私の名はコーデリア。 新米ヴィジランツとしてヴェスティアの酒場に訪れている。 今日は初仕事となる日のはずであったが。 置いて行かれたのだ。 「…これでも」 私は酒場のマスターにつっかかった。 「実力には自信があるのよ。足りないのは―――」 「筋肉だッ!」 そう、私に足りないのは筋肉――って違〜〜う! 「いやあああああああぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」 なんと戸口には黒ビキニパンツ一丁の男が立っているではないか。 「やあ、僕はムキムキ新米マッチョディガー、ウィル・ナイツ。略してムキッチョさ!」 夢…? 「今日はハンの廃墟をディグアウトさ。さあ、誰か俺と共に行こう!」 「良かろう、小僧。私が一緒に行ってやる」 カウンターに座っていた男が振り返った。 「私の名はナルセス。術戦士だ。して、私の取り分だが……」 「筋肉に比例だ」 なんでやね〜ん。 「望むところだ」 ナルセスさんも、それでいいんかい! 絶対グルだ。 ◆ すると、店の奥で静かに様子を窺っていた男が、突然口を開いた。 「さっきから筋肉、筋肉と…くだらないな」 こ、この人は正常だ〜。よかった、私一人じゃなかった。 「なんだと〜! 俺の筋肉をバカにする気か〜〜ッ!? 「フッ、俺の名はタイラー。真の筋肉とはこれをいうのだッ!」 バ〜ン。変身するタイラー。 「赤いフンドシか…ナイスチョイスだ!」 親指を立てるナルセス。 「あ、兄貴と呼ばせて下さいッ!!!」 ひざまずくウィル。 「俺達の出会いを祝して、レッツ、マッスルダンスだ!」 タイラーのこの言葉と共に狂喜乱舞し始める3人。 すると、ウィルが踊りながら近づいてくるではないか。 「やあ、君の名前は?」 「コ、コーデリア…」 「オー、コーディー。レッツマッスル、オーケー?」 「ノーサンキューッ!!!」 私は右手の槍をウィルの脳天めがけて、思いっきり振り下ろした。 「ワーオ、ハッピ〜〜〜」 恍惚の笑みを浮かべ、崩れ落ちるウィル。 ◆◆◆ 私達4人はアナス川上流にあるハンの廃墟に向かう。 「この娘も一緒なのか? 私一人で十分なのにな」 どうも、ナルセスさんは私に絡んでくる。 「おい、女。お前は何が出来るんだ? 筋肉もないくせに」 この言葉には、さすがにカチンときた。 「ナルセスさん。確かに、私には筋肉はありません。 「技だと?」ナルセスは笑い出した。 「おい、ウィル。この女に教えてやれ」 「いいかい、コーディー。 飛びまくるウィル。 「回って回って回って回〜る〜」 回り出すナルセス。 「……二十三位だ」 冷静なタイラー。しかし安心はできない。コイツも変人だ。 「分かったか、女。「技」など150300000023番目に必要とされる、いわばゴミだ」 もうツッコむ気にもなれなかった。 ◆◆◆ すると、私の願いが通じたのか、1匹のモンスターが行く手を塞がる。 「砂親父ッ!? 気を付けろ! 奴の突進を受けたら、ひとたまりもないぞ!」 叫ぶタイラー。 「力を合わせて戦おう」 身構えるウィル。 「小娘ッ!力を合わせるんだぞ! 「早くしろ、女ッ! さっさと服を……」 「脱げるかぁぁぁぁーーーーッッッ!!!!!」 私は槍でナルセスを串刺しにしていた。 「イエ〜〜〜イ! カ・イ・カ〜〜〜ン」 至福の表情でその場に倒れ込むナルセス。 ◆ その間にも、砂親父は目の前まで迫ってきているではないか。 「私がデュエルします。 「そうか、じゃあ頼むよ、コーディー。実は俺もタイラーさんもHPが残り少なかったんだ」 「なんでやね〜〜ん。まだ一度も戦ってへんやろ〜〜〜!!!」 「酒場でのマッスルダンスでHP(ハッスルパワー)を使いすぎたんだ」 そうなのか? 「…もーいーです。さっき言ったとーり、私がデュエルしますから……」 こいつらの為に戦うのも虚しかったが、 ◆◆◆ 「なんて硬い奴なのッ!?」 私は吐き捨てるように小さく叫んだ。 「集中、集中、突く――エイミングーーーッ!!!」 私の槍は、砂親父の装甲の隙間を貫いた。 「や、やった……」 私は大きく息を吐いた。しばらく、深呼吸して息を整える。 「どう、技のすばらしさが分かってもらえたかしら」 私は岩の裏にいるだろうウィルに声をかけた。 いない…。 一人…。 私は廃墟内を走り回った。3人を捜して。 私は孤独の恐ろしさを初めて知った。 今思えば、彼ら3人は私をリラックスさせる為に、 そんなことを考えていると、廃墟の奥から聞き覚えのある声が響いて来るではないか。 「おおおおおッ!」ウィルの声だ。 「ウィル! お前は低く構えろッ! 俺から仕掛ける!!」タイラーさんもいる。 「タイラー、私もまだいけるぞ。忘れないでくれ!」ナルセスさんも一緒だ。 3人とも何かと戦っているのか? 「いいか、ウィル。大切なのはタイミングだ!」 「いきますッ!!」 「まだだ、まだ早すぎるッ」 急げ、あと5メートルだ。 「今だ、いけーーーーーッ!!!」 「私もバトルに参加します!」 「おお、コーディー。君も交じるのか〜い?」 敵はいなかった。 「女ッ、いいところに来たな。たった今、私達の「知恵」「勇気」「節制」の おそらくこれにはプラトンも脱帽するだろう。 「ワンダフルだろ?」 私は変態トリオの中心に、ブッシュファイアを投げ入れて、その場を去った。 「お〜、マンマミ〜ヤ〜〜〜」 3人の見事にハモった断末魔を背中に聞いた。 |
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