しているウィル。
 爽やかスマイルで白い歯をキラリと見せている。
一体何故ッ!?

 「これが未解明アニマだ。筋肉の成せる技だ

 腕組みしたまま淡々と答えるタイラー。
 う、嘘だ!私は断じてそんな
キモいアニマを認めるものか!

 「ぬああ〜〜〜ッ! 何故か私だけ降りられないぞ〜〜〜〜〜!?
  ふぬお〜〜、マッスル!マッスルゥ〜〜〜ッ!!!

 ―――って、ナルセスさんだけまだ飛んでる〜〜!?

 なんとか降りようと、必死にスクワットスピードを高めるナルセス。

 「フン!フン!一向に高度が下がらんッ!
  何故、私の
Dead Or Aliveスピリッツが通用しないんだ!?
  
Dead Or Alive……?そうか、そういうことか!」

 ナルセスさん、何か重大な事に気付いたようだけど、一体何をやらかす気―――

 「うおおおおッ!霧幻天神流忍術!!

 叫ぶナルセス。
 ―――ってぇ、何故
ミニスカ女子高生セーラー服に着替えるんだ〜〜!?

◆◆◆

 大馬鹿ナルセスが遙か彼方へ飛んで行ってしまったので、
 私とウィルとタイラーさんの3人で彼を捜すことになった。

 「ねぇ、ウィル? さっきからずっと聞きたかったんだけど……」

 私はこの機に質問することにした。

 「ニーナさんはどうしたの?」

 今回の大砂漠ツアーには、ニーナさんも参加すると聞いていたのだが……。

 「ああ、ニーナ叔母さんなら今朝死んじゃったよ?」

 なるほど、それじゃ来れるワケないよね………あれ?

 「嘘ッ!? いいいいいいいい一体何で!?」

 「俺、寝相悪くてさ。今朝うっかりタンスと壁との隙間に挟まってしまったんだ。
  そんな
デンジャラスな俺を救う為、
  ニーナ叔母さんったら自分のアニマを代償に
メガボルトしちゃってさ。
  家ごと吹き飛んじゃって困ったもんだよ、全く」

 カラっと答えるウィル。論点が恐ろしく不明瞭ですが。

 「まあよくあることだ」

 ウィルの肩を叩くタイラー。
 
ありえないことだと思います。

◆◆◆

 「む、手がかりを見つけたぞ!」

 タイラーが指差した所には、ナルセスさんの荷物が落ちていた。
 おそらく、砂嵐の中で荷物を手放してしまったんだろう。
 つまりナルセスさんは砂嵐に巻き込まれたまま、ここを通ったということだ。

 「タイラーさん! あそこを見て下さい」

 今度はウィルが何かを見つけたようだ。
 一体何が落ちて………って、これはあのセーラー服!?
 おまけに下着、しかも女性用までついてる〜〜〜ッ!!
 ………ということは、今ナルセスは
何を着てるんだぁッ!?
 私がピヨっていると―――

 「落ち着くんだ」

 ―――それはタイラーさんの声だった。
 タイラーさんは腕組みしたまま続けた。

 「冒険とは予想できないことの連続だ。重要なのは冷静に手がかりを整理することだ」

 本当にタイラーさんの言う通りであった。

 「……そうですね。では手がかりを整理してみましょう」

 私の言葉に、タイラーさんは無表情のまま頷いた。

 「まずはこのセーラー服だが、着てみれば何か分かる………」

 「ワケないだろーーーーッ!!

 私は思わずタイラーにメテオスマッシュを叩き込んでしまっていた。

 「まじで〜チョベリグ〜〜!!

 両手でスリーピースしながら、地面に脳天杭打ちするタイラー。
 しまった……コイツらの
属性を忘れていた…。

◆◆◆

 「お〜い、私はここだぞ〜!」

 タイラーの断末魔が届いたのだろうか、
 行方不明になっていたナルセスさんがこっちにやって来る―――ってぇ!?

 「きゃあああああああッ!!

 なんとナルセスは臍(へそ)下三寸にアブトロニックを巻いているのみではないかッ!?
 一体
どこを鍛えるつもりなんだ〜〜!?

 「まさか服まで剥ぎ取られるとはな。
  アブトロニックを隠し持っていて正解だった………
うおぅ!?
  ス、スイッチが入って―――
ぐはッ!
  だ、誰か助けてくれ〜〜!!

 一体何がこの男をここまでアホへと駆り立てるのか。
 もはや奴の脳には謎のチップが埋め込まれているとしか思えなかった。


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